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気まぐれと罪

作者: 彩葉
掲載日:2019/06/25

サラッと虫の死の描写があります。


苦手な方は回避お願いします。

 僕は素手で虫を殺さない。


 いや、違う。


 僕は素手で虫を殺せない。




 夏になり、皆が普通にとる行動。


 パンッ、パンッ


 蚊を叩く。


 それすら出来ない自分が時に情けなく、時に煩わしくなる。




 食事中、小バエがプワンとした時も。


 バッ、バッ


 手で払う。


 それすら躊躇う自分が時に恥ずかしく、時に同席の者に申し訳なくなる。




 何故出来ないのか。


 虫が怖い?


 いや、違う。


 カブトムシもクワガタも、蝉やトンボ、テントウムシだって触れる。


 流石にゴキブリは無理だけど、ちょっと頑張ればダンゴムシ位なら触れる。




 なら何故出来ないのか。


 殺すのは可哀想だから?


 いや、違う。


 ティッシュや雑巾を使えば退治できるし、殺虫剤だって使う事ができる。




 では何故出来ないのか。


 虫を潰したら汚いから?


 ある意味それもある。


 でも、違う。



 僕はただ臆病なのだ。


 素手で虫を殺したら、その命の死因が「自分の手による圧死」になると恐れているのだから。



 僕はただセコいのだ。


 ティッシュを使えばその薄い一枚を隔てただけで、死因が「ティッシュで圧死」に変わると考えようとしているのだから。



 僕はただズルいのだ。


 殺虫剤を使えば、その命の死因が「毒殺」に変わり、自分の手を直接汚していないと思おうとしているのだから。




 どれ程間に何かを介そうが、


 どれ程素手を汚していなかろうが、


 本当は僕の手はそこまで綺麗ではないと知っている。


 別にいつも命の重さを気にしている訳じゃない。


 昨日だってトイレに出た大きな蛾を新聞紙で叩き殺した。


 でもたまに、凄く空しくなるのだ。



 どこから入ってきたのか、窓の内側を蜘蛛が歩いている。


 僕はそっと窓を開けて蜘蛛を外に逃がした。


 こんな事で帳消しになるなどとは思わないけど。


 こんな気まぐれで逃がされたり、殺されたり、虫も良い迷惑だろう。


 この世界、果たして命は平等なのだろうか。



 窓を閉めるとバッタを咥えた猫が走り去っていくのが見えた。

純文学って感じではないし、自分の事って訳でもないので詩という気もしない。


ジャンルが分からないのでその他扱いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 蜘蛛を逃して下さって、ありがとうございます!m(_ _)m
[良い点] とてもよくわかります。 私も、蚊のレベルで無理ですと言います。Gが出てきたとしたら、「お願い、出ていって!」と念じるところから始まります。(出ていってはくれないのですが) なんでしょうか。…
2019/07/24 12:18 退会済み
管理
[良い点] 今という夏の季節にあった文学だと思います。 ふっと蚊取り線香の香りを思い出しました。 [一言] 深いなぁ、哲学的だなぁと言う言葉が頭に浮かびました。 彼が殺さなくとも猫はバッタを殺すだろ…
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