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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

雨蛙。

作者: 水原 たか

 この季節になるといつもの帰り道が、だんだんと賑やかになってくる。

 田んぼと田んぼの間を抜ける畦道が、私の帰り道。もう少ししたら、カエルの大合唱が聴こえてくる時季になる。


 今日、5月6日は私の近所では田植えの時季。今から半月前に田に水が入り、最近になって水面にオタマジャクシたちの姿が見られるようになった。


 今年もあのキュートなアマガエル君を見られると思うと心がときめく。私はカエルの中で1番アマガエル君が大好きだ。愛らしいつぶらな瞳。可愛らしい鳴き声。いつまでも眺めていられる。


 ただ、去年辺りから畦道がコンクリート製に代わり、田んぼの生き物たちは大パニックであった。

 田んぼの側溝(水路)に落ちた生き物たちが、田んぼへと這い上がれなくなってしまったのだ。


 私の意中のアマガエル君もさぞや、無念の淵に沈んでいるとおもった、、、私は彼を捜した。すぐに見つかった。やはり、コンクリートの底に4つ脚で鎮座していた。私は躊躇わず手を差し伸べコンクリートのむこうへと運んで上げようと考えた。

 が、全てが杞憂であった。


 彼は自分のその4つ脚でコンクリートを登り始めた!

 ペタペタペタペタ。ちょっと休憩。また、ペタペタペタペタ。ちょっと休憩。またーー。

 その動作を繰り返し、ゆっくりとコンクリートの側面を登っていったのである。

 その愛らしい姿を後世に残すための、動画撮影も忘れてはいない。もちろんインタビューもした。

 登り終え、田んぼの前で小休止しているところを、すかさずインタビュー(手のひらに載せた)。

 ヒヤッとした。今しがたあの断崖絶壁を登ってきたとは思えない程に、その身体は冷えていた。しかし、手のひらに伝わる鼓動はとても小気味よくリズムを刻んでいた。


 そして、最大なる疑問を彼に聞いた。すると彼は、私の手のひらから、手首の方にジャンプした。もう少しインタビューよろしいでしょうかと、丁重に摘んだ、その次の瞬間ーーああっ!!

 て、て、手に「吸盤」が手についてるやんーー!?


 それがすべての答えだった。カエルの中で唯一「吸盤」を持っているアマガエル君。その吸盤を縦横無尽に使って、コンクリートの壁も楽々登ったのである。さすがである。愛おしい。もう君無しでは生きれないぐらいに、尊敬の念を抱いた。


 ちなみに、その側溝には救済措置があった。側溝に落ちてしまった生き物たちはのために、段々を付けて登れるようにしてあった。そのおかけで、他のカエル君たちもぴょんぴょんして上がっていける。ぴょんぴょんできない生き物たちも、その段々は表面を土で固められているので、這い上がれるようになっていた。


 それでもやはり、コンクリート製の畦道は味気ない。だが、土の畦を毎年手入れするのは、とても大変なことだ。

 この延々と続く畦道を見た時、そう思った。







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