安寧な休日 5
柚稀の行ってらっしゃーいに見送られ、俺とジジイは外に出る。
「……」
「……」
お互いに無言だ。先に言葉を発したのは、ジジイだった。
「お前も物好きだな」
「は?」
「あんな大層な嫁を貰いよって」
「何だよ、それ」
家事は出来ない、酔っ払い癖は悪い。そんな柚稀だけれど。
何故ジジイにそんなことを言われなければならない。
「悪いか」
「褒めてるんだ。義理の祖父に臆せず堂々と。大した娘だ」
「堂々と何を言ったんだ」
柚稀は結構大胆なところがある。本人はそれに気づいていないが。
厳しい顔で問い詰める俺に、ジジイはフッて表情を柔らかくした。
「嫁が心配か、そんなに」
「当たり前だろう」
そんな言葉が一瞬にして出て来たことに驚く。
何故、こんなにも柚稀を心配する?
嫁だと言っても、ただの契約婚だ。所詮は他人なのに。
己の感情に戸惑っている俺を気にせず、ジジイは楽しそうに言葉を発した。
「心配するようなことは何もしとらん。話を聞いてただけだ。
お前によく似た、頑固な奴よ。儂がいくら別れろと言っても、頑なに拒んだ。お前が好きだから、お前の隣で笑っていたいんだと」
ふん、とジジイが花を鳴らした。悔しそうに、それでいて、嬉しそうに。
「頑固者同士の、 似合いの夫婦だ」
天気も良いし、ちと散歩して帰る。送りはいらない。
ジジイはそう言って、一人で歩き出す。
俺は想定外だった言葉に、動くことも出来ない。
きっと、俺の夢のために柚稀は必死にそう言ってくれたんだろう。
別れたら、俺は政治家にならなくてはいけないから。
それでも。
ジジイの言った柚稀の言葉に、赤くなる自分がいる。
喜んでいる自分がいる。
「……マジかよ」
俺は自分でも気づかないうちに、柚稀を好きになっていたようだ。




