エピローグ:あくびをしたら
「つまり、この公式を――」
緑色のくせに、なぜか黒を自称していることでお馴染みの黒板から発せられるコンコンという音が、飛歩高校二年生の教室に響く。
白色チョークで謎の数式を書いているのは、うちのクラスの数学担当している荒木先生である。
そんなの将来いつ使うんだよ、という数学弱者の定番のツッコミを心の中でぼやきつつ、俺――瀬川智明はボーっと黒板を眺めていた。
一応ノートは取っているが、授業内容は頭に一切入ってこない。
現在は六時間目。一日の疲れが溜まっていた。
ついでに言うと、窓際最後列という所謂主人公席に座っている俺は、窓からの優しい風の音と、上からの絶妙なリズムと大きさで発せられるエアコンの機械音、催眠術師と謳われている荒木先生の呪文という、xyz軸全く隙のない音を受けて、すっかりお眠な状態だった。
しかし、俺は寝たりはしない。それどころか、欠伸すら我慢していた。
荒木先生は、授業中に必ずテストのヒントを言う。つまり、授業さえ聞いていればそれなりの点数は取れるのだ。
だから、なんとしても、集中してなければいけないのだ。
しかし、今日はいつもよりも数倍眠たい。実は、昨日は夜遅くまでゲームをしていて、全然眠れていなかったのだ。というのも、俺の自称姉と、某イタリア人の配管工を操作する横スクロールアクションゲームをしていたのだが、彼女がまあ弱い。それなりの実力があると自負している俺が協力をしてもなお、一面のボスですら倒すことができなかった。
まあ、彼女は努力家なので、すぐ上達するのだろう。
とにかく、そんなわけで今はとてつもなく眠いのだ。ほとんど眠れなかった翌日の授業がどれだけ地獄なのかは、全人類が分かるはずだ。
隣の席に座る優等生の彼女――有岡愛菜も同じように、今日ばかりは眠そうだ。
最近よく話すため、彼女のことはよく知っている。
成績優秀スポーツ万能、その上、顔も整っていて性格もいいと来た。さすがである。
そんなわけで、それはそれはモテる。
彼女に視線を送る暇があるなら、スーパーのタイムセールの情報を手に入れている俺であるが、ここ数日で数回ほど、男子に呼び出されているというのを愚痴……相談を受けていた。
漫画のように、毎日呼び出さているわけではないと思うが、現実的に考えると、それでも凄い。
まあつまり、努力家な愛菜をもってしても眠くて仕方ないほど、ここは地獄ということだ。
☆☆☆
やべぇ、マジで眠い。
俺は頑張ってる。めっちゃ頑張ってる。
眠い頭を必死に動かし、欠伸は上唇を舐めると止まることを思い出した俺は、上唇をペロペロしながら、なんとか危機を乗り越えてきたのだ。
授業はあとどのくらいだろうかと、時計を見た。授業は45分経過していた。授業時間は50分。
よしっ! あと3分だ!
やったぞ! 俺は乗り切ったんだ!
……3分。そう、まだ3分あるにも関わらず、俺は気を緩めてしまった。
その瞬間、身体から込み上げてくるものがあった。
まずっ!
そう思ったことにはもう手遅れ。
「ふぁぁああ」
やってしまった。
さらに最悪なことが二つあった。
一つは荒木先生が、ちょうどそのタイミングで、こちらに振り向いてしまい、バッチリ見られたこと。
そしてもう一つは――
「はぁぁ」
「なにやってんだよ」
「お互い様でしょ」
「うっせ」
俺の欠伸がうつってしまったのか、隣に座る俺の姉、有岡愛菜が、同時に欠伸をしてしまったということだった。
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