赤くなったのは
~side柚稀~
チュンチュンチュンとさえずる鳥の鳴き声で、私は目を開けた。
枕元に置いている目覚まし時計を見ると、時刻は6時50分。
うん、起きよう。
温いべッドから出てリビングに向かう。
いつもはする美味しい朝ご飯の匂いが、今日はしない。
まあ、仕方ない。昨日の龍也は、酷いくらいに酔っ払ってたんだから。
「たーつーやー、朝だよ。仕事あるんじゃないの」
ヒョイ、と龍也の寝室を覗く。龍也は昨日の体勢のまま、ぐっすり睡眠中だった。
「まだ寝てるのかい?」
まったく、と龍也に近づく。
布団をはがしてやろうと、龍也がくるまる布団に手をかけ、一気にひっぱがす。
「どぅわっ⁈」
よく分からない悲鳴を上げながら、龍也が目を覚ます。
「ほら龍也、朝!仕事あるでしょ、もう起きなって」
「…… 何時」
「ただいま7時になりましたっ」
私の言葉を聞いて、龍也が大きく伸びをする。
「あ〜、頭いてぇ」
「昨日は明らかに酔いすぎ!飲み会だとは聞いてたけど、あんなになって帰って来るなんて考えもしなかったわ」
何かあったの、と訊けば。
龍也は私を見て何か言おうと口を開きかけてーーーー
「なんでもねぇわ」
よっこらせ、とべッドから降りる。
ちょっと!
文句を言う私を華麗にスルーして、起こしてやった恩も見せずに、すたこらとリビングに行く。
「朝飯は?」
「まだよ!」
「なら丁度良いわ」
龍也が私を振り返りながら、ニカッとする。
「良いもん、買ってきた」
「うわ、おいしそ」
目の前に用意された朝食は、駅前の老舗の和菓子屋さんの名物、栗入りドラ焼きだ。
ボリュームがあって、上品なこしあんに少し大きな栗の欠片がよく似合う(らしい)。
緑茶も淹れられており、ちょっとした贅沢な一品。
「どうしたの、これ」
龍也が買ってきてくるなんて。珍しいこともあるもんだ。
興味津々に尋ねる私に対する龍也の返事は素っ気ない。
「……別に、気がむいただけ」
「珍しいね」
「文句あんなら、食べなくても良いぞ。それが今日の朝飯だからな」
「誰も文句なんて言ってませーん」
パクッと、ドラ焼きを一口。
うん、おいしい。
素直にそう告げると、龍也が向かいの席に座り、そしてドラ焼きを食べる。
「ん、うまい」
満足そうな龍也。
穏やかに流れる時間。
柔らかく差し込む太陽の光 。
「毎朝こんなんでも良いんじゃない?」
「良くない」
私の意見はあっさり却下。
「そんなん毎朝やってたら金かかるし、お前太るぞ」
「あ〜、太りたくないわー。歳とると、痩せるのって大変なんだよねぇ」
まぁ、でも。
龍也が続ける。
「俺の気が向いたら買ってきてやるよ」
「だから、どんな時なのよっ」
「絶対言わねー」
龍也が淹れたてのお茶を飲む。
「あれー?龍也さん、なんか顔赤いんですけど」
「湯気のせいだっ、ボケッ」
「ボケとは失礼なっ!」
龍也がのらりくらりと交わすから、赤くなった理由はわからないままになった。
赤くなった理由は、前作を読んで推測していただければ……と思います。
一応「柚稀の喜ぶ顔が見たいと思ったから」が理由となります。
わかりづらかったら、すみません。




