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1-5  「第一次成人」

20190121公開



20190125M1873/89R召喚時描写修正



 屋敷に戻った後、そのまま庭に家族全員で移動した。

 結構広い。

 屋敷に見合うだけの広さの庭だった。

 みんなの服装から今は冬と思っていたが、やはり花壇らしき区画に花は咲いていなかった。

 まあ、この島がどの様な気候帯かが分からないので、まだ断定は出来ない。もしかすると秋という可能性も捨て切れないしな。


「シンジ、お前も立派に第一次成人を迎えた。しかもip5級とipSE級という望外の御宣託まで頂けた。おめでとう」


 シンジ君と向かい合う位置に立った父親が厳かに話し掛けて来た。他の家族はその後ろに並んで笑顔でおめでとうと言ってくれた。更に後ろに控えている家政婦さん2人と、初めて見る中年男性も笑顔で祝ってくれた。だが、その3人の横に置いてある、ボウルを載せた小さなテーブルが気になる。

 祝ってくれた中でも、ユカちゃんがやたらキラキラとした表情でこちらを見上げながら大きな声でおめでとうごちゃいまちゅと言ってくれた。

 ホンワカとした気分になってしまうのは仕方がない事だろう。

 その証拠に、シンジ君も笑顔になって、ありがとうございますと返していた。



 この星の人類は7歳の誕生日で第一次の成人を迎える。

 星系間植民宇宙船プラントによる、その時点での潜在能力の判定と、魔法ファイノムと呼ばれる技能が解禁されるのが7歳の誕生日だからだ。

 もちろん、それだけで大人の仲間入りする訳も無く、最低限の能力が開花した事を祝う意味合いの方が強い。

 シンジ君のip5級や俺のipSE級はコピペ召喚された日本人の子孫でしか有り得ない。

 それ以前の、この惑星に植民していた人類は基本的にip級でしかない。

 これは、プラントによって運ばれて植民していた人類が究極まで遺伝子操作されていた為に改良の余地が少ない為だ。

 コピペ召喚された日本人は全く遺伝子を弄っていない事が却って大きな伸びシロとなった。

 その為に、この星に特化した遺伝子操作を受けた日本人の子孫とそれまでの人類とでは、能力に大きな差が生まれていた。



「では、確認だが、攻撃 魔法ファイノムのアイコンで活性化している物は何が有る?」


 お祝いのセレモニーが終わった頃に、父親が訊いて来た。

 シンジ君はハイと言いながら頷いて、Fapp storeを立ち上げて、確認した後で答えた。

 試しに俺も同じ事をすると、スマホ風画面が切り替わった。

 どうやら俺は俺でシンジ君とは違う画面を立ち上げられる様だ。


「M1911とM1873、89式5.56㎜小銃、9㎜拳銃です」


 俺の画面では一部のアイコンを除いてもっと多くのアイコンが活性化していた。

 球体観測機(試Ⅱ型B)は不活性のままだ。

 その代り、下の方にスクロールをすると小隊球体観測機というアイコンが有って、こちらは活性化している。織田小隊長がテストした後で改良されて、部隊の装備品として制式化された時に名称が変わったからだろう。

 

「うむ。それでは順番に顕現してみなさい」

「はい」


 シンジ君がそう答え、両手の手の平を上に向けた直後にいきなりコルト・ガバメントが出現した。

 そのズッシリとした重量感には本物だと思わさせるモノが有った。触感も本物そのものだ。小学低学年の子供の手には持て余す大きさも本物の縮尺だ。

 初めて触るかのように色々な角度から見た後で(銃口だけは覗き込まなかったのは事前に注意されていたからだろう)、シンジ君がコルト・ガバメントを消し去る。

 同じ様に今度は9㎜拳銃を出現させて、これまた同じ様に確認した後で消し去った。

 そして脇を締めて何かを抱える様な格好をしたかと思うと、今度はウィンチェスターライフルが現れた。

 そう、西部劇で有名なレバーアクションライフルだ。

 構えていたにも拘らず、受け止める時に少しよろめいたのはご愛嬌だろう。

 シンジ君の体重は多分23㌔か24㌔くらいだろう。そんな軽い体重で3㌔を超えるライフルを抱えるのだから、多少は仕方ない。

 第一、ウィンチェスターライフルは1㍍ほどの長さが有る。バランスを崩して落とさなかっただけでも誉めて上げたいくらいだ。

 ウィンチェスターライフルを苦労しながら確認した後で、次に出したのは89式5.56㎜小銃だった。

 こちらはウィンチェスターライフルよりも少し重いが全長が短かったので、よろめく事無く抱えられた。



「ふむ。問題無く顕現させれたな。それでは、次に、生活 魔法ファイノムが使えるかを試そう。まずは給水を試そう。キヌエさん、ボウルを頼む」


 父親が後ろに控えていた家政婦さんに声を掛けた。

 その声に答えて、キヌエさんともう1人の家政婦さんがテーブルを持って来た。

 シンジ君が右手をボウルの上に持って行き、手の平を下向きにすると、蛇口を捻ったかの様に水がボウルに流れ落ちだした。

 流れ落ちる量を調整して10秒程で止めたが、俺はちょっと感動していた。

 いや、拳銃やライフルや小銃を出現させるのも確かに凄いと思うが、それよりも水をいつでもどこでも出せる方がもっと凄いと思う。


 レンジャーの訓練課程では脱水症状下での行動を余儀無くされる事が多いが、もしこの魔法ファイノムが使えれば、辛さは半減するだろう。

 なんせ、レンジャー課程では最初から極限下での行動を想定している。数日間に亘って山の中を40㌔の装備と小銃を持って行軍する訓練教育が有るのだが、水は2人1組で1㍑しか持たされない。1人で500㏄じゃないところが地味にいやらしい。

 当然、飲料水は足りない。わざとこけて泥水をすすったりしたのは良い思い出だ。

 常に喉の渇きに苦しめられるから、参加した隊員全員は水の大切さを骨身に叩き込まれるし、耐え忍ぶ精神力を鍛えられる。

 そういえば、俺と組んだバディなんかは、行軍最終日のごく短時間の休憩をしている時に、周辺に生えている雑草を見て、美味しそうなお茶っ葉が生えているなぁ、福岡の八女特産の玉露かなぁ、と訳の分からない事を言っていたが、あれはさすがに引いたな。思わず、これは鹿児島の知覧産の新茶に決まっている、と言ったが、結論は未だに出ていない。



 その後も、シンジ君は生活 魔法ファイノムに分類される魔法を次々に試して行った。

 全て問題無く発動出来る事を確認した後で、父親は仕事に出掛けて行った。

 このまま昼食を摂って行けば良いと思うのだが、かなり忙しいみたいだ。

 出掛ける時に、シンジ君の頭を撫でながら、優しい声で再びおめでとうと言っていたのが印象的だった。


 転生者と分かったシンジ君を変わらずに受け入れている事からも分かる通り、この家族は本当に善人だと思う。




お読み頂き、誠に有り難うございますm(_ _)m

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