第二十五話 ギルド加入金を稼ぐ
(く! こんなところで!)
振り回しているダガーの刃先がスライムに触れた。
ジュワ
液体が蒸発するような音と感覚を全身で感じた。
カイルの顔を覆っていたスライムはゆっくりと離れ、彼の足元から遠ざかっていく。
「ゲホ! ゲホ! ゲホ!」
ようやくカイルは呼吸ができない苦しみから解放される。
(さっきのはなんだったんだ? 刀身から熱を発していたのか?)
呼吸が落ち着いたカイルはさっき起こった現象について調べてみようとした。
刀身を指先で軽く触ってみるが、熱さは全く感じない。
今度は指先でさっきより長く触ってみるが結果は同じだった。
結局理由はよくわからなかったが、これ以上深く考えず危機を脱したことに安堵した。
それから土をビンに入れて採集が完了すると、来た道を引き返して外へ出る。
王都に着く頃には夜となっていた。
(まだ、依頼受付所は開いているから報告しておくか)
カイルは依頼受付所へ依頼達成の報告をしに行く。
夜のためか、中は空いていて待つこともなく係の者と話すことができた。
「Fランクと聞いていたのですが、ダンジョン内でスライムに襲われました。その為、依頼内容がランクの範疇を超えています」
「あー、そうだったのですね。……たまにランクが間違って登録されることもあるんですよ」
「この場合は報酬の上乗せなどあるのでしょうか?」
「申し訳ございません。お気持ちはわかります。ただ、非常に申し上げにくいのですが……証明するものがございませんので……」
「……わかりました。無事依頼はこなせたので大丈夫です」
係の人が言うように証明するものは持っていなかったので納得して引き下がった。
報告した後、依頼達成の証明書をもらう。
(あと二つほどFランク依頼を達成するとランクアップか。次の依頼受注を決めるのは明日にしよう)
翌日の朝、再びカイルは依頼受付所を訪れていた。
運搬と採集の依頼は経験したので、依頼として未経験なのはモンスター退治、護衛などであった。
カイルは護衛依頼を選び、無事に依頼をこなす。
(後一件だな。だが、資金が貯まらないな)
数日、依頼をこなすために時間を割いているが二件の報酬で金貨1枚にもなっていない。
あと、目標はあと金貨5枚稼ぐことで30枚に到達することだ。
そのためには次の依頼で金貨5枚以上の報酬を得られるものを探したいと考えていた。
しかし、Fランクの依頼で金貨5枚もらえるものは見たことがない。
(何か手はないか?)
カイルは少し思案した後、何かを思いつき取引所へ向かった。
そこで入手した情報を整理して宿で準備を始める。
目的地は王都から馬車で三日かけて進んだ先にあった。
今の時刻は昼を過ぎているため、これから出発すると途中で野宿になる。
護衛のための傭兵に費用をかけたくないので、明日の朝から行動を開始することにした。
早朝、出発の準備が整うと馬に乗り、馬車は目的地に向かう。
道中は何者にも襲われるなく、目的地の村に着いた。
目的はこの村に来ることだったが、最終目的地ではない。
ちょうど昼頃、村に着いたので昼食をとる。
空腹も満たされたところで、次の最終目的地に向かう。
村からは一時間ほどで着く場所である。
馬車は順調に進みとある平原で馬車を止めた。
(狙い通りだな)
カイルはここへ来ることが最終目的であった。
周囲には草原が広がっているが、ところどころに何かが転がっている。
転がっている物を拾い上げて品定めをする。
拾い上げたものは武具であった。
カイルはここで王国騎士団とモンスターの一団との戦闘があったという情報を取引所で入手した。
そして、戦闘後に放棄された騎士団もしくはモンスターの装備があるのではないかと予想したのだ。
(同業者に回収されていると思ったが運よくまだ残っていたな)
鑑定師のような目利きはできないので、価値がありそうなものを片っ端から拾い上げて馬車の荷台に積み込む。
日が落ちる前に村へ戻るため、まだ放棄されている武具はあったが切り上げた。
(こんなに落ちているなら回収要員に傭兵を雇っていればよかったな)
回収後を狙う盗賊やモンスターなどには出くわさず村に戻れた。
戻った後、翌日再び回収することを考えた。
しかし、村で傭兵を雇うことができず王都まで戻る必要がある。
カイルの馬車の荷台はほぼ満載されているので、新しい荷台を用意しなければならない。
用意して村で回収のみの人手を募集しても村から王都まではカイルが運ぶことになる。
二つの荷台をカイル一人で運搬するのは大変なのでしぶしぶ断念した。
(もっと積載量の多い荷台なら運べたな)
カイルはたまたま格安で馬車を手に入れることができたが、本来馬車を一台買うのには大金が必要になる。
積載量の多い荷台、大きい荷台になると高額になり、またそれを牽引する馬も必要だ。
取引規模が大きくなり、恒常的に必要となった場合に検討材料として挙がってくる。
部分的に利用するなら傭兵を雇った方が安上りだ。
来た道を三日かけて再び王都へ戻ってきた。
取引所へ行き、商人に武具売買の交渉を持ち掛ける。
回収した武具はファーガスト製のような有名なものでない。
品質も並であるため、価格面では期待できない。
それでも金貨5枚ほどにはなるであろうと予想した。
結果は上々で全て販売することができ、意外に高値が付き売上金は金貨8枚になった。
仕入れに全く資金を使っていないので売り上げが全て利益になる。
厳密にいえば、現地に赴く費用など発生したが、それらを差し引いても十分な利益になった。
(在庫を即日全て販売できるのは気持ちいいな)
カイルは想像以上に取引がうまくいったことに喜びを感じていた。




