表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/187

第二十九話 王都への帰還

「初仕事とはいえ楽なもんだったな」


「途中ゴブリンの集団に襲われたけど、普通の商人なら全滅しててもおかしくないよ」


 レスタの発言にガストルが反応する。


「幸先がいいスタートだ。これから仕事をこなしてバンバン実績あげていくぜ!」


 ――出発から往復二週間かけて王都に戻ってきた。


 ギルドの建物に入り、マグロックのいる部屋へ行くと彼は椅子に座り、渋い表情で何やら書類を確認していた。


 マグロックは三人が部屋に入ってきたことに気付くと椅子から立ち上がって近づいてくる。


「おー! みんなお疲れさん。無事初仕事をこなせたな!」


「途中ゴブリンの集団に襲われましたけどね」


「まー、そういうこともあるだろうに。だから初仕事とはいえ、カイルとレスタを選んだんだ」


 ガストルは依頼先から受け取った売上金をマグロックに手渡す。


「ありがとう! もう二時間ほどしたらギルドメンバーが全員集まるから、それまで各々待機していてくれ」


 カイルは一旦外出するが、少し時間の余裕をもってギルドの建物へ帰ってきた。


 建物の中に入ると受付の人、ロザリーと目が合い話しかけられる。


「カイル! ギルド長にこの書類持って行ってくれる? 今ちょっと手が離せなくて」


「わかりました」


 彼女から書類の束を受け取ると、カイルはマグロックの部屋へ向かった。


 部屋に入るとマグロックはカイルたち三人が担当した仕事の関連書類を見ながら首をかしげていた。


「どうかされましたか? 俺たちの請け負った仕事で何か不手際がありましたか?」


「……いや、そういうことじゃねぇ」


 明らかにマグロックは何か考え事をしていたようだが、理由を話してくれなかったのでカイルはそれ以上踏み込むのを止めた。


「書類ありがとな」


 頼まれていた書類を渡した後、カイルは部屋を出ていこうとした。


「どうだった? 初仕事は?」


 部屋から出ていくつもりだったがカイルはマグロックに呼び止められて足を止めて振り返る。


「まだ一回だけなのでわかりませんが、良い経験ができたことは確かです。今後もギルドの依頼をこなしていきたいです」


「そうか、気に入ってくれてよかった。ガストルとレスタとはうまくやっているか?」


「はい、少しずつ慣れていっています」


 ガストルはともかく、レスタとは現状うまくやっているとは思わなかった。


 今後変わってくるかもしれないが、今その話をするとややこしくなると思い回答は避けた。


 他の話題も二つ、三つ話したところで


「おっと。そろそろ時間だな」


 マグロックはメンバー集合時間が迫っていることに気付く。


「それじゃ一緒に行くか」


 カイルはマグロックと一緒に皆が集合している部屋へ移動する。


 部屋の中には数人おり、レスタとガストルもすでに椅子へ座っていた。


 カイルも空いている椅子に座る。


 少し待っていると初めて見るメンバーらしき人も集まり椅子に座った。


 マグロックがメンバーの全員集合を確認すると話始める。


「みんな仕事お疲れさん。皆事前に話だけは聞いていると思うが新しいメンバーが二人加わったので紹介する」


 新しいメンバーとはカイルとレスタのことである。


 その後、部屋にいる初顔合わせのメンバーも全員が自己紹介した。


 カイルがこの日初めて会ったのは先輩商人二人とギルドが直雇用している傭兵二人である。


 先輩商人二人はエリック、スコラムと名乗り、傭兵はカミール、レイジーンと名乗った。


 マグロックを長とし、商人はカイル、レスタ、ガストル、エリック、スコラム、傭兵はカミールとレイジーン、受付のロザリーの総勢九名のギルドとなる。


 それぞれの紹介が終わったところで解散し、各々は仕事に戻っていった。


 カイルはそれからも運搬業務を中心にギルドの仕事をこなす。


 運搬業務自体は行商人の頃からやっているので慣れていた。


 しかし、扱っている規模が異なり取引相手は個人も多いが、組織相手のものもある。


 個人相手の取引が多かったカイルにとって組織相手の取引は良い経験となっていた。


 レスタやガストルと組むこともあったが、相変わらずレスタとは仲が深まらない。


 先輩ギルドメンバーのエリックやスコラムとは一緒に仕事をすることはなかった。


 仕事は一日で済むものもあれば、数日かかるものもある。


 ――カイルがギルドに加入してから二か月が経過した。


 途中仕事がなく王都にいる日は、アイリスの店で食事したり、アイリスと散歩などしている。


 また、いつ行商人に戻ってもいいように王都での情報収集も欠かさなかった。


 この日はギルドで月に一回の定例報告会がある。


 ギルドメンバー全員が以前自己紹介した部屋に集まった。


 ここはギルドの建物の中で最も大きい部屋である。


 といっても、十人ほどの人間が並んで座っても窮屈にならない程度の広さだ。


 メンバーが月間の活動報告を行った後、マグロックが話始める。


 一通り話し終わった後、神妙な表情になり少し間をおいて再び話始めた。


「ちょっとみんな聞いてほしい。……今まで黙っていたが、どうも売上金の計算が合わねーんだ」


「それはマグロックさんが経理担当を雇わず、全部自分でやっているから計算が雑になってるんでしょ?」


 エリックがマグロックに冗談半分で返事する。


「……うーん、そうかもしれんな、がはは!」


「きっと、そうそう」


 スコラムも同調して反応する。


 カイルはまだ新人なので同調して「そうそう」などとは口が裂けても言えず黙って話を聞いていた。


「……そういえばガストル、あいつ最近見ないけどどうしてるんだ?」


 マグロックがふと疑問を投げかけた。


(そういえば最近ガストルさん見ていないな)


 エリックやスコラムとも仕事をしていないので、そんなものかと気にしていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ