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第八話 レイネの初恋 その三

 「ロッド、コウジ様のお住まいは、どんななの?」

 私は、街外れのお住まいについて、聞いてみた。

 「小さな丸太小屋を建てて住んでいます。井戸を掘り、カマドで瓦を焼き、屋根もできました。今のところ、たまにしか帰っていませんがけどね。」

 そう言うと、ロッドはおどけたように、微笑んだ。

 「二人だけでお住まいなの?誰か女手はいないのですか?」

 私は、核心部分をさり気なく聞きだす。

 「全くの二人暮らしですよ、コウジ兄ちゃんに女の人の助けなんて、家事から何でもできる兄ちゃんには、考えられませんよ。」

 ほっとした。だけど、それは私も必要とされないということ。なんだか、安心できる気がしない。

 

 私は、コウジ様にお願いして、料理を教えていただくことにした。包丁の使い方から、調味料の入れる順番。そんなことがあるなんて、ちっとも知らなかった。

 初めは、ぎこちなかったが猫のように左手をまるめ、爪に沿って包丁を動かす。芋や人参の皮剥き器を作ってくださったので、便利で重宝している。そのうち、舘でも料理を作って、父や母を驚ろかそう。 

 

 だいぶコウジ様と親しくお話しできるようになった。私の計画は、密かに確実に進行中。

 このごろ、毎日、孤児院へ通う私を、父と母がなにやら、生暖かい目で見ている。


 「コウジ様、私のことは、レイネとお呼びください。だって、私は料理を教えていただくコウジ様の弟子なのですから、弟子をお嬢様などと呼ぶのは、おかしいですわ。」

 私は、さらに一歩、距離を詰めることにした。これだけは譲れないとの、断固とした言い方に怯んだのか、コウジ様は了承の返事をくださった。

 「そう言うなら、そうするが。俺の様付けも止めてくれないか?」

 「コウジさんとお呼びしても?」

 「ああ、それでいい。しかし、子爵達の前では呼べないぞ。」 

 「大丈夫です、父も母もコウジさんを特別な方と思っておりますし、じきに慣れますわ。」

 しれっと、レイネに言われて、そんなものかと、納得してしまう。もともと、元の世界では普通は、皆平等だし、親しい間柄では敬語など使わないしな。

 こうして、俺は、レイネの計略にまんまと嵌められて行ったのだが、この時は知る由もない。

 

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