第1章 第5話
8時の更新忘れてました!すみません!
「いやー、美味しかったぁ。ここは当たりだよ!」
満足そうにお腹を摩りながら俺たちは店を出た。
「まあ、確かにうまかったな。てかシエル、お前食いすぎだろ。どこにあんだけ入ってるんだ」
「美味しいものはいくらでも食べられるのよ!別にいいじゃない、お金はまだ余ってるんだし」
「ま、そうだな」
実際、ここで使ったお金は手持ちのほんのわずかだ。
そして、この食事を通して分かったことがある。
1つはこの世界がどういった所なのか。
隣のテーブルに座っていた老人に話を聞いた。
この世界は数万年前に誕生したと歴史書には記されており、幾度もの生態系の変化を経て、今に至るという。
数千年前までは、人間と魔族と呼ばれる亜人種との争いが絶えなかったらしい。
しかし、今では魔族と人間は不可侵の関係だ。
ごく稀に、魔族も人間の領域に入ることがあるというが、おそらくシエルのような契約悪魔のことだろう。
そして、この世界には魔族とは全く別種類のモンスター呼ばれる生物が無数に生息している。
モンスターからは、人類に有益な素材や情報が手に入るため、それを倒すために冒険者という戦士が存在する。
生態系の維持という理由もあるが、人々の生計を立てるための仕事としてモンスターを狩っている。
冒険者がモンスター狩りなどの仕事を管理するのがギルドと呼ばれる施設だ。
だいたい予想はついていたが、このギルドで冒険者登録をする。
そして今、俺達がいるのは世界で3番目に大きな街、メンヘンだ。そしてここは最も冒険者が集まる街でもある。
魔族との争いがないのは以外だったが、これぞファンタジー世界だ。
そしてこの世界の経済状況も少し理解した。
この世界では、通貨は共通のレクという単位だ。
この世界の成人の平均収入は月に15万から20万レク。
今回、俺達が食事で使ったのが2人で2200レク。俺は700レクのメニューを食べた。
これは俺の推測でしかないが、この世界での金の価値は、日本のそれと酷似していると思う。
つまり、この世界での1レクは日本での1円と同じ価値ということだ。
なんて便利な世界だ。日本人が馴染みやすくなってる。
俺のような転生者がよく来るから、都合よくつくられているのか?
そして、現在俺の所持金は食事代を差し引いて2万7800レク。初期金額は3万あったって訳か。
これだけあれば、冒険者として稼げるまではなんとか生活出来るだろう。
野宿は流石にゴメンだけど、安い宿なら当分はもつだろう。
とにかく今は冒険者になるのが先決だ。
俺の異世界生活はそこから始まるんだからな。
「よし、飯も食ったし、店の爺さんが言ってたギルドに早速行こうぜ」
「あー、うん、そうね」
どうしてかシエルは少し歯切れの悪い返事をした。
さっきまでめちゃくちゃ満足そうな顔してたのに。
なんか怪しいな。
まあ、今はどうでもいいか。
一抹の疑念を無理やりかき消し、俺達は冒険者ギルドに向かった。
10分程歩き、ようやく目的地に到着した。
「おお!これがギルドか……以外と小さいんだな」
ギルドは一見して、二階建てだ。
1階は受付やロビーのスペースで、2階は酒場ってところか。
「とりあえず入ってみるか」
妄想ばっかりしてても仕方がない。
俺達は恐る恐る、ギルドの扉に手をかけた。
中からは騒がしい声が聞こえる。
俺はゆっくりと扉を開けた。
ギルドの中は、俺の想像以上の光景が広がっていた。
「こりゃ……すげぇ」
目を丸くしながら俺はそんな言葉を漏らした。
俺が異世界に来てから、鎧を来た大柄な男や、魔法使いっぽい、冒険者らしし人をちらほら見たが、そんなのとは比べ物にならない。
ゲームとか漫画で見た光景とは訳が違う。
本物の戦士達が俺の前に大勢いる。
臨場感がまるで違う。
俺は緊張と興奮で出た汗の滲んだ拳を強く握り呟いた。
「俺、異世界来てほんとによかった……」
1人で感動に浸っていると、後ろから完全に存在を忘れていた悪魔の少女から声がかかった。
「ちょっと、まだ入っただけでしょ。こんなところで感動してる暇なんてないんじゃない?」
シエルの言葉で、固まっていた思考が再起動した。
「お、おお、そうだよな。こんなんでいちいち驚いてたら身が持たないもんな」
いかんいかん。ここは本物のファンタジー世界なんだった。
これからはこの異世界に順応していかなければならない。
物怖じしてたら他の厳つい冒険者に舐められるしな。
そう思い、俺は堂々と胸を張って歩き出した。
と、その時だ。
「おぉ、見ねぇ顔だな。そこの坊主」
ものすごく図太い声が俺の体の側面に響き渡った。
「ひゃ、ひゃいっ!?」
ついさっきした決心を一瞬でかき消すような、だらしない声を漏らした。
声の主の方に恐る恐る視線を向けた。
そこには、想像していた通り、全身鎧の大柄な男がいた。
歳は三十半ばあたりか。
兜はつけておらず、その幾度も死線をくぐってきたような強面を露わにしている。
見ただけでわかる。
この人、かなりヤバいやつだ。
冒険者になる前からいきなりこんな厳ついやつに目を付けられるなんて、マジでついてない。
「え、えっと……俺に何か……」
このまま黙っていると、機嫌を損ねてしまうと思い、覚悟を決めて返事を返す。
「怖がらせてすまなかったな。初めて見る顔だったもんでつい声をかけたんだ。俺はグレイ、よろしくな」
「あ、そうなんですか……俺はフーガって言います」
声は図太いままだが、以外と柔らかい口調だった。
その厳つい顔もあって、ギャップの激しさに少し恐怖を感じた。
でも良い人そうでよかった。
そんな風に安堵していると、グレイはやたらと俺の方をジロジロ見てきた。
「にしても変わった服装だな。噂に聞く、転生者ってやつか」
グレイの放った言葉に俺は目を見開いた。
「えっ、転生者のこと、知ってるんですか?」
「まあ噂に聞いただけだがな。たまにそういう奴がいて、だいたいは化け物みてぇに強いらしい」
そうか。
この異世界に来るやつは、俺だけじゃない。
今まで何人も日本人がチートを持って転生してるんだから、そりゃ知ってるか。
「そういえば、フーガって言ったか、お前の後ろにいる娘っ子は何なんだ?」
そう言いながら、グレイは俺の後ろにいるシエルの方に視線を移した。
「ああ、えっとこいつはシエルって言って、俺と契約した悪魔です」
その言葉を発した後で気づき、一瞬息が詰まった。
つい流れで悪魔のことを話してしまった。
この世界では昔、悪魔達と争っていたらしいから、もしかしたら嫌悪感を抱いてしまうかもしれない。
どうしたらっ。
そうやって葛藤していたが、グレイの言葉でそれが消えた。
「おお、こいつが悪魔か。俺も見るのは初めてだが、人間とほとんど変わらないんだな」
「あ、そうですか……」
人にとって、悪魔は嫌悪の対象だと思い込んでいたが、それは杞憂に終わった。
「悪魔との争いなんて、何千年も前の話だしな。今は不可侵の関係だが、悪魔と契約を交わした冒険者の話はそう古くない」
「え、マジすか!?俺の他にも悪魔と契約した人いるんですか?」
「詳しくは知らないが、20年ほど前に悪魔と契約して強い力を得たという話は耳にしたことがある」
そうだったのか。
その話を聞いて、俺のシエルに対する期待は格段に上がった。
きっとこいつもすげえ力を持ってるんだろう。
そんな俺の期待の眼差しをシエルに送ると、彼女は何故か苦笑いをしながら視線を逸らした。
なんだ?さっきから。
「あの、色々教えてくれてありがとうございます、グレイさん」
「ああ、また聞きたいことがあったらいつでも来な。フーガもこれから冒険者になるんだろう?」
「あ、はい!俺もこれから冒険者として頑張ります!それじゃあまた!」
そう言って、俺達はギルドの奥にある受付所に向かった。
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