第五話 孤児院の再建 そのニ
みなしごパン工房では、夕方の販売のみ、菓子パンも40個限定で販売することにした。
野苺のジャムを中に入れて、耳を付け顔を描いた猫パンと、蜂蜜をたっぷり巻いたロールパンだ。発案者、アーシャのドヤ顔が凄いっ。
そして俺は、再建第ニ案を発動した。
三週間後、みなしごパン工房も定着した頃、俺は、ボッシュの店で数人分の農具を受け取り、荷車を引いて、孤児院へ向った。
孤児院の裏には、小さな畑があったが、その周囲の草地を買い取り、孤児院の畑として開墾することにしたのだ。
途中、運送屋で二頭の馬を借り、連れて行く。荷車を馬に引かせ、孤児院の裏地に着くと、ロッドと二人、馬に鋤を引かせ土を起していく。
「ロッド、大丈夫か? 馬は手綱を右に引くと右に曲がり、両方引くと止まる。進める時は、ゆるめて大きく揺らしてやるんだ。」
「コウジさん、とっても面白いです。馬が僕の言う通りに動いてくれます。」
「油断するなっ、馬に蹴られたら、大怪我だぞつ。」
「はいっ、気を付けますっ。」
ロッドは、にこやかに答えてる。だいぶ明るくなった、連れてきたばかりの頃は、一人沈んでいることが多かったが、孤児院の子供達に懐かれて、吹っ切れたようだ。
それから三日かかって、二町程の土地を開墾した。近くの川から水を引き、何本か作ったあぜ道の脇に小川を作って、畑に水を入れた。
一週間程で畑の土も良さげなやわらかさになり、種蒔きをした。季節は初夏、大根、人参、キャベツ、ジャガイモ、さつまいも、玉ねぎ。トウキビと野苺も植えた。
ジャガイモとさつまいもは、カルロに遠方から仕入れて貰ったもので、近隣にはないものだ。
そして、メインの小麦は、畑の半分。大麦も4分の1程植えた、収穫後ビールを作ろうと思っている。
二ヶ月後、人参とキャベツがまだ成育途中だが、収穫できた。年小の子供達が草取りや水やりを一生懸命やってくれたおかげだ。ちなみに水やりは、ジョウロを作って、小川から汲んで撒いた。
孤児院の台所には、塩、胡椒、醤油、味噌、砂糖、油などを常備したが、子供達が野菜嫌いにならないように、マヨネーズを作って野菜の収穫を祝った。だが、心配はいらなかった、自分達が丹精込めた野菜を「美味しいっ、美味しいっ」と皆、笑顔で食べていたから。
それから更に二ヶ月後、麦の収穫をカルロ達に応援してもらい、孤児院総出で行った。
天候にも恵まれ、大豊作で、パン工房の材料も含め、孤児院で使う二年分の収穫になった。
こうして、孤児院の再建計画は一段落したのである。
ちなみに、シスターの名は、ナターシャと言うのだと泣きながら、感謝されながら、初めて聞いた。




