表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

第五話「いざ、地下の世界へ」

 エレボス国の重鎮達の会議の最中、ジルの侵入に気付いたヤマルは王位継承の儀の為に静かに執り行うように重鎮達に声を掛け始める。一方でヨウ達は銀木犀のイルドとばったり会ってしまい・・・・・・?

 エレボスの街が靄で侵食される中、新たに動き始める影が!

 「一目惚れしたわ!結婚を前提に付き合ってくださいまし!」

 「ごめんね、付き合うことは出来ない。」

 「ガーン!!」


 シワの森にて、ヨウ一行にイルドが出会って早々、一世一代の大告白をイルドがかましたが華麗に断ったヨウ。断られたショックで打ちひしがれたイルドは地面に項垂れる。一瞬の出来事にリンやライも目を丸くするばかり。流石のヨウも少しやるせない面持ちではあった。

 「え、えっと……?」

 「ヨウ、このハイプラントが来ることを察してたか?」

 「ん……まぁ、ね。」

 「ハイプラントでも最高の美貌を持つ私を振るなんて……俄然貴方が好きになりましたわ!」

 

 項垂れるも直ぐに切り替えて朝日を浴びるが如く、背伸びをするイルド。その逞しさに思わず拍手をするリンと感心するライ。当方のヨウはやれやれと髪を掻くばかりだが好都合であるのは変わりないようで。本来神格化した者を選定及び勧誘するのがヨウの役目でもあり、このシワの森に来たのも、リンの澱み調査以外にも神格化したハイプラントの勧誘もあったのだ。それが、ヨウ達の目の前で激しく動いているイルドであった。暫く告白と否定の押し問答が続く……。


 シワの森、魔国エレボス付近にて。ヨウの側にいたいとイルドにせがまれ続け、考えればこれは勧誘の手間が省けたと至ったヨウはそれであれば承諾したようで、ヨウの腕にイルドが嬉しそうにしがみついている。

 「歩きづらいんだけど……。」

 「はぁあああ!!これが逢瀬というもの!?ハイプラントではなくてヨウ様と同等の種族として生まれたのならば容易く出来たであろう所業!それがハイプラントで叶う、なん、て!!」

 最高にハイとなっているイルドと誰か助けてくれと視線を向けるヨウに後続の二人は静かに視点をずらしながら、件の紅い霧が発生しているという洞窟へと向かっていくのであった。


 一方で、エレボス城。エレボス城はそれぞれの科の寮的な建築物がずらぁと設けられた囲み城である。中央にそびえ立つ教会のような建築物がエレボス城主とその家族が住んでおり、中には謁見の間や会議等で使われる大広間等がある。中央より、北側は外政や魔鋼採掘科がある棟で、城門以外で外へと赴く為の門が点在し、国外へも行ける。東側は魔導植物科が牛耳る棟となっており、棟の屋根にまで、植物の蔦がびっしりと這っており、異様な雰囲気を醸し出している。南側はエレボス城の城門に伝う棟であり、国民達が主に出入りできる限られた棟である。国民達の要望等を受け付ける国の役場。そして、国民を守る為に生まれた魔導兵士を製造する機械科の部屋も棟内にある。

 不思議な外観の中で最もまともな外観をしているのが西側にある魔導技術科棟であった。外側は魔鋼の壁で鈍い紫の光を煌めかせている。棟の入り口から覗くと、蟻の巣を観察キッドに収めたかのような巨大な区画部屋が天井高くまで設えてあった。外から見た棟では天井を突き破ってしまうのではと錯覚してしまうが、空間を広大にする魔法陣が棟内全体に敷かれているためであった。各部屋は入り口に対しての壁だけが切り抜かれているので、宙に浮かぶことが出来れば容易に入ることが出来、監視をすることが出来る。そして、宙を自在に浮かぶことが出来る者が小人族ハーフリングであるミリカだけであった。彼女が技術科の長を任されているのはこの為でもある。

 「ミリカ様、こちらが降霊術に関する魔導書です。」

 司書のようなミリカの部下が分厚い魔導書を幾つか卓上へと積み上げていく。一冊の魔導書が宙を舞うと勝手に頁が捲られていく。

 「……。」

 小さな眼鏡を掛けたミリカが目で頁をなぞり、魔導書を閉じる。そして、同じ行動を繰り返し魔導書を読み終え、眼鏡を外す。

 「我が科ではあまり扱ったことのない術式ばかり……。あのろくでなしが思いつくだけあるわ。でもこれがエレボスの戦力向上にも繋がるのであれば。」

 「ミリカ様、ヤマル王子がお見えになりました。」

 棟の扉がゆっくりと開き、ヤマルが姿を現した。ヤマルもミリカ達の視線に気付いたのかゆったりとした足取りでミリカが居る場所へと歩いていく。

 「やあミリカ。ローゼンが求めている降霊術には目処がつきそうかい?」

 「術式は至って簡素シンプルです。が、死者の魂を肉体に呼び起こすということは、エレボスの信仰でもある冥神の理を得なければ……。」

 「冥神の理か……。件の分も話しを聞かなきゃだからそろそろ行くべきか。」

 「どちらへ?」

 「ミリカ、後でスオウと共に冥府への門を叩きにいくよ。」

 「えっ!(まさかのスオウとデート!?あぁいや、王子がいるのだからデートではないけれど……でも、もし王子とはぐれでもしたら二人っきりで誰にも気付かれずに・・・・・・)」

 「警備は変わらずアレソンとローゼンに委託するとして、城全体にリーベスの感知根を張り巡らせて・・・・・・ミリカ?」

 「へぁ!?」

 惚けた表情でスオウとの妄想に耽りそうなミリカを現実に戻し、頬をペチペチとはたく。狂気の靄によって正常な思考が出来ないにしてもミリカがスオウに対しての恋慕へ異常に働いているのがヤマルが見ても分かる。奇行に走る前にも何とかしないとその内スオウにも困惑して狂気が顕れて重鎮達の間の亀裂を作る訳にはいかない。技術科棟を後にしたヤマルは北側の棟へと向かい、採掘科へと赴く。

 魔鋼窟と呼称する巨大な洞穴。エレボス全体を覆う紫の鉱石こそ、この洞穴から採掘されたものを利用している。採掘し、銑鉄・鍛造・加工に至るまでを担うのが採掘科の仕事だ。そして現在魔鋼を採掘する為にスオウ本人が洞穴へ入っている。

 ド派手な音が洞穴から響いており、ヤマルは気にせずに歩みを進める。ある程度進んだ所でいしつぶてが激しく飛び交う空間に着いた。スオウが使う魔法、超速法スーパー・ファストは身体能力を飛躍的に向上させることが出来、スオウの素早い拳で魔鋼の周りに付着している砂岩や岩を巧みに破壊している。その為破壊された岩がいしつぶてとなり空間を反射し続けている。ヤマルが華麗に魔障壁を展開していしつぶてを弾くと、採掘していた拳を止めて、ヤマルに気が付いた。

 「お仕事中にすまない。急な仕事を頼まれてくれないかな。」

 首元の砂付きタオルで汗を拭い、了承の頷きをして、どのような?と催促する表情をする。

 「僕の護衛だ。兼ねてから王位継承の儀式を執り行う予定をしていたけど、それが今日行われる。脅威はないにしても最低二人は僕の側で護っていて欲しいんだ。」

 「……。」

 少し考えてスオウは貴方なら必要ないのでは?とはぐらかした表情をする。顎に固定された金具もカチャカチャと鳴る。

 「僕の力を買ってくれるのは嬉しい限りだけど、スオウが側にいてくれたら頼もしい事この上ないんだ。」

 王子からの信頼の言葉を受けては断るのは無礼になる、と意思を固めたスオウは再び頷きで了承した。

 ミリカとスオウ。二人の同行を得たヤマルは紅い靄が発生しているであろう冥府へと足を運び始めた。


 「いたっ」

 外で遊ぶ子どもが走っては転んで膝を擦り剥いてしまったようで、滲む血が痛々しさを醸し出す。地面に座り込み、痛みに耐えている子どもの前に巨大な影が地面に落ちる。子どもが見上げるとそこには神父の姿をした大男が立っていた。底知れぬ恐怖を子どもの全身を走り抜け震えで動けなくなった。大男の無表情な顔が子どもの眼前まで近付く。乾いた大きな口がゆっくりと開く。

 「膝を擦り剥いてしまったか。綺麗な水で洗い、親に治癒魔法をかけてもらうといい。君に冥神の加護があるように祈りを捧げよう。」

 大男の袖から小さな瓶を取り出し子どもに渡して、合掌をする。暫くしてから子どもから踵を返してエレボスの街の中へと溶け込んでいった。子どもは今起きた現状にハッとし、額に汗を浮かばせる。先程まで神父の大男に感じた恐怖は一体何だったのかを考えたが、イマイチな答えを得られないままその場を後にしたのだった。

 「聞いたか?ヤマル王子がアメン王を蹴落として王になるっていう噂が巷で流行ってるらしいぞ。」

 「へぇ!私はアメン王がヤマル王子を謀殺するような噂を……。」

 街の喧騒に紛れて聞こえてくる不穏な噂。すれ違う様に神父が小耳に挟む。

 「(アメンが実の息子を謀殺……息子が下剋上・・・・・・狂気の靄がかなり影響してきている。早々に解決せねば後がないぞ?ヤマル)」

 何かを知っている神父はそのまま不穏な街を歩き続けていたが、ふと何かに気付いたようで、シワの森がある城壁へと目を向ける。

 「……神の気配がする。二つは未熟で潰せる。が、もう一つは・・・・・・。」

 訝しむその表情に僅かな期待を膨らませ、神父は誰にも気付かれないままエレボスの街から消え去った。


 「まさか、エレボスの王子があそこまで目ざといとは……計画がおじゃんだな。」

 魔国から離れた原っぱに腰を掛けて魔国を睨み付けるジルと側で直立で仮面を整える人物がいた。

 「これではエイレーネに吹っ掛けるきっかけを作れない訳だが、靄は順調に侵食を始めているようだ。流石神の御業といったものだ。それでどうなのだ?王子の動向は。」

 仮面の人物にジルが問う。

 「魔鋼を採掘する鉱脈へと向かったと証言がありました。何れ、彼の神と迎合するのでは、と。」

 「流石の王子でも冥神を説き伏せ、あの神を鎮める事は敵わんだろう。なら今が攻め時だな。王政が出来ぬ国王と見限っている王子の蟠りを更に流布させ、エレボスを更に混沌に陥れてやろう・・・・・・。」

 「……ジル。」

 仮面の人物がジルを呼ぶ。仮面の人物が指す方向を見てジルが構える。そこにいたのは・・・・・・。

 「何やら面白そうな話で盛り上がっているご様子。このローゼンにも少しお話を聞かせてもらえないでしょうか~?研究所で♪」


 二ヶ月ぶりの投稿でございます。申し訳が立ちませんが、御無礼申し上げます。すみませんでした。

 第五話を読んで下さりありがとうございます。作者のKANです。初めましての方は初めまして。

 さて、幾つか二ヶ月の間を空けた理由を抜粋します。一つは実家への帰省をして書いていなかったこと。一つは4月の始まりから腰が痛く、診断の結果。腰椎椎間板ヘルニアを罹患してしまいまして、椅子に座るのも辛く、横になるのも辛いと毎日が痛い痛い。漸く、痛みが落ち着いたのでこうして小説をしたためている訳であります。まぁ、またひと月跨いでの投稿になる可能性は高くなるとは思いますが、ご了承いただきたく存じます。では、次回のあとがきでお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ