閑話四 ラナの新生活 その二
ハーベスト領まであとわずか、という所まで来て、私達は到々、帝国軍に追いつかれてしまいました。
私は泣きながら、それでも弟や妹達の前に立ち、敵の兵士に石を投げつけ、必死に弟や妹達を庇い続けました。
下の弟も妹も、その下の4才の弟でさえも、石を投げて必死に抵抗しました。
もうだめだと、わかっていましたが、それでも投げ続けていました。
すると突然、轟音が鳴り響き、帝国の兵士達がバタバタと倒れていきました。
「良くがんばったっ。今のうちに逃げるぞっ」
そう声を掛けられて、味方の兵士に抱えられて、戦場の中を駆け抜けました。
味方が大勢いる場所に着くと、女性の兵士さんが温かい飲み物をくれました。そして、甘くて美味しい《クッキー》という食べ物も。
見渡すと、女性の兵士さんが大勢いるので、
「どうして女性の方もいるのですか? 」と聞くと、
「男の兵士だけでは足りないから、私達は志願してここに来ているのよ。」
「女の人でも戦えるのですか?」
「なにを言ってるのよ、あなたも戦っていたじゃない。
私達も石みたいなものを、敵の兵士にぶつけるのよ。ただもっと威力があるけどね。うふふ。」と、笑顔で教えてくれました。
なんだかわからないけれど、ハーベスト領の人達は凄いっ。それだけは分かりました。
こうして、私達は無事に、ハーベスト領へ着くことができました。
私の叔母は、ナターシャと言って、孤児院でシスターをしています。
弟達を連れて、教えてもらった孤児院を訪ねると、叔母が飛び出してきました。
「まあ、無事でほんとうに良かったわ。」
そう言って、ひとりひとりを抱きしめてくれました。
「さあさあ、早く中へ入って。お腹が減っているでしょう。何か温かいものを用意するわ。」
孤児院は、私達姉弟と同じような年の子供が大勢いました。
皆、親しげに優しく迎えてくれました。
私達は、ここまでの道々の出来事を聞かれながら、食べたことがない美味しいご馳走を、お腹いっぱい食べ、そして、お風呂に入って、その夜は、ぐっすりと寝ることができました。
道々の話の中で、大きな鳥のようなものに乗った人から、食べ物をもらった話をすると、
「それは、僕だよっ」て言われて、驚きました。
その男の子の名は、シンジ君って言って、私と同じ12才だそうです。
私は改めて、「その時、ほんとうに助かったの。」と、お礼を言いました。
「一番下の妹が、とても喜んで笑顔で食べたのっ」そう話すと、孤児院の皆は、とても嬉しそうでした。
でも最後に、帝国軍の兵士に追いつかれて、皆で石を投げつけて、戦ったことを話すと、皆シ~ンとなって、涙ぐんで聞いてくれました。
ここは、優しくて良い子ばかりなんだと、私はそう思いました。




