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1-2  「ip5/ipSE」


20190111公開

 

 

 馬車での道中は、シンジ君(俺の意識が間借りさせて貰っている男の子)が、外を見てはしゃいでいる妹のユカちゃんの相手をしている一方で、俺は周囲の観察をしたが、或る見慣れた物を1つも見掛けなかった。

 電柱だ。

 やはり、電気は使われていない。

 それと、町と言うよりは村と言う印象を受けた。

 割とゆったりした間隔で2階建ての木造建築が建っている。

 レンガを使った建物は交差点の角地くらいだ。

 建物から古びた感じがしない。建って10年も経っていないだろう。


 掃討戦をする時に楽でいいな。

 木造建築なら、バレットM82A3(M107)を持ち出さずとも、ハチキュウでもM4でもスパスパと壁を抜けるだろう。

 それに高い建物が無いと言う事は、スナイパーの心配が減ると言う事を意味する。

 日本の様に鉄筋コンクリートで出来た市街地で戦闘になった場合、どうしてもスナイパーが邪魔になるからな。


 心の中で思わず苦笑した。

 初めて訪れる場所では必ず戦闘のシュミレーションをしてしまうのは、一種の職業病だ。

 こんな場所で銃撃戦をする様な事は無いだろう。

 父親の衣装や装備からは戦い自体は身近な存在と言う事が分かるが・・・



 馬車が走っている道は目抜き通りらしく、片側2車線くらいは有る。

 直角に交わる道は両車線を合わせて3車線といったところか?

 歩道が割としっかりと敷かれているのは意外だ。

 当然だが、信号機は1つも無かった。


 馬車が停まったのは教会らしい建物の前だった。

 ただし、地球の教会にある十字架の代わりに、3つの輪が重なった様なシンボルが掲げられていた。

 一番分かり易い例えは、五輪マークが3つになった感じだ。

 木の板で出来た看板に書かれている文字は3種類だ。

 幸いな事に1つは日本語で書かれていたので読める。 

 『スロー村プラント教会』

 また2つ情報が増えた。

 ここはスロー村と言うらしい。

 それと、キリスト教の代わりに、新興宗教だか、土着の宗教だか分からないが、知らない宗教が定着している。



 家族全員でやって来た俺たちを出迎えたのは、日本人に見えない男女だった。


「お待ちしていました、オダ代表」

「こんにちは、クレスポ2等教士、ゴーン3等教士」


 どうやら、父親の地位は高いらしい。

 ただ、そんな風には見えない。

 現在の彼の姿は、どう見ても昔のヨーロッパの騎士っぽく見える。

 鎖帷子くさりかたびらの上に、金属と革を組み合わせた鎧を着ているせいだ。

 どういう理由が有るのか分からないが、左右の肩の金属部分には革が貼り付けられていた。

 そんな恰好をしていてもさまになっているのは、よほど着慣れているからだろう。


「奥様も、お子様たちも、よくお越し頂きました」


 クレスポ2等教士と呼ばれた男性は、母親と上の兄姉きょうだいに声を掛けた後、しゃがんで俺の視線に高さを合わせて言葉を足した。


「シンジ君、気を楽にして下さい。慈悲深いプラント様はみんなを見守っていますからね」

「はい」


 何が始まるのだ?

 あまり宗教関係は詳しくないのだが、なにやら儀式をする感じはしている。

 教会内部は、地球の教会と同じ様な造りだった。

 違いとしては、シンボルマークくらいしか分からない。

 シンジ君は、教会の奥の壁の前にそびえたつシンボルマークの前までクレスポ2等教士と並んで歩いて行き、胸の前で右手を左手で包む様にして同時にひざまついた。

 その途端に、昨夜と同じ様に女性の声が頭の中に響いた。


『個体名織田信二の現在の判定はip5 32GB級。ただし、個体名田中大輔の肉体情報を遺伝子操作している為に、短時間で有ればipSE 32GB級の能力を発揮可能』


「え、どういう事でしょうか、プラント様?」


 シンジ君の呆然とした声が静かな教会内に響いた。

 こちらを固唾を飲んで見守っていた家族から驚いた様な気配と息を飲む音がした。

 隣で一緒にひざまついているクレスポ2等教士が唖然とした声で呟いた。


「こんな事が・・・」


『個体名織田信二の質問を確認。過去の地球から転移して来た個体名田中大輔に施した最新の遺伝子操作により、能力の一時的な底上げが可能。結果、短時間であれば上位の能力を発揮可能』


 絶句しているシンジ君の様子に、異常な事態が起こったと判断したのだろう。

 家族が全員近くまで寄った気配がする。

 我に返ったクレスポ2等教士が注意したせいで、誰も触って来なかった。

 儀式の最中は体に触る事は禁止されている様だ。

 

「何が起こっている?」

「後でお教えします」


 父親の問いにクレスポ2等教士が声を潜めて早口で答えた。


『説明シーケンスを開始』



 頭の中で響く女性の声が聞こえたと同時に、目の前に光が溢れた・・・・・




お読み頂き、誠に有り難うございます m(_ _)m



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