閑話3 ラナの新生活 その一
本日、二話投稿です。
私の名はラナ。ハーベスト領の隣のグラント領の北にあるナーキスの村で、父と四人の弟妹達と暮らしていました。
私が12才の誕生日を迎えてまもなく、帝国軍が侵攻して来て、この村にやって来るのも時間の問題と村長から知らされました。
父は帝国軍との戦いに行き、家には、私と弟妹達しかおりません。
私は、すぐ下の弟と妹に、急いで焼きシメたパンと、水を入れた革袋を持たせ、まだ2才の妹を抱き、4才の弟の手を引いて、叔母のいるハーベスト領を目指して旅立ちました。
ハーベスト領までは、おとなの足でも5日は掛かります。ましてや、幼子を抱えた私達では、倍以上かかることでしょう。
幼い妹を抱える私よりも、子供には重い荷物を抱えた上の弟と妹は、とても辛かったと思います。
でも、一言も弱音を吐きません。二人には、わかっているのです。ここで立ち止まれば、私達の命がなくなることを。
村を出た時は、大勢の村人達も一緒でしたが、私達の足が遅いため次第に遅れ、ついには、私達だけになっていました。
夜は、大きな木の陰に、風を避けて皆で身を寄せて寝りました。
6日目には、節約して食べてきたパンもなくなり、7日目には、飲み水も無くなりました。
8日目になり、喉の渇きに耐えながら、果てしない草原の中を歩いていると、突然、空に大きな鳥のようなものが現れ、中から人が手を振っているのが見えました。
そして、私達に向けて、何かゆっくりとした速さで、ものを落とすと、私達がそれを拾うのを待っているようでした。
上の弟がおそるおそる近づいてみると、
「姉ちゃん、パンだ。水もあるみたい。」
そう言って、嬉しそうに、空の上の人に向け手を振りました。
空の上の人もなんども手を振ると、やがて遠くへ行ってしまいました。
落としてくれた荷物の中身は、野菜やジャムをはさんだパンと飲水でした。
それに、包んであった紙には、〘がんばってハーベスト領まで来てください。皆で歓迎します。〙そう書いてありました。
幼い下の妹も久しぶりに笑顔になって、私は涙を流してしまいました。




