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1-6  「ファイノムと言う名の魔法」

20190124公開



 この星に居る人類と地球産の動物は全て遺伝子レベルで手を加えられている。

 この星での時系列で300年以上前に行われたコピペ召喚に巻き込まれた日本人90人もこの星に適応出来る様に遺伝子を弄られていた。

 それ以前から植民していた人類の祖先は、栄華の頂点に至った太陽系を征服した文明により、見栄え、身体機能、免疫機能、長寿命化などの果実を遺伝子操作で獲得済みだった。

 だが、それだけではこの星に根付く事は出来ない。

 地球産の動物にとって、異星の生命体はDNAレベルで異物過ぎて消化が出来ないからだ。


 なけなしの遺伝子操作のノリシロを使い切って、なんとかこの星の有機物を消化出来る様に改良された人類だったが、2度も植民に失敗に終わった。その過程で失われた人命は6万人に及んだ。

 理由は簡単だ。生存競争の相手の方が強かったからだ。

 根本的な部分で生命というものを理解出来ない星系間移民船プラントが人類に縛りを付けた結果でも有る。


 原生生物を過剰に殺さな無い様に原始的な武器、そう、剣や槍や弓しか武装を許されなかった人類は、害獣と呼ばれる小型の肉食獣と、災獣と呼ばれる大型の肉食獣に駆逐されてしまった。

 残されたコールドスリープ中の植民希望者2万人による最後の植民を行うに当たって、星系間移民船プラントは禁じ手と言っても良い技術を開発した。

 ナノマシンよりも更に小さなピコマシンを素材と動力源とした、魔法の様な技能の開発と付与だ。

 剣や槍や弓に加え、新たなる武器として攻撃魔法に分類される技能、『ファイノム』を付与したのだ。

 星系間移民船プラントの保管庫に在ったウィンチェスターライフルM1873とコルトガバメントM1911の実銃と実包を基に、ピコマシンで再現したそれらを或る条件下で召喚しての使用を可能にしたのだ。

 使用可能な弾数は人体内に内包されるピコマシンに依る。個人差によって使えない人間が多数発生するとはいえ、第3次植民者はこれまでとは隔絶した攻撃力を得た。




「シンジ、良いですか?」


 昼食後、ソファでハーブティを家族で楽しんでいると、母親がシンジ君に声を掛けて来た。

 その表情は真剣だ。


「はい、何でしょうか、お母様?」


 シンジ君の脈拍が若干速まった。

 まあ、そりゃあ、実の子供では無いと言われた様なものだ。

 今までとは家族の関係が変わってしまう可能性が有る。


「これまでも、これからも、シンジは私たちの家族です」


 そう言うと、母親は温かみのある笑顔を見せた。

 『良い女』という言葉しか思い浮かばなかった。旦那さんは果報者だな。

 赤の他人の俺だから、そう思っても問題無いだろう。


「最近、悩んでいる様でしたから、気にはなっていましたが、きっと何か気付いていたのでしょう?」

「ええ。どうも僕だけ顔立ちが違う気がして・・・」


 それに関しては、俺としてはスマンとしか言えん。

 成長するにつれてゴツイ感じの顔になる事は俺自身の人生が証明している。

 醜かったり、悪党面に見える様な顔でも無いと思うが、女性受けする様なイケメンに育つ事は無い。

 対して、織田小隊長はまさしく正統派のイケメンだった。

 隊員募集中のポスターに使ったらWACの応募が絶対に増えると断言出来たくらいのイケメンだ。

 それはここの家族にも受け継がれている様だ。

 プラントから教えられた情報では、この家族は織田小隊長から3代目に当たるのだが、全員が美男美女と言える。

 まあ、子供たちはこれからだろうが、その兆しは見て取れる。


「そうか? そんなに気にする程では無いと思うぞ」

「そうよ、シンジ。お兄様の言う通り十分にハンサムよ」


 長男と長女の援護射撃が来た。

 

「そうでちゅ、しんじおにいたまははんたむでしゅ」


 ユカちゃんがまたもや癒しを与えてくれた。

 もうここまで来ると、天使と言っても過言では無い。  


「ほら、分かったでしょ? ユカはシンジお兄ちゃんが大好きだけど、それは私たちも同じよ。これからも私たち家族の一員よ」


 シンジ君の返事は一瞬だけ遅れた。

 

「ありがとう、お母様」


 その声には湿り気が混じっていた。

 思わず、俺はシンジ君の頭の中でウンウンと頷いて、良い家族だな、と笑顔になっていたが、左手に何かが触れた感触がしたので注意を向けると、ユカちゃんがこっちを見上げていた。


「しんじおにいたまはゆかのだんなたまでちゅから、かじょくでちゅよ」



 

 シンジ君は本当に良い家族に恵まれている。

 素直に心から祝福して上げたい。

 あと、ユカちゃん天使、も付け加えるべきだな。



 

お読み頂き、誠に有り難うございます。

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