ディナー
〜side柚稀〜
「あら瀬田ちゃん、今日は一人じゃないの。かわいい子連れて」
課長のおすすめの店に入るとーーーー女将と言うのかーーーー着物を着てたすきがけをしている、40代半ばぐらいの女の人が笑顔で迎えてくれた。
「部下だよ、部下」
「瀬田ちゃんが上司だと大変でしょ、完璧主義者だから」
「何それ」
気さくに笑い合う二人を見て、瀬田は常連なんだなって、私は温かい気持ちになる。
「二人なら、座敷が良いね。奥行って」
りょうかーい、と瀬田が慣れた様子で私を先導する。
すでにお酒を楽しんでいる人達を横目で見ながら、座敷に入った瀬田に続く。
座敷は優しい空気が流れていて、くつろげた。
「良いとこですねー、女将さんも良い方そうだし」
「まあな。料理は適当に頼むぞ」
「はーい」
二人向かい合い、瀬田がメニュー表に目を通す。
「飲みものは?」
「日本酒!」
「……あるけど他に無いのか、飲みたいの」
「生ビール?」
瀬田が大きなため息をついてから、笑った。
「色気のいも無いなぁ」
「別に良いじゃないですかっ。だっていつも禁止されてるんですもーん、お酒」
「誰に?」
「たつ……旦那です」
ふぅん、と瀬田が相槌を打つ。
そういえば、瀬田は私が龍也と結婚したことを、心配してくれた人の一人だ。
「大丈夫ですよっ、うまくやってますしっ。せめて、お酒は許してほしいけど」
笑顔でそう言えば、瀬田は「あ、そ」とそれだけ。
店員を呼んで、ちゃっちゃと注文する瀬田。日本酒も忘れずに注文してくれた。
すぐに日本酒は運ばれてきた。
「今日は飲むぞ、何も気にせず飲むっ」
「はーい、飲みまくりまーすっ」
敬礼をすると、瀬田はニヤリとして腕まくりをし、お猪口に日本酒を注いだ。
「乾杯っ」




