扉の奥の秘宝 (22) モゼント
モゼント。彼は一体何者なのか?
いよいよ人相が悪くなったゾルウッドは、舌なめずりをしながらそう言いました。
「計画? 何の話だ。とにかくオレは……」
フューイがそう言いかけた時、彼の後ろに突然黒い影が現れました。そして背後から手を伸ばし、ナイフをフューイの喉元にかざします。
大変です! 慌てふためくフューイ……と言いたいところですが、彼は眉一つ動かさず、じっとゾルウッドの方を見つめました。
「動くなよ。動いたら、あんたは今すぐに死ぬ。冥土の土産を受け取る前にな」
小太りの細工師は、ニヤついた視線でフューイなめまわします。
「冥土の土産? どういう意味だ。オレはここで死ぬって事か?」
こういう時、もう少しうろたえれば可愛げもあるってもんですが、フューイは相変わらずぶっきらぼうに尋ねます。
「これまた頭の回りが早いねぇ。それに慌てた様子もない。ま、恐ろしさで固まっちまったって事かな」
ゾルウッドが余裕しゃくしゃくといった様子で、宝物を掌で遊ばせます。
「まず、お前の後ろにいる奴だがな……」
「あぁ、前に俺の部屋の前に居た兵士だろ?」
フューイが、ボソッと言いました。
「は? お、お前、なんでそれが分かるんだ」
悠然と構えていたゾルウッドが、初めてうろたえます。
「なぜって、そりゃわかるさ。ナイフを持っている腕には、兵士の防具がついているし、腕の高さを見れば大体の身長も分かる。これほど高長身の兵士は、オレがあの時に見た奴しかいない」
フューイは、落ち着き払って答えました。
「ふん、冷静だな。恐怖で固まっているわけではなさそうだ。じゃぁ、冥土の土産話も落ち着いて聞けるだろう。そうでなければ、話がいがないってもんだ」
ゾルウッドが、宝物庫の中にある宝箱に腰掛けながら笑いました。陽気な細工師の顔はもうそこにはなく、どす黒い悪意に染まった面構えだけがギラギラと光っています。
「さぁて、どこから話そうか。そうそう、まず俺様が誰だか教えてやろう」
「誰って、ゾルウッドじゃないのか?」
中年細工師の意外な言葉に、フューイが尋ねます。
「違うね。俺様の名前はモゼント。知ってるかい?」
モゼントと名乗ったゾルウッドは、大きくニヤリと笑いました。
「モゼント……。どこかで聞いた事があるような気がするな。……あぁ、確かナントカっていう盗賊一味の、親玉の名前だ」
ナイフが喉元に添えられているというのに、フューイは平然と答えました。
「ナントカじゃねぇ!ビリジャン・スパイダーズ、青緑の蜘蛛だよ」
「あぁ、そうそう。少数精鋭の盗賊団だと聞いている」
フューイは、自らの命の手綱を握っている背後の兵士に、少しずつ意識を集中し始めます。
「その通り、正に少数精鋭。頭目の俺様だって、ただふんぞり返っているだけじゃねぇ。進んで現場に出るって盗賊団よ」
ゾルウッド、もといモゼントが顎を突き出して自慢気に言いました。




