修羅の世界では常識(前)
「準備は出来た?それじゃ始めるよ」
そのままの勢いで訓練場まで到着して周りには人だかりができており、何をするのか気になっているみたいだ。
「何かの催しなのか?どうやらあいつらが戦うみたいだぞ」
そんな風にざわついており、生徒会の人の一喝で静かになる。
「静粛に!!いまから決闘を始めるわ!!」
「ルールはどちらかが戦闘不能になったらその時点で負けとする!ノアール、三対一だが本当に構わないのか?」
「構わん、さっさと始めるぞ」
「ちっ!ノアールのくせに生意気だぞッ!ぼこぼこにしてやる!」
なにやらカークやシータが喚いているがそれを無視する。
「それでは…始めッ!!」
【身体操作】
一言呟き、俺は動き出す、相手はカークが前に出て残りは魔術の詠唱をしているようだ。
「死ねぇ!!」
刃は潰してあるが、あたりどころでは普通に即死もあり得る鉄剣、それを剣で滑らして受け流し、鳩尾に拳をめり込ませる。
「がッ…!?」
うずくまろうとしたところを蹴り上げ、仰向けになったところで足を踏みつぶす。
「え…?あ、足がぁぁぁぁぁぁアァッ!!!!?痛い痛い痛い痛い!!!??」
そのまま魔術を唱えていたそいつらに向かって走り出す、ついでに踏み込んだ足でさらにカークの腕を折りながら。
「ヒっ!?く、来るなッ!来るなぁッ!!」
シータとダートはその光景に魔術の詠唱を止めてしまい、無詠唱で火の玉やら突風を起こして俺を近づけさせまいとするが当然そんなものは効果がない。
火の玉は剣で薙ぎ払い、突風は風を読んで進み、一瞬でそいつらにたどり着く。
「ゆ、許し…ギャァァぁぁぁッッ!!?!??」
杖を持っていた腕を剣で折り、喉を手でつぶす。
そしてもう一人にも同じ要領で腕と喉をつぶす。
「…何だこいつら?弱すぎるな」
周りは静まり返っている、この結果に理解が追い付かないようだ。
「おい、俺の勝ちだ、さっさと言え」
「しょ、勝者、ノアール!」
その声が虚しく響き、周りは明らかな怯えの表情で見ている、その中の正義感が溢れてそうな男子生徒が声を荒げる。
「や、やりすぎだッ!どうしてここまでする必要がある!?」
「?…決闘だから当たり前だろう?それに魔術で簡単に治るだろ?」
腕を斬られたわけでもないのに何を騒いでいるんだ?
「簡単に治るわけないだろうがッ!?至急白魔術士を呼べッ!」
その言葉でハッとした何名かが走り出して出ていく、決闘するのに呼んでなかったのかよ。
「まぁいい、おい、お前ら」
俺はカークとシータとダートに声をかける。
「お前らは二度と俺に関わるな」
「は、はぁ!?する分けねぇだろうがッ!お、お前絶対にぶっ殺してやるッッ!!」
「そうか、なら好きにしろ」
「決闘だからと言ってなぜこんなことをした!彼らの人生が潰れるかもしれないんだぞッ!!」
「だからなんだ?こいつらの自業自得だ」
「そんなわけないだろッ!明らかにやりすぎだ!!」
めんどくさいな…このぐらいでギャーギャー騒いでなんなんだ?
「退いてください!患者さんはどこですか!」
どうやら白魔術士が来たようで、ついでに何故か教師達が来ている。
「これは…全治一ヶ月ほどか…」
「これをやった者は誰だ!名乗り出ろ!」
「俺だ」
「む、君か…審判をした者とノアールは着いて来なさい」
生徒指導室にて。
「さて…どうしてあんなことになったのかね?」
まずは審判をした女生徒に聞くようだ。
「は、はい…えっと始まったと同時にえーと、カークでしたっけ、剣を振り下ろしましたがいつの間にか腕と足が折られ、もう2人は…」
「まて、一対三だったのか?」
「え、はい…やめるように言ったんですけど聞かなくて、それで…」
「いや、もういい、ノアール君から説明してもらうから君は帰っていいぞ」
その女生徒は言われた通りに出ていき、俺と教師の3人となる。
「ふぅ…それでどうやって3人に勝ったんだ?」
「一人目は馬鹿みたいに剣を振り下ろしてきたから片手で受け流しながら鳩尾に一発入れ、蹴り上げて仰向けにした後に足と腕を潰した」
メモを取っているようで書き終わるまで待ち、続きを促される。
「二人目と三人目は特に威力のある魔術ではなかったから剣で切り払いながら近づき、腕と詠唱ができないように喉を潰して終わりだ」
「…それは本当か?」
「周りに人が居たからな、嘘をつくわけないだろう?」
「…分かった、後で確認しよう」
「それでノアール、こんなことをした動機は何なんだ?復讐か?」
先生たちは俺がいじめられていたことを知っているようだな、だがなぜ今まで動いていなかったんだ?
「そうだな、その認識で間違っていない」
「そう、か……答えずらかったらいいが何をそこまでお前を変えたんだ?」
…少しごまかして答えるか。
「そうだな…あまり言いふらしてほしくないが俺は昨日自殺をした、まぁ生きているから失敗したわけだがその影響だと思うが性格が変わったみたいだ」
その言葉に教師たちは驚きながらも考え込み、最後には納得した表情をする、まぁ確かに別の人間が宿ったなんて考えられるわけないもんな。
「……そう、か…すまなかった、そこまで思い詰めているとは知らずに確認を取ってからという甘い判断をした私達は許されるものではないだろうな…」
うなだれている教師たち、それを俺は不思議に思う。
「何を言ってるんだ?これしきの事で死を選ぶということはいずれどんな形であれ死んでいる、胸糞悪いがそれだけだ、気に病む必要はない」
その言葉に教師たちは目を丸くする、まさかこんな言葉が出て来るとは思わなかったからだ。
少しの沈黙が空間を支配をする、俺はついでだからと自身の要望を伝えておく。
「そうだな…少し俺の妹と会わせてくれないか?話しておきたいことがあるんだ」
「あ、あぁ…分かった、呼んでくるとしよう」
十分後、妹がやってきた。
【身体操作】
魔力を限界まで体に張り巡らせ、完全に身体を掌握する技能、使っている間は常に激痛に襲われ、もう一つの魔術がなければ即座に戦闘不能になる魔術。