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不安な出会い

ええっと。


ぱちり、と瞬きをもう一回。

いや、今瞬きをした瞬間に、見たこともない光景が目に入ったからこれまさか白昼夢でも見てるのかと思って。


いやいやいや、瞬きしても景色変わんないな。

少し、といっても数メートル離れたところにログハウス風の建物と、そこに立っている男の人はそのままだ。こっちを向いて固まってるようにも見える。

立っているのは普段見たことのないような恰好の人だ。いやちょっと待った最近みたよ、TVで。映画やってた。魔法使いのアレなやつ。魔法学園的な?

すっぽりと体全体を覆うようなタイプの上着、ああそうだ、魔法使いのローブって言ってたっけ。映画では。


ぱちり、ぱちり。瞬きを2回。

おまけに、ぎゅっと目を閉じてそおっと開ける。


なのに目の前に広がったのは、現代日本の近代的な光景、ああ自分でも何考えてんだかわかんなくなってきたけど、とにかく予想していた美容院の自動ドアなんてどこにもなかった。

くらりと目の前が歪んでたたらをふむ。

足元がよれて、じゃりっと音がする。下を向くと見慣れたアスファルトでもなんでもないただの土。土を踏み固めて道になったような、ええっと。

山か。ここ、山の中か。


サンダルで一、二度足元をじゃりじゃりとしてみる。


えええ、どこなのここ。ほんとマジでなんなの。


もう泣きそう、と思ったとき、ひときわ大きくざりっと土を掻くような音がして慌てて視線を上げた。

目の前には、さっき建物の前に立っていたローブ姿の人だ。きゅっと眉をひそめて私を見下ろしている。足音も気配もなかった。え、結構距離あったのに、どうやって。


……こりゃ日本人じゃぁないな。うん。

目の前にたつ人を見上げて、まずそう思う。

見た目はヨーロッパあたりの人っぽい。普段なじみのあるアジア系の顔つきでもないし、中東系でもない。由緒正しい、いわゆるコーカソイドって感じで背も恐ろしく高く体つきもがっしりしている。

おまけに、見上げる顔に影がかかって見える、ような気がする。すごく背が高いんだなこの人。何だか威圧感があってとっても、恐ろしい。

……マフィア?なのかな?なんて現実逃避してしまいそうなくらいには。


「ええと、あの、すみません」

日本人はなんで話しかけるときはたいてい「すみません」から始めるんだろう。

こんにちは、でもハローでもなくて、「すみません」。

典型的日本人らしく曖昧な笑みと「すみません」を連発してみる。相手の男の人はきゅっと眉をひそめた。


「ここ、どこでしょう」

見上げながら私も困ってしまって、それだけ言って口元をきゅと結ぶ。

「……**************」

男の人が、眉をひそめたまま何事かを喋った。


はい、アウトー!これ英語じゃない。フランス語でもない。スペイン語でもなさそうだ。

「**********、***********、」

まるで歌うような声で、目の前の男性は私に向かってすい、と顔を寄せてきた。ううむ、わかんない。返事のしようがなくて、黙ったまま相手を見つめるしかない。

「******!!」

段々相手の声が大きくなる。怒ったような声になっていく。ひい。怖い。物凄く怒ってそう、ていうか問い詰められてるような雰囲気はあるんだけど、声の響きが何かの旋律を奏でているようで、思わず聞き入ってしまう。

すう、と息を吸われて、あ、これ怒鳴られそうだと思い当たって慌てて声をあげた。


「いや、聞いてます、聞いてますけど、通じてない……よねぇこれ」

むむう、と私もしかめっ面になってしまう。お互いにしかめっ面同士でしばらく見つめあって、相手は深くため息をついた。


「******」

指を一本、私の目の前でたてて見せた彼は何事かを話し出した。

「*******、*********」

今度は指を二本。

「******、********、***********」

そして三本目の指をたてて、またさっきの歌うような声で短く喋った。


何を喋っているのかはさっぱりわからないんだけど、何かとても重大なことのようで視線がはずせない。


彼は私をじっと見つめ、おもむろに額に人差し指をあててきた。

訳もわからず見上げる私に彼は、


「*****」


何事かを囁いて、その瞬間。



「ああああああ!!!!!」


物凄い激痛で私は、何も考えられないままで、ただひたすら叫び続けた。






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