第四話 対決 ブログリュー公爵
男爵邸に戻ると、なんだか家臣達が騒がしい。聞けば、ブログリュー公爵が乗込んで来たのだとか。客間から、ちょうど皆が出て来るところに出会した。
「公爵家に逆らうとは、いい度胸だ。男爵家ごとき滅ぼしてくれるぞ。」
「ほう、国内で戦争でも起こしますか。如何に公爵家と言えども、王家の処罰を免れませんぞ。」
「なにぃ、目にものを見せてくれるぞ。」
俺は、その男のあまりの傍若無人に、思わず声を上げてしまう。
「ならば、生かして帰す訳には、参りませんね。公爵にはここでお亡くなりになって、いただきましょうか。」
「なんだとぅ、そんなことをして、ただで済むと思うか。」
「ほう、公爵様ともなれば、命は二つありますのか。」
公爵の護衛達が駆け寄るより早く、俺は公爵の首すじに刀を当てる。「動くな、動けば公爵の命はない。」
「どうするというのじゃ、ただでは済まんぞ。」
「俺は、昨日たまたまここに来たばかりの旅人。男爵家ともこの国とも、縁もゆかりもありません。公爵を殺してもこの国を出て行くだけ、分かりますか?」
「お前も、生かしてはおかんぞ」護衛の一人が声を上げる。
「護衛が公爵を護れなくて、生きていられるのですかね。」
護衛達が怯むのが分かる。
「どうすれば、いいのじゃ?」
「公爵が男爵家を脅し、無理矢理に令嬢を嫁にしようとしたこと。今後一切、手出しをしないと誓約書を書いていただきましょう。その誓約書は、二通、一通は王家に渡します。
また、誓約を破ったときは、ご長男共々、命は短いものと心得ください。これはただの脅しではありません。その証拠に近いうち、公爵様の身近の命を奪って見せましょう。」
公爵は、誓約書をしたためると俺に渡した。
俺は、公爵の首すじに刀を当てたまま、門まで送り出した。
さあて、どうせ大人しくしている訳がないか、ちゃんと思い知らせることにするか。
「コウジ様、ありがとうございました。でも大変なご迷惑をお掛けしてしまい、これからどうなさるおつもりですか?」
「俺は、明日ここを出ます。公爵領に寄った後、他国に旅に出ます。公爵には思い知らせるつもりですからご心配なく。」
「えっ、そんなコウジ様ばかりに厄介事を負わせてしまいますわ。」
レイネが心配顔で言うが、俺は笑って答える。
「心配ない、短い間だったがお世話になった。ありがとう。」