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人間見聞録  作者: 大柳京太朗
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崇拝の国 壱

 時に読者諸君に質問しよう。単刀直入に聞く。

「君達は、神を信じるか?」

 ……この質問に正解なんてない。だから自由な考えを持ってもらっていい。

「神なんて居ない! 神が居れば今こんな惨めな思いはしてない!」

「神は居る! だって自分はこうして生きているのだから!」

 もっと詳しく聞こう。

「君は宗教信者か?」

 君達にしてみれば、「宗教」という言葉は少し物騒に聞こえるかもしれない。けれど怯えなくてもいい。キリスト、イスラーム、仏、神、ヒンドゥー、これらは全て宗教。勿論君達が正月に神社に行くのは神教を信じているからだし、寺を参るのは仏教を信じているからだ。

 だから君達は皮肉にも神なんて居ないと言っても、真の無神論者になる事はなかなか難しい。

 君達は沢山のカルト宗教ばかりが宗教だと信じて、なかなか宗教に対して悪いイメージを払拭出来ずにいるのだろう。だから今回は宗教に対して純粋無垢な子供の様に思いを持って欲しい。

 本来宗教は中々良い物だ。人は苦境に陥った時、神を信じる事で道が示される。支えになる。

 ……今回は私がそんな「宗教」と深く関わっていた国に行った時の話だ。


 私はその国へと移動していた。赤いハーレーは機嫌良さそうに舗装された、綺麗な道を走っている。……それは良いのだが、先程から嫌な看板がちらつくのだ。

「……この道路はアイールティス教の布施によって舗装されています」

 そう、私が向かっているのは、世界最大のアイールティス教信仰国、アイールティス。

 ……世界最大、と言ったが、正確に言えばこの国以外にアイールティス教を信仰している国は存在しない。だから自然とこの国が世界最大の信仰国なのだ。

 下調べしていた情報をここにコピーアンドペーストしておこう。

 アイールティス教は唯一神アイールティスを信仰している。この世界とそこにある存在は彼が一から全て作り上げたのだと。そしてアイールティス国内にある、神殿。ここにアイールティスは眠っている……らしい。そしてここに布施をする事でアイールティス国内のみならず、全世界がより良くなるのだと。

 そんな根拠の無い事をよく流布出来る物だなと思うが、あの国に住む人々はそう信じているのだから、私もあの国の中では……そう、例えば、

「アイールティス様……ありがたやあ」

 とかそんな風な事を。……はあ。

 これからの事を考えると既に頭が痛い。……まあ何が言いたいかと言うと、この道路もアイールティス信者の布施によって舗装された物なのだ。この道路が、布施が世界に良い影響を及ぼしているという手近な証明なのだろう。

 ……アイールティス信者が果たして幸福なのか不幸なのか……それは今から私が記すこれによって判断してもらおう。

 私はこの布施道路の走り心地をよくよく感じながら、道を走る。……しばらくすると、巨大なアイールティスの石像が鎮座している、アイールティス国が見えてきた。……そこから漂ってくる、やけに怪しくて、胡散臭い雰囲気を確かに感じていた。

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