第五話 公爵領道中膝栗毛 その一
翌朝、俺は男爵家の皆に見送られ、旅立った。男爵からは、レイネを助けたお礼も含め、金貨を100枚も貰った。旅費には十分過ぎるだろう。
街道をのんびり歩いていると、後ろから20人ばかりの商人らしき一行に追いつかれた。
「もし、旅のお方、どちらまで行かれるので?」
「別に決まった宛はないが、賑やかな街までかな。」
「手前共は、商人でございますが、街々を寄りながら、ブログリュー公爵領まで参ります。もしよろしければ、護衛を兼ねてご一緒していただけないでしょうか?ちょうど護衛の者達が前の街で、引き返すことになり、誰も居なくなってしまい難儀しておりまして。」
目的地としては、申し分ないな。見渡すと、男が8人、女子供が13人、確かに物騒なようだ。
「いいだろう、どうせ急ぐ旅でもないし、お前達さえ良ければ、一緒に行こう。」
「それは助かります、食事はこちらでご用意致しますので。」
商人の名前は、カルロというそうだ。年は30歳くらい、主に布地を扱っているそうだ。
俺は、カルロと一行の先頭を歩きながら、ブログリュー公爵をどう脅すか考えていた。
鉄砲、火薬、そんなものは、手に入らないし、作る材料もない。火炎瓶くらいなら、作れるが近づかなきゃ使えない。奴らに気付かれずに、脅しを掛けるには、何か方法がないだろうか。
そんなことを考えながら、歩いていると、10人ばかりの男達が飛び出して来た。野党だろう、問答無用で斬りかかって来るので、俺が切り捨てる。あっと言う間に5人を切り捨てると、残った奴らは逃げ腰になる。構わず、なおも3人を切り捨てると、残った二人は武器を捨てて、降伏してきた。カルロが驚愕の表情で、俺に声を掛けてきた。
「コウジ様、なんとお強い、たったお一人で10人もの族を倒してしまれるとは。」
「そうかな、こいつらが弱かったんじゃないかな。」
後ろの一行も、皆固まっている。皆を護れたのだから、いいじゃないか。
「カルロ、その二人を縛り上げてくれ。面倒だが、近くの街まで馬車の荷物だ。死体は、道路脇に埋めよう。」
「はい、わかりました。盗賊の討伐の証拠に死体の右耳を持ち帰ります。褒賞金が出ますよ。」
商隊の皆は、すげぇすげぇ、と馬鹿騒ぎだ。
こうして俺達は、次の街へと着いた。