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4.帰宅・お仕事

 合格印を受け取り、家に帰りつく頃には朝方になってしまった。

 扉を開けると中はランプの火がついていて、レーヴァが待っていてくれた。


「ただいま」


「おかえりなさいませ。 ……そちらのアンデットは?」


 室内に入り扉を閉め、レーヴァの冷たいまなざしを受けながら、後ろをついてきたテッセラを紹介する。


「今日の授業の一環で制作した、今後授業で使用するアンデット テッセラ。 元々は誰かが制作したアンデットのようだけれど、放棄されて劣化していたから修復して主従を書き換えたんだよ」


 レーヴァはじっくりとテッセラを眺める。


「男のようにみえて、女のようですね。 キメラ型のようですがよろしかったのですか?」


「修復するときに調べたのだけれど、とても高度な技術で作られていて、これはかなりのネクロマンサーが」


「そういった詳細な事は結構です。 リジェ様が問題ないと判断するなら構いません」


 アンデットについてレーヴァは興味ないからこれだもんなぁ。たまには心行くまで死霊術について語りたい。


「それで、テッセラには普段の作業として、何を任せられるんですか?」


「え~と、力は常人くらいだと思うけれど、精密動作は一般人くらいかなぁ。 まだテストしてないからわからないけれど」


「では任せてみましょう。 テッセラ、このコップを持ってみなさい」


 レーヴァはテッセラに木で出来たコップを差し出し、テッセラが第一腕で持ったのを見ると中に水を入れる。


「テッセラ、こぼさないようにゆっくり動いて。 テーブルまで歩いて、その上において」


 テッセラはこぼすことはなかったものの、動きはゆっくりとしたもので、テーブルまで4mを20秒ほどかけて歩き、6秒ほどかけてコップをおいた。


「調整が必要ですね。 それが終わるまで簡単な仕事以外任せられません」


 レーヴァはテッセラから視線を外し、台所に向かった。

 確かにテッセラは基本的修復をしただけで、調整はまったくしていない。

 次の講義までに少し手を加えてるとして、まずは基礎運動をさせて、間接と筋肉に馴らしを入れて、神経系も事によっては魔石で繋ぎ直しもいるかもしれない。

 でもそうなると魔石が結構な量必要になるんだけど、手持ちもないし購入するにはお金がかかりすぎる。


「朝食になってしまいましたが、お食事の用意ができています」


 レーヴァの声に考えを止めると、台所からトレーに乗せてパンとスープをレーヴァが持ってきてくれた。


「おなかすいてたんだ。 ありがとう」


 椅子に座わろうとすると、レーヴァに椅子を引かれそのまま地面に倒れてしまう。


「まず手と顔を洗ってきてください。 お食事はそれからです」


「……せめて椅子を引く前に言ってくれませんか」


 打ち付けた尻をはたきながら立ち上がり、そう訴えるけれどレーヴァは呆れたような表情を浮かべる。


「前から言っています。 それが一度できたら、次からはそう致しましょう。 アイン、お湯を入れた桶を持ってきて」


「……気を付けます」


 以前修復したアインが、台所からお湯の入れられた桶とタオルを持ってくる。

 テッセラと違って動きもスムーズで、お湯もこぼす音なくテーブルの上に置いた。


「アインありがとう」


「いえ、大したことではありません」


 アインはまだ表情もないけれど、話しかけた言葉に反応している。

 少しずつだけど、知性も戻りつつある、もしくは付いてきたというべきかな。


「どこか体に異常は?」


「胴体及び四肢に問題ありません」


 まだ完全ではないけれど、名前を与えて時間が経ったのでアインにも少しだけ個性と感情が産まれ、このまま魔力を枯渇させずに居ればちゃんとした自我も確立しそう。

 しかし、そうなると非常時に備えて魔力を貯蔵できる魔石が必要になるわけで。


「リジェ様? お食事が冷えますが?」


 凍り付くようなレーヴァの言葉に、考え込んで動きが止まっていたのを思い出した。

 急いで手と顔を洗いを済ませ、食卓に着く。




 数日後、いずれは貯金が枯渇してしまうため、師匠に紹介されていた死霊術師ホルクの元を訪れた。

 早めにお金を得る方法を確保しておかないと、今後に困ってしまうからなんだけど、訪れた家は年代物なのは良いとして、掃除をしている様子もなく、入口のドア周辺は埃も積もり蜘蛛の巣も張っている。


「……汚い」


 木も草も伸び放題で、自分もそこそこの無精者だとは思うけれど、さすがにここまでではない。


「すみません。 師匠の紹介状を持ってきたのですが」


 蜘蛛の巣が少し張っている扉をたたく。

 しかし反応はなく、代わりに積もった埃が降ってきた。


「留守というわけでもなさそうだけれど、裏口かな?」


 使っている様子がないのなら、もしかしたら入り口付近は荷物で埋まっているのかもしれない。

 失礼ながら裏にまわると、埃が積もっていない扉がある。

 裏口に回ると埃はほとんどなく、ドアにも蜘蛛の巣が張っていない。やっぱり表側はほとんど使わず、裏口を多用しているみたいだ。


「ホルク死霊術師、突然すみません。 フォルス師匠から紹介状を持ってきたのですが」


 扉をたたくと、今度は誰かが室内で歩く音があり、少しして扉が開かれた。

 研究者という感じの、白髪も髪もボサボサの60歳くらいの人が出てきた。

 差し出した紹介状を受け取り、中を開いて確認している。


「お前さんフォルスの弟子かい」


 こちらに目も向けずに、手紙の内容を読んでいる。


「はい。 フォルス師匠から指導を受けていました。 今期入学しましたので、生活費に関して仕事を回してもらえと言われています」


「うーむ。 仕事となると、最近はわしも歳で採取が大変だから、それを代わりにやってもらおうか。 目利きはフォルスの弟子だからできるだろう?」


「恐らくできると思いますが、満足できるものを集められるかどうかはわかりません」


「それなら、今回は大人の男型アンデットを1体分取ってきてくれ。 美形好きの婦人に頼まれているから顔がいい奴でな」


 そう言うとホルク死霊術師に扉を閉められてしまう。

 まぁ、調度品や荷物持ちなんかにさせるから、美男子のゾンビなんかは需要が結構あるし、とりあえずお仕事として廃墟の町にもう一度行ってみよう。

 そういえば、報酬金の話をしなかったけれど、大丈夫なんだろうか。

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