私だけが
〜side柚稀〜
「いただきまーす」
「……まーす」
2人いつも通り手を合わせる。いつも通りじゃないのは、私が仏頂面で龍也の顔をまともに見れないことぐらいだ。
龍也の顔を見れないということは、私はずっと俯いてお皿の上の料理をずっと見ていることであって。
龍也がそれに気が付かないはずが無い。
「おい」
「……何」
「何、じゃねえよ。何だよさっきから、機嫌悪いわけ?」
「龍也のせいだ」
はぁ?と顔をしかめる龍也。
なんだか、私がバカみたいだ。
いきなり後ろに立たれて、後ろから手を重ねられたんだーーーー包丁の使い方の説明だったけどーーーー好きな相手に。
これで意識しないなんてこと、有り得るのだろうか。
ただ私が仏頂面なのは、それが原因では無い。
その行動をした龍也が、何も思ってないことに仏頂面なのだ。
私だけ赤くなって、変に力いれちゃったりーーーー私だけ意識しているのが、悔しい。
ただの契約婚だ。恋愛感情を持ち込まないのがルールだ。だから私の方がいけないんだって、頭では分かってる。
だけど。
あんな風に手を重ねられたら。ドキッとしてしまうし、期待だってしてしまう。
何とも思っていない相手に、手取り教えるだろうか。もしかしたらって思うのに、当の龍也は何も考えてない。
本当に、私だけ。
バカだ。
けどそんなの、言えない。
「意味わかんねー」
お箸でハンバーグをつつく龍也に、私は変わらず仏頂面を向ける。
意味わかんないのはソッチだし!




