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第二十三話 ギルドの存在

「ギルド? 言葉だけは聞いたことがあります」


 商人との情報交換の中で言葉自体は出てきたことはあったが、詳細についてはよく知らなかった。


「わかった、それじゃ今から説明しよう」


 アイリスの父親からギルドについての説明をしてもらう。


 ギルドに所属すると、そこのギルドメンバーとなる。


 メンバーになる利点は主に毎月決まった額の金貨が支給されること、個人の行商人が扱うよりも大きな仕事を請け負うことが可能だ。


 ただし、制約もある。


 ギルドのために行動すること、行商人のように自由行動はできない。


 他にもルールはあるがギルドによって異なるので、実際に所属してみないとわからないこともある。


 毎月収入があるため稼ぎが安定するので、ギルドに入ることを目標にする行商人もいる。


「説明ありがとうございます」


 一通り概要を聞き終えたカイルが礼を言う。


「ただし、ギルドへ加入するには条件があるんだ」


「どんな条件なのですか?」


「簡単に言うと実績を示して認められれば加入できる。例えば依頼受付所での受注実績やある分野で名が知られているなどね」


 カイルはFランクの依頼を受注した実績はあるが、完了報告をしていないので公式には達成したことになっていない。


 もちろん、商人として名が知られるほどの実績も残していない。


「俺のような駆け出し商人にとってはあまり縁のない話ということですね」


「カイルさんは依頼受付所を利用しているのかい?」


「過去に一度利用した程度です」


「ということはまだFランクというわけですな」


「そうですね」


 二人の話を聞いていたアイリスがカイルに尋ねる。


「カイルはこれからも行商人を続けたいんだよね?」


「……そうだな」


「……通常は実績が必要になるけど、必ずしもそうじゃない」


「どういうことでしょうか?」


「規模が大きいギルドほど実績が重要視される。けれど、例えば……新しく作られたギルド……そういうところなら話は変わってくる」


 父親は新規で作られたギルドはいつ解散するわからず不安定であると説明する。


 そのため、毎月収入が得られるかわからず、知名度も低いため所属希望者もいない。


 逆にギルド側としては人員を確保したいと考えている。


「新しく作られたギルドの場合は、実績を示さなくてもよいということでしょうか?」


「実績を示さず、他のもので代用するんだよ」


「他のもの?」


「そう、具体的には加入金を支払うことで代用する」


 新規ギルドは資金面で不安を抱えるため資金調達したい。


 実績を積みたい行商人はギルドに加入したいが入るには実績を要求されるジレンマに陥る。


 その為、まずは加入に実績を問われないギルドに所属し、経験を積んでから別のギルドに加入することを目指すのだ。


 ここでギルドと行商人のニーズが合致すると説明する。


「加入金はいくら用意すればいいのですか?」


「それはギルドによって異なる。もし興味があるなら明日調べてみるといい」


「わかりました。そうしてみます」


「ギルドに所属する経験はカイルさんの商売にとってきっと良い経験になると思う」


「貴重な情報と説明ありがとうございます」


「長々と話してしまってすまないね。本当はアイリスと二人だけで話したかったでしょうに」


「もう、お父さんたら!」


 父親とアイリスのやり取りを見て母親が笑い、さらにカイルも一緒に笑う。


 食事も終わり、話も一段落したところで楽しい宴は解散となった。


「今日はこんなご馳走までして頂いて本当にありがとうございました」


「これからも商売がんばってくださいね。またいつでも来てくださいね」


 母親がカイルを激励した。


「カイルさん、立派な商人になってくれよ!」


 父親も続けてカイルを応援する。


「はい、ありがとうございます!」


「カイル約束忘れないでよ!」


 アイリスがカイルに念押しする。


「あぁ、分かってる」


「しばらく王都に滞在するなら、また寄ってね」


「そのつもりだ」


 アイリスとその家族に見送られながら宿への帰路につく。


(ギルドか)


 ――翌日、カイルはギルドについての情報収集を開始した。


 確実に効率よく情報を入手できるのは取引所である。


 ここで聞き込みをした結果、酒場や依頼受付所の掲示板に募集広告が張り出されていることがわかった。


 何人かに聞いたところ、入手した情報はある程度経験を積んだ商人なら誰でも知っていることだと話す。


 王都は依頼受付所も二カ所あり、酒場であれば数十件以上あるため全て把握しきれないほどである。


(まだ次の目的は決めていないし、順番に回っていくか)


 最寄りの依頼受付所に行き、建物の奥へと進む。


 掲示板の前には数人立っており、張り出されている内容を確認していた。


 カイルも掲示板に近づいていき、情報を確認する。


「あんたもギルドを探しているのか?」


 いつの間にかカイルの隣に立ち、掲示板を確認している青年に声をかけられた。


「そうだな」


「見たところあんたも行商人か?」


「そうだ。あんたもということは同じ行商人なのか?」


「そう、俺もだ。互いに良いギルドが見つかって所属できるといいな。……じゃあな」


 青年は軽くカイルに話しかけるとすぐに去っていった。


 一日では酒場も含めると回り切れない件数なので数日に分けて行動し、候補は八件ほどに絞られた。


 その八件の情報をメモに纏めて宿で比較検討に入る。


 どの募集も実績はいらないのだが、加入金について明記されていないところもあった。


(実際に訪問して確かめてみるか)


 明日以降訪問するギルドの順番をメモにまとめて就寝した。

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