第七話 追われる孤児ロッド
ブルータスの街を出てから、早七日。ブログリュー公爵領の北の街、オークスに着いた。
ブログリュー公爵の館は、南の街アディにあるので、まだ先は長い。
「コウジ兄ちゃん、なんとなく静かな街だね。」
シェリーが話し掛けてくるが、彼女が感じたとおり、街に活気がない。
「こらぁ待ちやがれ、小僧許さんぞう!」
突然横の通りから、少年が飛び出してくる。
続いて、騎士らしき数人が追いかけて現れた。何事かと見ていると、少年を取り囲み、斬りつけようとするので、咄嗟に小石を拾い斬りかかろうとする騎士に投げ付ける。
石をぶつけられた騎士は、こちらを睨み付け声をあげた。
「我らをテンプル騎士団と知っての狼藉か?」
「ほう、騎士を名乗る奴が武器も持たない子供を斬りつけるなど、聞いたことがない。大方、お前らは騎士の格好をした狼藉者に違いない。」
「何ぉ」声を上げて斬りかかって来るので、「相手を確かめもせず、斬りかかって来るなど、生き恥を晒すぞっ」そう答え、三人とも腕を切り落とした。
呻き声を上げる三人を尻目に、少年に声を掛ける。
「坊や、こいつらと何かあったのか?」
「おいらの名前は、ロッド。親も兄弟もいなくて、一人で商売をして、やっと暮らしてるのに、こいつら、俺の店から大切な品物を取りやがって、金も払わないから、ものをぶつけてやったんだ。そしたら、追いかけられて」
そこへ騎士の仲間達が駆け着けてきた。
「何事だ、これはお前の仕業か?」
「そうだ、泥棒を捕まえようとしたら、名乗もせず、斬りかかってきたのでな、返り討ちにした。」
「俺達をテンプル騎士団と知っての狼藉か」
「ほう、テンプル騎士団というのか、泥棒集団の名前は。泥棒を働き、罪もない少年を殺めようとするなら、生かしては置かぬ。」
「我らは、この街に100人居る。勝ち目はないぞ。」
「どうかな、100人倒せば良い訳だな。」
そうして、斬りかかっ来る30人程を片っ端しから、切り捨てると、逃げる奴らを追って、テンプル騎士団の本拠に乗込んだ。本拠にいる60人余りを問答無用で切り捨てる。2時間程で誰も生き残りが居なくなった。
そうして元の場所に戻ると、青ざめた民達と商隊の皆が立ち尽くしていた。
俺は、声を上げた。「これは俺と、公爵との戦いだ。心配しなくていい。公爵の横暴は俺が潰す。皆には悪いが、テンプル騎士団の死骸の後始末を頼む。では、俺は行く。」
「待って、おいらも行く。公爵は両親や弟と妹の仇なんだ。あいつを絶対に許さない。」
「事情は、よくわからんがついてきたければ、そうするがいい。」
「コウジ兄ちゃん、死なないでね。」「生きて帰ってきてね。」
俺は、ロッドを連れて、シェリーやニコロの声を背に、街を後にした。