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コーラに負けた日

「あぁ、今日も告白できなかった!」


ファミレスの中心で俺は嘆いていた。


大声で叫んでしまったせいで、ちらほらとこちらに目線が向けられる。中には、クスクスと笑う声も聞こえてくる。


しまった、と思うも、まぁいいかと切り替える。

きっと明日になれば、今笑っている奴らもこんなこと忘れているだろう。


何も聞いていないことにしよう。そう自分に言い聞かせて、テーブルを挟んで向かい合っている玲央に目を向けた。


玲央は、肘をつきながらストローを咥え、あきれたような顔でこちらを見ている。その顔は、見慣れているが何度見てもムカつくより他ない。


なぜなら、コイツは『イケメン』だからだ。大きく弧を描く二重、長い睫、潤いのある口、白い肌。あげると、きりがない。コイツを形成するもの、全てが美でできているといっても過言ではない。

そのくらい、容姿は整っていた。


「……」


長い沈黙が続く。その間に、玲央はコーラを飲み続け先程まで満杯に近かったはずが、今では3分の1程になっている。


飲むの早すぎるだろ…。てか、今はコーラより俺を優先しろよ!

しかし、玲央の頭の中では恐らく『コーラ>俺』となっていることだろう。


試しに、「なぁ」と話しかけてみるが、反応は無い。幼なじみに冷たすぎではないか。と少し思うものの、いつもの事なのでスルーしておく。


「どうすればいいと思う!?」


玲央が飲みきったタイミングで俺は声を上げた。


すると、玲央は満面の笑みでふふっと笑った。


「さすがだね、遼河。告白すると言ってから、もう58日目。

その臆病さには称賛を送るざるおえないよ。」


「仕方ないだろ!振られると思ったら……てか、よく覚えてるな!」


「じゃ、告白されるように努力すれば??まぁ、その見た目だともう諦めた方がいいかな。僕くらいなら、余裕だろうけど。」


「うるせーな!正論言いやがって!」


相変わらずの毒舌、そしてナルシスト。たまに殴ってやろうか…と思う時もある。だが、殴ることは許されない。もしそんなことをしてしまえばきっと俺は社会的に死ぬことになるからだ。


コイツがただの毒舌ナルシスト野郎だったら、きっと俺はアドバイスを求めたりはしなかっただろう。もっと、優しく気遣いのできる友達に頼んでいたに違いない。しかし、俺が玲央を選んだのにはある理由がある……。それは……。


「なら、アドバイスやめてあげようか??」


「すみません、うるさくないです。学年一のモテ男様。」


コイツ、玲央はモテるのだ。しかも、学年一。


毒舌でナルシストでモテるのか?と誰だって思うだろう。


しかし、玲央は俺以外の人間には完璧な王子様キャラで通している。


例えば、女子が重い荷物を運んでいれば

『大丈夫?僕が持つよ。』と優しさを見せ、王子様スマイル。


数学の時間で、男子が先生に当てられ困っていれば

『これだよ。』とさりげなく自分のノートを見せ、王子様スマイル。


他にも、体育の授業で5連続シュートを決めたとか、体罰で有名な教師を辞めさせた、など様々な噂がある。


この噂は、学年を問わず1年、3年のクラスにまで広がっている。

その結果、ファンクラブが最近、立ち上げられたそうだ。

女子の約9割が入っているらしく、凄まじい人気らしい。


もし、俺が『コイツは、毒舌ナルシスト野郎だ!』なんて言った矢先には全生徒からのバッシングを受けることになるだろう。


考えただけでも寒気がする。


「うん、分かればよろしい。」


そう言って、玲央は満足げに鼻を鳴らした。


1回だけでいいから、殴りてぇ……

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