一緒に寝かせて
~side柚稀~
「柚稀、寝る時しっかり鍵確認しろよ」
時刻は午後の11時。眠りに就く龍也が、私に しつこいぐらいに言った。
「あ、私も寝る。だから龍也お願い」
お前なぁ、と言いながら龍也はやってくれる。
何だかんだ、龍也は優しいのだ。
「じゃあな」
「うん、おやすみ」
向かう先はもちろん、別々の部屋。
寂しくないと言ったらウソになる。けど、これで良いのだと自分に言い聞かかせる。
龍也が私に求めているのは、都合のいい妻。おじい様の出した条件にピッタリの女。
お互いに恋愛感情を持たない。
だから別に、何でもない。
「明日もあるし、さっさと寝ちゃおう」
少しグシャグシャになっているシーツを直していると、視界の隅で、何か動いているものを発見した。
「……」
ガサゴソと動く、黒光りしているアレは……
「ぎゃあああああああああ‼︎‼︎」
大人の女性のものとは思えない声が出たけれど、どうだって良い。
「柚稀⁈」
驚いた龍也が、寝室のドアを開け私を見る。
開いた龍也の寝室に、私は一目散に入る。もちろん、ドアは閉める。
「おい、どうしたんだよ」
「でででで、出たのっ私の部屋に悪魔がっ」
「悪魔?」
「そう、悪魔。黒くて、光って、 空を飛ぶ……」
「それってさ、ゴ……」
「その名を言うなぁっ!」
近くにあった枕で、龍也を全力で殴る。相当痛かったのか、龍也は頭を抱えてうずくまる。
「お前なぁ……」
「ごめんごめん、でもどうしようっ」
「戻れ」
何を言うのか、この男は。
たった今、あの部屋から全力で逃げてきたばかりだというのに。
「龍也部屋交換してっ」
「断る」
「やっつけてっ」
「お前をか?」
「この部屋で寝かせてっ」
「はあ⁈」
さっき自分に言い聞かせたばっかだけど。
でもこれは、想定外。
「あいつと同じ部屋で寝るなんて無理っ、耐えらんないっ。ソファーでも床でも良いからっ。……一緒に寝かせて?」
「……ソファーなんてねえよ」
龍也が髪をクシャリとさせる。長い沈黙の後、大きなため息をひとつ。
あ、メンドくさいって思われたかな。
「ベッド、狭いけど文句は言わせないからな」
「龍也様ぁぁぁ!」
険しい顔の龍也。
「迷惑はかけないからっ。ありがと龍也っ、かっこいい男前っ!大好きっ」
「殺虫剤買っとくから、退治はお前がしろよ」
「いぃやぁぁぁ!」
当然だろ、と龍也が不機嫌そうな顔でそう言った。




