第三十一話 ギルドメンバーの追跡
「おー、おかえり」
マグロックは気丈に振る舞っていたが、その顔はかなり憔悴しているように感じた。
「ガストルさんは家にいませんでした。近所の住民に聞いてみたところ馬車ごと急いでどこかへ出て行ったとのことです」
「馬車ごと? 仕事か別の地域に行く際にしか使うことはないが……まさかな」
「……それと玄関の扉が開いていました。少しだけ物色させてもらったところギルドの資料を発見しました」
カイルは手に持っている資料をガストルに渡した。
「……これはギルドの倉庫に保管してあったものだ。……そういうことか! カイル、ガストルの行方は分かるか?」
「いえ、行方は分かりませんが、出て行った方角は近所の住民に教えてもらいました」
「どの方角へ向かったと言っていた?」
「南の方角です」
「その方角だと行き先は一つしかないな。カイル、レスタ今すぐ他のギルドメンバーに声をかけて集めてくれ」
もちろん近所の住民からの情報なので信憑性に欠ける点はマグロックも重々承知している。
それでも今は少しでも手掛かりを得るために行動することが重要であると判断したのだ。
カイルとレスタは返事をして部屋から出て行った。
数分後、部屋にメンバー全員が集まった。
「みんなよく聞いてくれ。……金庫の中に保管していたギルドの資料がガストルの家から見つかった。これが何を意味するかは言わなくてもわかるだろう」
カイルとレスタ以外のギルドメンバーは皆信じられないというような顔をしている。
「そこで集まってもらったのは、これからガストルの行方を追うためだ。南の方角というのがカイルとレスタの情報でわかっている」
「ということはアーネスタ方面に絞られますね」
「そうだ」
カイルより経験豊富なエリックだけあって周辺の地理にも詳しかった。
「道は途中で二つに分かれている。カイルとレスタ、エリックとスコラムで組んで向かってくれ」
ギルドに所属する商人メンバーでガストルの行方を追うことが決まった。
カイルとレスタが乗った馬車とエリックとスコラムが乗った馬車は、準備が整うと一旦ガストルの家がある方角へ向かう。
家を過ぎてしばらくすると事前の説明通りに道が二手に分かれていた。
「カイル、レスタ無理するなよ」
エリックは馬車を留めて降りると二人に近づいて話しかける。
カイルはエリックとあまり話したことがなかったので、気遣ってくれたことが嬉しかった。
「まだ、犯人と決まったわけではないが仮にそうであった場合、何か事情があるかもしれん。手荒な真似はするな」
エリックはレスタの方を向いて釘を刺すように言った。
「エリック! 時間が惜しい早く追うぞ!」
スコラムが彼に馬車へ戻るよう促す。
「それじゃ! よろしく頼む!」
カイルとレスタはエリックへ了解の旨を返事すると馬車へ乗り込んだ。
それから二台の馬車は二手に分かれて、それぞれの道を進んでいく。
馬はカイルが操り、荷台にレスタが乗っている。
ここから馬車の通常速度でおよそ四日ほどかかるところに町がある。
町を過ぎると道が複数に分かれているため、足取りを追うのは難しい。
その為、町へ着く前にガストルへ追いつく必要がある。
ガストルは馬車を使っているので道なりに進んでいるだろうとマグロックは予想していた。
カイルとレスタも道中や先にある町については詳しくない。
だから新人同士のレスタと組んで追跡するよりは、片方が経験豊富なメンバーの方がいいのではないかと頭をよぎった。
しかし、マグロックもそれは把握した上で判断しているはずなので意見はしなかった。
一日目は平原を進み、二日目は山道を登る。
馬車は通常よりも速度を出しているため、山道を登ることで馬への負担も心配だった。
山の頂上付近は開けていたので馬を休憩させるため馬車を止める。
カイルは荷台に積んでいる馬の餌を取りに行くと、それを馬の口にあてがう。
すると、馬は餌の藁をむしゃむしゃ食べ始めた。
餌を全てあげた後、カイルは馬の頭をなでて餌の入っていた木製の容器を荷台に戻した。
「十分休憩もできたし行くか! カイル今度はお前が荷台に乗れよ、交代するぞ?」
「大丈夫だ、そのまま交代しなくていい」
「そうか、なら引き続き頼んだぜ」
カイルは馬にまたがると馬車は下りの山道を進んでいく。
下りの山道は緩やかな坂になっていたので、馬車の速度を出すことができた。
そのまま進むと、山を降りると平坦な平原に景色が変わる。
(山越えはできた)
カイルは正直なところエリックとスコラムが追っているルートをガストルが進んでいてほしいと考えていた。
(もし進んだ先にガストルさんがいたら、なんて話しかければいい?)
平原の道を進むと、前方の遠くに馬車のようなものが止まっているのを発見した。
そのまま進むとだんだん正面に止まっている物体の輪郭があらわになり、はっきりと馬車だと分かった。
さらに荷台の横に人がいるのを確認できた。
ガストルだった。
カイルは馬車をガストルの馬車から少し離れたところに止めた。
それからレスタと一緒にガストルへ近づく。
ガストルはカイルたちには気付かず黙々と荷台の車輪を修理しているようだった。
「ガストルさん!」




