惚れた弱み
〜side柚稀〜
「何この黒く焦げた物体は」
龍也の整っている顔が、険しい。
何か分からないその物体は、お皿の白さを際立たせている。
「私が作ったんだけど……」
「だろうな」
「牛肉100%のハンバーグ、なんだけど」
龍也が指でハンバーグをつつく。ボロボロッと、形が崩れる。
「つなぎの卵入れた?」
「つなぎの卵?100%牛肉だけど」
ハァ、と龍也が溜め息をつく。
え、何?私、何かしちゃった?
「……やっぱ失敗しちゃったんだ。しょーがないよなぁ」
「家事は俺がやるって約束でしょ。どうしたの」
「え、別に……」
ただ、一回ぐらいは、好きな人に手料理を作って、喜んで欲しいなって。
柄にもなく思ってしまっただけなんだ。
恥ずかしくなって捨てようと龍也に差し出したお皿を、ヒョイと引っ込める。
「それ、どうすんの」
「どうするって……あ、ちょっと龍也っ⁉︎」
龍也がパクリと、黒焦げのハンバーグを口に放り込んだ。
案の定、とでも言うか。
龍也は何とも言えない顔をした。
「苦い」
「っ見れば分かるでしょっ。なのに何で食べるのっ、バカじゃないの」
ああっ、バカは私だっ。
まっ黒焦げなのに食べてくれてありがとう、とか。
わざわざ食べてくれるなんて優しいね、とか。
そんな可愛らしいこと一つ、何故素直に言えないんだっ!
「食べたかったから食べた」
「は⁉︎」
食べたかったから食べた。龍也がもう一度繰り返した。
食べたかったのは、お腹が空いてたからだよね?
別に別に、私が作ったのを食べたかった訳じゃないんだ。
「明日から特訓だな」
「は?」
「とーぜんだろ」
「でも明日からって早い!」
お前の予定なんか知るか、と龍也が言う。
「お前の料理を早く食いたいんだよ」
「……っ!」
それは反則だ。
そんなこと言われたら、私に逆らう術は無いんだから。




