ヒーローとロリコンは相容れない
ヒーロー、つまり俺英雄は、変身時にはマッハ5で移動できる。何が言いたいかっていうと、俺はすでに爆発地点についているということだ。
それにしても、おかしい。確かに爆発地点があった所には来た。家とか公園とか地面とかめちゃくちゃだしな。 でも、肝心の宇宙人がいない…
宇宙人いないと、俺ただのコスプレした痛い人になっちゃうからむしろでてきてくれ…。
それとも、もう誰かに退治されたのか!?
いやいや、そんな馬鹿なことあるわk「あら?こんな所で何してるの?戦隊モノのコスプレをしたおにいさん?」当然、後ろから声が聞こえた。ハリウッドスターばりのこの素晴らしい格好をコスプレだと? ふふ、どれほどファッションセンスをお持ちなんだろうか。一体、どんなやつなんだと期待と憤怒の感情を交えながら俺は後ろを振り返った。しかし、予想に反して、声を発したと思われる当の人物は、制服を身にまとった小柄の美少女だった。、
「!? お、おにいさんはコスプレした痛い人じゃないぞ!!…って、え? えっとー、もしかして君は…」
俺は戸惑いながら尋ねる。すると彼女は誇らしげに自己紹介を始めた。
「あら、そうなの?ごめんね〜〜。そっかそっか、私のファンだったのね。なんたって私はUOC所属のAランクヒーロー"うみちゃん"こと水原海美だからねっっっ♡」
「誰ですか。」
「なっっ!?!!???この私を知らないの!?」
口を開けながら肩を震わせているこの水色の髪をした小型の女の子が瓦礫の上から俺を見下ろすように見ている。もう少しでパンツが見えそうだな。
「えっとー、俺も一応ヒーローやってる稀崎英雄って言うんだけど、ごめん、UOCとかそういうの疎いんだ笑 覚えておくよ!スミハラ美味ちゃんっっ!」
真っ白な歯を笑顔とともに見せながらグッドポーズ。…決めた。
「何言ってんのよ!私の名前はみ!ず!は!ら!美味じゃなくてう!み!よ!」
自分としたことが、名前を間違えてしまうなんて…不甲斐なかった…。次こそは、
「ごめんごめん!水原うみよちゃんっ!」
「…あんた、わざと??それとも天然なのかしら? これ以上構ってられないわ。 私は仕事をしなくちゃならないの。」
そういうと彼女は、小柄な体からは想像がつかないくらいに、5mほど離れた瓦礫に飛び移った。
「そうそう、稀崎のお兄さん。宇宙人はもう私が先に倒してましてよ。ほら、そこに倒れている緑色の気持ち悪いモンスターが倒れているでしょ。」
彼女が目線を向けている方向に目をやると、そこには確かに、全身が小さな目でたくさん埋め尽くされている気持ち悪い緑色のモンスターが倒れていた。 本当に彼女はヒーローだったんだな。それにしても、彼女は一見普通の人間に見えるけど、一体どこにそれほどの力があるのだろうか。
「この宇宙人、君が1人で倒したのかい?」
「ええ!もちろんでしょ? 私を小柄だからと言って見くびっちゃ困るわね。 」
得意げな表情を見せながら、その透明感のある綺麗な青色の髪を指でくるくるしている。
「それにしても、お兄さん本当にヒーローなの?今どきそんな格好でヒーローしてる人なんてお兄さんぐらいだわ、きっと。」
「う、うるさいなぁ。君にはセンスないんだな。この流線型のパーツや、頭部のV字型の装飾!ロマンを感じるだろ?」
「はあ?センスありありですけど?ロマンとかありあまってますけど〜?? やっぱりお兄さん、コスプレなんだ…」
にやにやしながら俺をさも痛い人であるかのように見つめてくる。なんて屈辱的なんだ…。Mでロリコンな人ならこの行為がきっとご褒美なんだろうが、残念ながら俺は至って普通の人間だ。
と、そうこう言い争っていると、さっきまで倒れていたはずの宇宙人が海美ちゃんの背後に忍び寄り、刃物と同化している手を彼女に振り下ろそうとしていた。
「あ、危ないッッッ!!!!」
「え?何よ?急に!」
マッハ5で移動できる俺にとって宇宙人の動きはカタツムリより遅く見える。俺は全速力で海美ちゃんの方へ向かい、宇宙人をぶん殴った。
「ぐはぁッッッ!!!…あともう少しだったのに…!!!」
「彼女じゃなくて、俺を背後から殺るべきだったな。愚かな宇宙人。さ、海美ちゃん怪我はない?」
今度こそ超絶イケメンスマイルを保ちつつ、びっくして倒れている彼女に手を差し伸べた。
「っっ!/// 助けてもらわなくても倒せてたわよ!!!///勘違いしないでよね!お兄さん!」
赤らめた顔は俺に見られないように背けていて、まるで早朝に見る、富士山が雲間から日の出で赤くなっているように、 美しくしなやかな髪の毛から赤くなった耳を覗かせていた。
だが、少しでも可愛らしいと思った俺が馬鹿だった。
「へぶしっ!???」
彼女の握りこぶしが俺の頬を打った。いくら変身スーツでも少し痛い。
「もうっ!次会った時は絶対に私が倒すんだからねっ!!!!覚えときなさいよ!稀崎英雄!」
そういうとすぐに彼女は、走り出してしまい視界から消えてしまった。
まあ、これで一件落着…かな?
「あ、やべー。明日高校の入学式だったんだ!!明日のための買い物色々しなくちゃならねーのに… 」気がつくと、辺りはもう暗くなっていた。それに、壊れた住宅も直さなきゃいけないしもう時間が…。
「仕方ない…今日は買い物諦めるか。くっそー。あの水原ってやつ、次あったら今日の買い物絶対付き合わせてやる!」
愚痴をこぼしつつ、その後は帰ってきた住民たちと一緒に修築をしました。トホホ…。