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1-8  「基本教練」

20190126公開



げぇつつ!」


 第1次学校と第2次学校合同の射撃訓練場に教官役の引退したハンターの声が響いた。 

 その声に応えて、20人の子供たちが左足を半歩踏み出しながら右手で支えていた得物の銃身を引き上げて左手を下に回して支えながら更に右手を持ち替えて得物の重心当たりを掴んだ。


「立てぇつつ!」


 20人は先程の動作を逆回しにして、得物を自分の身体の右側に立てた。


 俺にとっては懐かしいと言っていい基本教練だ。

 昨日の夜、シンジ君が言っていた通り、午前の授業は攻撃 魔法ファイノムの授業だった。

 今は基本教練をこなしている最中だ。

 昨日、御宣告の儀を済ませたばかりで、今日初めて教練に参加しているシンジ君の動きは多少ぎこちない。初めてにしてはましな動きとは思うが。

 まあ、陸自の隊員なら誰もが通る道だ。

 そう、自衛官ならば、だ。

 どうやら、織田小隊長たちは後世に自衛隊式の訓練を残したらしい。

 まあ、日系人に主に使われる長モノが89式5.56㍉小銃を模した攻撃 魔法ファイノムならば、そこまでおかしくはない(自分で言っておきながら本当に正しいのかは自分自身でも自信が無いのだが)。


げぇつつ!」


 問題点と言う程でも無いが、気になるのはディノ族の子供たちもウィンチェスターライフルで同じ動作を習っている事だ。

 ハチキュウの全長917㍉に比べ、990㍉と長いせいで扱い辛そうだ。


 初めての外出時に馬車の馭者が人間以外の人物だった為に驚いたが、ディノ族はこちらの星の原住人類と言う事だった。

 一時は人類と衝突して、戦争までしたが、今では仲良く開拓に従事する仲間となっている。

 その立役者はまたしても織田小隊長だった。

 ほんと、聞けば聞くほど、英雄としか言えない活躍をしている。


 話を戻すが、ディノ族は攻撃 魔法ファイノムを使えない。

 ファイノムは人類だけがプラントの介助によって使えるからだ。

 では、ウィンチェスターライフルはどうした? となるのだが、実はプラント承認の下、ディノ族の本土とも言うべき大陸で実銃が製造されている。

 まあ、火薬に関してはプラントしか造れない。造る技術を教えていないからな。いざと言う時の保険みたいなものだ。

 


かまえぇつつ!」



 一通りの基本教練が終わり、副教官と19人の子供たちと別れて、シンジ君だけが教官と離れた場所に移動した。


「オダ君、結構さまになっていたけど、家で練習したのかな?」


 教官はかなり歳を召された方だ。

 パッと見た感じ、腰は曲がっていないが70歳くらいに見える。

 だが、実際の年齢は110歳だ。

 外見と実年齢の差の40歳が遺伝子操作の凄さを物語っている。


「はい。父も少しは教えてくれましたけど、主に兄と姉から習いました」

「なるほど。それと君のipクラスがip5の32GBと言う事は聞いている。その歳ではかなり恵まれているのは事実だ。だが、実戦でモノを言うのは練度だ。いざという時に普段通りの実力を発揮しようにも実力が無ければ意味が無い。練度を上げれば実力が付いて来る」

「はい」

「練度を上げるには基礎をしっかりと抑えた上で、反復練習で身体に染み込ませる必要がある。その事で冷静さを失わずに済む効果も有る」

「はい」

「さあて、それでは基本教練の復習を始めよう」


 

 たっぷりと2時間、基礎教練の反復練習で午前の授業が終了した。


 昼食は給食だった。

 これは何かと忙しい開拓村の女性陣の手間を減らす為という側面と、友達と一緒に準備をしたり食事をしたりする事で集団生活に慣れさせるという目的が有る気がする。

 まあ、日本の小学校の教育方針がこちらでも有効と認められたのだろう。

 


「ねえ、シンジ君、御宣託の儀はどうだった?」


 そう言って、声を掛けて来たのはこれと言って特徴の無い男の子だった。

 実は、この平凡さが日系人の特徴と言える。

 俺の目から見ても日本人にしか見えない彼だが、実は半分以上は元々の植民者の血が入っている。

 普通、ハーフとかハイブリットとか言われる日本人は彫が深かったり、肌の色が影響を受けたりするが、この星では日本人の遺伝の方が優先される。

 これは、コピペ召喚された日本人がこの星に合わせた最適解の遺伝子操作を受けた結果、優先的に遺伝する様にされたからだ。


「一応、ip5の32GBだったよ」

「カー、やっぱりオダ家の血はすごいな。俺のip4の16GBと替えてくれよ」

「はは、残念ながら無理っぽい」

「まあ、これから成長するし、ipクラスだけが人生じゃないからな。本成人までにip5クラスになったら十分かぁ」

「それに鍛えれば鍛える程、ピコマシンが増え易いって本に書いていたよ」

「へー、初耳だなぁ」

「確か、本を書いた人は『プラント様が遣した援徒様』の一人だったと思う」

「そっか。良い事を聞いた。本成人までにムキムキになってやる。サンキュ」



 シンジ君は給食の時間にアチコチから声を掛けられていた。

 クラスの中心人物 と言って良さそうだ。



 午後の授業は害獣と災獣に関しての座学だった。

 ディノ族の分類では、人類と接触するまでは特に両者を区別していなかった様だ。

 人類が星系間移民船プラントに連れられて植民した島、ヘキサランドでの分布数から人類が区別しただけだった。

 害獣の名前の由来は、家畜の牛や豚を好んで食べる事から名付けられた。

 地球原産の動物は遺伝子操作をしなければこちらの動植物を消化出来なかったのに対して、この星原産の肉食動物はお構いなしに食べる事が可能だった。

 試行錯誤した害獣の対策が効果を挙げだした頃から現れたのが災獣と呼ばれる大型の害獣だ。

 人類が入植した場所から離れた高地などに居たのが、つがいを巡る競争に負けたとか、縄張りを奪われたとかの理由で人里に現れた場合、害獣とは比較にならない損害が出た事から災獣と名付けられた様だ。

 害獣は中型犬から大型犬くらいまでの大きさだが、災獣は競走馬クラスの大きさだった。

 皮、脂肪層、筋肉層が厚く、攻撃 魔法ファイノムのウィンチェスターライフルでは歯が立たない。

 旺盛な食欲から、家畜のみならず人類も食べる事から、まさしく災害と呼ぶに相応しい敵だった。




お読み頂き、誠に有り難うございます。

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