表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ランボーな生活《悪業には、天誅を。スマホ検索で、生活改善。俺の目指すのは、まわりのみんなの笑顔だよ。》  作者: 風猫《ふうにゃん》
第13章 俺は、スマホの知識で味の世界を広げる
122/136

第一話 米の真髄(しんずい)

 アオ族村ができて、もっか絶賛(ぜっさん)開拓中です。

 モルゴン村の開拓で、ノウハウを身につけたブルータスの鍛冶ギルドと、商業ギルドは、細かいところまで行き届いた配慮で、(ラナ)の施策を次々と熟してくれます。


 最優先で行ったのは、鉄道と駅舎の建設。加えて、公民館兼村長館、街の区画整理と道路の舗装。これらは、2ヶ月で仕上げてくれました。

 そして、部族民のための住居は、商業ギルドが、プレハブ工法でブルータスの工場で作り、組み立ては、鉄道の開通後に部材を運ぶと、一ヶ月で600戸分の共同住宅と、30棟の寮を建ててしまいました。

 住宅を戸建てではなく、共同住宅としたのは、アオ族の人達が子供を皆で育てる環境を(こわ)したくなかったからです。

 また、単身者の住宅は、(まかな)い付の寮にしたのです。寮母さんには、老婆や母子家庭の女性を配し、就労の環境も整えました。

 共同住宅は、一棟30戸で、集会室と共同浴場を備えました。こちらも、管理人に男性の老人を配しました。

 

 アオ族は、定住した半農半狩猟部族です。

ですから、農耕には、熟練していますが、困ったのは、米の栽培でした。

 米の栽培は、湿原地での直播きで行っていたそうで、湿原地のない土地でどうしようか悩んでいると、見透かしたように、コウジ兄様が、水田という畑を、作るように命じられました。

 設計図面を鍛冶ギルドのメンバーに渡して、私も説明を聞いていたのですが、直播きでなく、苗を育てて、植え替えるとか、どうして、そんな知識があるのか、驚く以外に方法がありません。

 馬や牛に(すき)を引かせて、部族の男達総出で、大掛(おおがか)りな田起しと(あぜ)作り、そして灌漑用水路の造成が行なわれました。


 コウジ兄様は、アオ族の人達に、食用に持って来た米の(もみ)まで、苗に回すように言い、秋の収穫まで、パンと麦飯で我慢するように言いました。アオ族の人達は、収穫を増やすためだと知り、絶賛協力をしてくれました。


 苗が育つと、コウジ兄様の指導のもとに、苗の田植えが、行なわれました。

 円柱の竹で編んであるようなものを、田で転がすと、田の泥の上に、幾つもの四角が(えが)かれ、その角に3·4本の苗を植えて行くのです。腰が痛くなります。でも、がんばらなきゃ。

 田に水を入れ、成長を待ちます。植えてしばらくすると、コウジ兄様は、今度は(こい)の稚魚を水田に放しました。雑草や虫を食べてくれるのだそうです。

 『なんで、そんな知識を持っているんですか?』と尋ねたら、『俺は昔、アオ族と同じような種族だったのさ。』って、信じられないような答えが返ってきました。


 そして秋、たわわに実った稲は、穂を垂れています。アオ族の人達は、何倍にもなった米の収穫量に驚いています。

 ここでコウジ兄様は、またまた私達を驚かせます。稲を刈る《(かま)》という道具をいつの間にか用意していたのです。

 アオ族の人達は、小刀で穂だけを刈っていたそうですが、稲を根元から刈りとり、それを束にして、逆さに吊るして、乾燥させるのだそうです。

 ここまできたら、アオ族の人達も、コウジ兄様の言いなりです。乾燥後の脱穀機、水車小屋での石臼精米、アオ族の人達も驚くほかないようです。



 さて、実食です。私は初めて食べる米というものが、どんな味がするのか、わくわくしていました。

 米は、厚い木の(ふた)がある、大きな鉄の鍋で炊いています。一つの鍋で20人分が炊けるそうで、この鍋は、アオ族の人達の寮で使うそうです。

 最初に、一口サイズの小さな米の固まりが、配られました。私やハーベスト領とモルゴン村から、招かれた50人ばかりが、試食します。

 味は、思ってたのと違い、淡白です。噛んでいると、ほのかに甘みが感じられます。

 次に配られたのも、一口サイズの固まり。口に入れて驚きました。先程と比べて、はるかに甘みを感じるのです。コウジ兄様の説明によると、塩を少量付けた手で握ったのだそうです。

 そして、最後は、小さなどんぶりに、米を盛り、おかずが配られました。

 おかずは、小魚の甘辛煮、玉子焼き、大根おろし、細かく(きざ)んだ大根を酒と砂糖、塩で味付けたもの、など。

 一緒に食べると、こんな味があるのかと、衝撃(しょうげき)を受けてしまいました。

 そして、最後に食べた、生の魚の切り身が載った、一口サイズの米。あれ、米に味が付いている。甘ずっぱい薄味が、とてつもなく、米の味を、いえ、上に載せた醤油と辛味の生の魚と、合う。合うとしか言いようのない味。しばらく、ぼーっとしてしまう。


 コウジ兄様の説明は、続きます。

『米にもいろんな種類があり、食感もいろいろだが、今日の米は、そのまま食べて、一番旨(うま)い米だ。

 だが、米の食べ方は、これだけじゃない。いろいろな味を付けたり、焼いたり、たっぷりとシチューのようなものを掛けたりと、麦より、はるかに食べ方がある。

 米の栽培が増やせたら、来年は、皆に食べたことのない米料理をご馳走しよう。』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ