終
入学してから20年の研鑽に過去の死霊術士との対話、禁蔵書から得られた知識、最高位の死霊術士の協力、そして自らに刻まれている術式、完全なる死者蘇生の法の理をリジェは解する事が出来た。
ただしそれは下法と呼ばれる死霊術の中でも禁ずるに値する法術、学園筆頭死霊術士の元で実施することになりそこにリジェはレーヴァと共に訪れ、説明をしていた。
「しかし、それではリジェが」
「それでも、やっぱり自分は秘術を完成させたい。 そして移すなら君しかいないから」
レーヴァは生まれながらの天才、24歳にして騎士団長に抜擢される強さと美しさ、そして部下からも慕われていた。だが、それは妬みを生み、最期は同じ騎士に毒殺された。その毒殺にはネクロマンサーの手引きもあった。謀りと利害の一致、優秀なアンデットを手に入れるため、生者の命を奪うネクロマンサーも居る。
レーヴァとの出会いは、依頼で死体を安置所への輸送中するに見せかけ、町の外に運び出している所を襲撃した依頼の時。
「全死霊術士、支配を!」
偶然や運のよさもあった、道を外れた死霊術士が居るとして取り締まる為集められた8人のうちの1人がリジェであり、死霊術士が周囲のゴーストやアンデットを扱えないよう封殺する手はずだった。
全員が詠唱を行い、広範囲にゴーストや地に埋もれている骨格死体が集まり、犯罪者側の戦力とならぬよう支配していく。
輸送馬車が停止すると標的となる悪質と言える死霊術士2名が飛び出した。
「くそ! どこから知られたか!」
「全部出すぞ! 皆殺しにしてアンデットにしてやれ!」
道を外れた死霊術士によって括られたアンデットの数は多く、ゾンビやグールなどが馬車や荷車から出てくる。
ある程度の自我を保つアンデットを集めていると供給魔力の関係で10体程度で限界が来るが、魂の残照を括り消耗させることで単純動作ならば無制限に従う数を増やせる。といっても対話によって従えたアンデット達、それを無理やり魔力で奪い従えるのは至難の業、何よりも8人が広範囲を抑えている上に数が違い過ぎる。
「頼みが済めばちゃんと償還します。 皆お願い」
リジェに従うスケルトンの数は11、大口を開き喰らい付こうと迫るグールに襲い掛かり噛みつかれながら手足や首をもぎ取り仕留めていく。
スケルトンよりもグールやゾンビの方が力は上、だけれど骨が砕かれても頭部が無事な限り体を動かそうとする、知性をもって頭部を破壊しようとしないグールやゾンビとは泥仕合になり、足止めと言う意味では数が多い方が有利であった。
「グール共はスケルトン達で抑え込め!」
「あと少しだ! 一気に仕留めろ!」
他の死霊術士が従える少数高性能なアンデット騎士や戦士は数が少ない、数が多いグールたちに足止めを受けていたが、スケルトンの群れが徐々にグールを押し返し二人の死霊術士はすぐにとらえられた。
「お疲れ様です」
協力してくれたスケルトン達を約束通り、残留する無念や心残りと共に昇還し骨は粉々になり地面へと散らばる。
骨を拾い集め一か所に埋めると安寧の祈りを捧げる。その間に他の死霊術士たちは捕えた者達を拘束し、多様な手段で聞き出していた。
「おいおい、こいつら騎士を殺したのか」
「……国家から連絡はない。 結託して暗殺されたのだろう」
棺には魔石によって拘束されていた魂と、腐敗しないよう処置が施された女騎士が棺に納められていた。
死霊術士による殺人を行うとき魂を拘束した上で石の自由を奪う邪術をおこなうことがある、魂を拘束する事で知能や知識をある程度自由にできるために苦労をしなくても高い力を持つアンデットとなる。
何もなく残留思念などを利用した方法より確実に知識や知性が確保できるが、強制的に魂を拘束してしまう下法中の下法。
全員で集まり、拘束されていた魂を昇天させたものの、従えていたスケルトン達を失ったことで、他の死霊術士に進められ自らのアンデットとして契約することとなった。
主要な魂を昇天させたと言っても、残照のようなものが肉体には残る、そこに残照意識に拒否されてしまえば契約できない方式を使うこと、それが正規の方法となってから死霊術士は一般人からそれほど迫害されることはなくなった。
解散後に自らの家に運び込み、話し合いで契約する事になり、師匠から引き継いだ財産を全て使い、10個もの高純度の魔石を埋め込み、命の連結までし目覚めたとき。
「確かに主ですが、私は私ですので」
自然な状態で自己を確立していた。一応の主従関係はあるが、奴隷でも従僕でもない。私生活を正され、財布も管理され、定期的に剣の鍛錬までさせられている。厳しい教育係なようなものであり、それでも師匠以外家族がいないリジェにとって大事な存在になるのは速かった。
「ずっといてくれてとても楽しかったんだ。 家族というのがこういうものなんだって」
逆エナジードレイン 転贈魂、限りなくゼロに戻した魂の力と器を対象に譲り渡し、記憶や意思を治める器とする。それが完全なる死者蘇生の秘術。
何重にも刻まれた魔方陣の中心にリジェとレーヴァが向かい合わせに立つ。
完全に修復された肉体と修復された脳が思い出しさらに積み重ねた記憶をもとに、レーヴァの体に生命力が流れ込み生命と魂を再構築していく。自らの命と魂を引き換えにした、完全なる死者の蘇生。
「レーヴァ、いままでありがとう。 そして、誕生日おめでとう」
リジェが地面に倒れると同時に全ての術式が起動し、体から離れた魂が空虚なものへと変わるとレーヴァへと流れ込む
魔力を元に疑似的生命活動を行っていた体が、魂から供給される力を元に生き物として活動を再開し人間へと再生した。もはや完成度が高いアンデットではなく完全な生命体として復活を果たしている。
「素晴らしい。 しかし、やはり死者の蘇生は禁呪である。 今後、完全なる蘇生が行われることはないだろう」
学園筆頭死霊術士は魂と命を失ったリジェを抱えるレーヴァを見ながらそう呟き書に記載。魂の核は祖師からリジェ、そしてレーヴァへと繋がれ、完全な死者蘇生は完成とともに封印された。
今の私では満足できるところまでどうあがいてもかき上げられない為、かなり間を省いて最終話を上げます。
もし楽しみにしている方が居たら申し訳ない。
あくまでプロトタイプのような仕上がりなので。




