サプライズ 4
〜side龍也〜
「ただいーーーー」
「お帰りっ、龍也」
ただいまと言い終わらないうちに、柚稀が満面の笑みを浮かべて出迎えてくれた。
「お疲れ、模試どうだった?今日暑かったけど、会場って冷房つくの?あ、お風呂沸かしておいたの、ゆっくり浸かってね」
俺が言葉を挟む間も無いまま、次々と質問をして、最終的には俺を風呂場へ追い込む柚稀。
いつもなら、こんなに急かさないのに。
怪しい。
「何かやらかしたのか?」
「やらかすって、何それ。信用無いんだ、私って」
「まあ、そうだな」
「さっさと風呂行け」
ラベンダーの香りの入浴剤入れておいたよ、という柚稀の言葉を背中で聞き。
脱衣所から柚稀が出て行ったのを確認してから服を脱ぐ。
風呂場に入ると、確かにラベンダーの良に香りがする。
浴槽に体を沈め、思い切り湯に浸かる。
程よい温度の湯と、ラベンダーの香りは、模試で疲れた頭を癒やしてくれる。
至福の一時。
ここに酒があればさらに良いんだけどな、なんて考えて。
夕飯の支度をしなくてはならないことを思い出す。
急いで出ると、柚稀が驚いた顔をした。
「えっ、もう出てきたの?早いんだけど、ちゃんと浸かった?」
「浸かったよ、けど夕飯の支度があるから」
そう言うと、柚稀がもうっ、と顔を膨らませた。
ふぐみたいだなと思ったが、さすがにそれは言わない。
「模試で疲れてる時ぐらい、気にしなくて良いのに」
「人が生きるのに欠かせないだろ、食は」
「スケールでか」
「いーから、そこどけ」
キッチンの前に立ちはだかる柚稀を何とか押し退け、冷蔵庫を開ける。
「……何だコレ」
中にあったのは、見憶えの無いラップのされたハンバーグと器に入っているスープ。
よく見ると、作りかけのサラダもある。
「あーもうっ。龍也がお風呂入ってる時に並べて驚かそうと思ったのに!早く出てくる龍也が悪いんだ」
「柚稀が作ったのか?」
「そう!」
そっぽを向く柚稀は、顔を真っ赤にしている。
それが、無性にかわいくて、愛しくて。
「ありがとな」
「べ、別にっ」
「じゃ、並べるか。へぇ、焦げてないじゃん。すごいすごい」
バレないように、ふざけるしかなくて。
「味は保証する。羽田さんと作ったの」
「へぇ、じゃあ後でお礼行かないとな」
「うん」
ハンバーグは、レストランで食べるような凝ったものでは無いけど。
そんなものよりも、ずっと美味しかった。
「あ〜あ、結局サプライズ失敗かぁ」
「いやいや、驚いたよ」
「本当?でもそっか、冷蔵庫にいきなりハンバーグが入ってるんだもんね」
「まあ、な」
それもあるけど。
柚稀が、わざわざ大嫌いな、大の苦手とする料理を、俺のためにしてくれるなんて。
それが、一番の驚き。
それでいて、もの凄く嬉しい。




