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サプライズ
〜side柚稀〜
「行ってきま〜す」
誰もいない家に挨拶して、鍵をしっかり掛ける。
龍也は模試のでいない。
暑さも段々と薄れてきて、暮らしやすくなったこの頃。
絶好の模試日和。
今日は仕事はお休みだけど、やることはたくさんある。
龍也と結婚してから、疲れて帰って来た時にご飯があるのは素晴らしいとわかった。
ならば。
模試で疲れて帰って来る龍也に、ご飯を用意しておこう。
幸い、今日はたっぷり時間がある。
Tシャツに上着を羽織って、ジーンズを履いて、お財布とエコバッグを用意する。
龍也に料理を習い始めたものの、最後まで作り遂げたことのあるものはハンバーグと、ミキサーを使うスープだけ。
あとは毎回時間が無いだとか、見てるとイライラするだとか、散々言われて道具を取られる。
だから今日は、唯一作ったことのあるハンバーグ。
しっかりネットで確認したし、手順だって覚えてる。
龍也は喜んでくれるだろうか。
きっと、驚くだろう。
それから、渋い顔をするはずだ。やれ形が汚いだとか、焦げすぎだとか、味が薄いだとか。
文句をたくさん言う。
だけど、私はそれを照れ隠しだって分かってるから。
笑顔で黙って、文句を聞いててあげる。
「絶対成功させてやるんだから」
思い描いた未来に向かって、私はスーパーへと足を踏み出した。




