話し合い
〜side龍也〜
「龍也さん」
待ち合わせのレストランに入ると、既に来ていた美羽が俺に小さく手を 振った。
「早いな」
「家にいても、することなくて」
「そう。もう頼んだ?」
「まだです」
適当に頼んじゃうけど、と美羽の返答を聞か ずにウエイターを呼ぶ。
メニューから、適当におススメされているものを頼む。
ウエイターが去ってから、俺は美羽と向き合った。
「この前、俺言っておいたよな。言いたいことは、まとめておいてくれって。まとまったか?」
「……はい」
テーブル下で、拳を握りしめているのだろうか。
俺からは見えないところにある手をじっと見てから、美羽は真正面から俺を見つめた。
「龍也さんは、どうして柚稀さんと結婚したの?」
「柚稀が好きだからだよ」
「私の調べた範囲では、柚稀さんの存在は無かった。柚稀さんは、誰?」
「柚稀は大学からの付き合いなんだよ。まあ、知らなかったのは……知らん」
そこから、色んな人にしてきた、慣れきった説明をする。
美羽は納得してない様だ。
「私の方が、柚稀さんより龍也さんと一緒にいるし、龍也さんのこと知ってる。それじゃあ、だめなんですか」
「俺のこと知ってるからって、知らない奴より一緒にいる権利があるとか、思わないでくれ」
「なんでっ。だって、そっちの方が龍也さんだって良いでしょう」
「知ってると理解があるのとは、話が違う」
「この前もっ」
美羽が、キッと強く俺を睨んでくる。
「龍也さん、前もそう言った。けど、私分からない。知りたいのは、理解したいからでしょう。
龍也さんのこと、私たくさん知ってる。それは、理解があることじゃないの」
「違う」
美羽の言っていることを、正しいと思う人はいるかもしれない。
けれども俺は、そうは思わないんだ。
「知ったから、それが理解に繋がるのか。じゃあ、質問して良いか。美羽は、俺のこと知っているんだろう」
「……良いです」
「じゃあ、一つ。俺の夢はなんだ」
「夢?」
思っていたのとは質問が違ったのか、美羽はどこか拍子抜けしたみたいだった。
「私のお父様や、龍也さんのお祖父様の様な政治家になることでしょう?」
ニッコリとしながら、首を傾げる美羽。
自分は正解だと言うように、その答えを疑わない。
「違う。俺の夢は、弁護士になることだよ」
「うそ」
美羽は笑いながら、俺を見る。俺の顔色が真面目なのを感じとったのか、美羽の感は険しくなった。
「なんで?だって、龍也さんはーーーー」
「分かっただろ、美羽。確かに、お前は俺のことたくさん知ってるよ。けど、それでも俺の夢は分からなかった。
理解しようと、しなかったってことだ」
「柚稀さんは理解があるの?」
「あるよ」
それを条件に、結婚したんだからな。
でも。
柚稀は、そんな条件が無くとも、俺の夢への思いを理解してくれるんじゃないかと思う。
根拠は無い。
ただ、一緒に暮らしている今、柚稀ならって考えると、そうなる。
「私、ずっと龍也さんのお嫁さんになるんだって信じてた。
龍也さんに相応しくなるようにって、頑張ったの。
それでも、龍也さんは柚稀さんが良いの?」




