男どもの昼食
~side龍也~
「龍也」
昼飯の時間になると、笠原が行こうぜと俺を誘った。
笠原のあまり明るくない顔から、何か相談事かねと思いながら席を立つ。
「駅前に良い丼屋が出来てたんだ」
「あ~じゃあカツにするわ」
ベターだな、と笠原が笑う。
2人ゆっくりと歩いて、約15分。その丼屋が見えてきた。
趣のある暖簾をくぐると、美味しいにおいが充満している。カウンター席に並んで腰掛け、俺と笠原はかつ丼を頼んだ。
「最近定時で帰ってるけど、夢には近づけてんの?」
出されたおしぼりで手を拭きながら、笠原がそう訊いてきた。
「模試じゃ安全圏内キープしてるよ。まあ、一応Y大出てるしな。文系科目は暗記一回してる訳だし」
「それでもすげぇな、仕事しながら勉強だろ。本当すげぇよ」
仕事中だからお酒ではなく、お冷やを飲む俺たち。
笠原の横顔はーーーー何を思い考えているのか。
「で?」
「へ?」
話があるんだろ、と目で問い掛ける。
「おっ、奥さんとは上手くいってんのか」
「はぁ⁈」
絶対したい話はそれじゃないだろう!
なかなか話し出そうとしない笠原に多少のイラつきを覚えながら、それでも 律義に答えてやる。
「いってるよ。心配すんな。逆に心配するならお前だよ。一体どうしたわけ?」
いつも飄々としているコイツからは信じがたいこの回りくどさ。
「はっきり言えよ。お前がこうなるのは美羽がらみだろ」
「……バレたか。美羽がお前達に迷惑かけるかもしんない」
「そーゆーのは早く言えっての」
迷惑かけるかもって。
美羽には既に十分かけられているんだが。
無言でそう訴えると、笠原はハア~~っと深い溜め息をついた。
「美羽が奥さんの会社に行ったこと以上なんだよ。マジごめんってば」
「あれ以上に何があんだよ」
あれのおかげで、何故か柚稀と気まずくなり。
料理を教えたりジジイの来訪があったりで、元通りにはなったが。
もうあんなのは、二度とごめんだ。
悪いと謝る笠原と溜め息をつく俺の前に、 頼んだカツ丼がきた。
けっこう分厚い肉が嬉しいが、喜んでいる暇は無さそうだ。




