第八話 復讐するは、我にあり
アディの街に向う道々、ロッドのこれまでを聞いた。
ロッドの両親は、手広く商売していた商人で、ロッドの下には3つ下の弟と、さらに2つ下の妹がいたそうである。
二年前、父親が苦労して、海水から塩を作り、岩塩の半額以下で売り出したところ、公爵が咎め、製造を禁止したそうだ。
それでも父親は、貧しい人達にも塩が買えるよう販売を止めなかったらしい。
その結果、ある夜、突然に家が襲われ、両親と幼い妹や弟まで殺されてしまったとのことだ。
酷い話だ、自分達の利益を優先するため、罪もない人達を殺めるなんて。
これで決まったな、ブログリュー公爵には、脅しだけでは足りない。この世界から退場していただこう。
アディの街に着くと、俺は、大量のヤカンと油、それに布を買い込んだ。それから、俺とロッドの武器として、2丁のボウガンを作成した。作り方はネットで調べ、金属製の弓を作成しただけだ。
テコの原理で、非力なロッドにも十分扱える。
弓は、二重構造とし、一度に2本の矢を撃てるようにした。矢もこちらの世界にある軽金属で鍛冶屋に作らせた。
準備ができたある夜、俺達はブログリュー公爵邸へ忍び込んだ。
見張りは、外からの侵入者を警戒し、二人一組で巡回している。
見張りから見えない各所に、油とヤギの腸に詰まった水袋を内蔵するヤカンを置いて、ヤカンを包んだ油をたっぷり含んだ布袋に火を付ける。すばやく、20カ所を回り、一旦脱出して待機する。
程なくして、爆発が起る。それは10メートル四方を吹き飛ばし、次々と舘を破壊してゆく。
逃げ惑う人で、舘は大混乱に陥り、その中をブログリュー公爵が逃げて来る。
「ロッド、ようく狙え。公爵と家族は生かしておくな。」「はい、絶対に生かしておきません。」
爆発で混乱する闇夜を突いて、唸りを上げたボウガンの矢が公爵とその家族を襲う。
こうして、俺達の復讐は終わりを告げた。