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a shame married couple  作者: コシピカリ
26/60

飲み会の後

~side龍也~




「おいおいおいおい、龍也ぁっ!」


飲み会終了と同時に、笠原が俺の背中を強く叩く。


「おじさん相手に啖呵きっちゃってヤバイと思ったんだけど、何だよめちゃカッコ良かったじゃんかよ!


おじさんが何も言えずに引き下がるの、初めて見たわ」


あの後今井幸司は「むう……!」と唸ってから、飲み会から退場してしまった。


その顔の恐ろしいことと言ったら。

地獄の閻魔様も真っ青だ。


「やっぱヤバかったかね、あれは」

「今さら、何腑抜けたことぬかしやがる。良いんだよ、あれで。


人の結婚に株主として圧力かけるなら、おじさんはそこまでの人間なんだよ。


つーか俺は、お前の啖呵に惚れた」

「は?」


肩を組んでくる笠原を、驚いて見る。

敬語も何もない、あのどこに惚れると言うのか。


相当酔っているな。

俺もその後かなり飲んだつもりだったが、笠原の方が上らしい。


「おじさん相手に一歩も引かず、奥さんへの愛の言葉!

いやぁ、新婚だもんなぁお前。やっぱかわいくてしょーがねぇよなぁ?」


「愛の言葉って……」


「えーと、なんだっけか。今の俺には、あいつが必要なんだよ、だっけ?」


「おまっ……!」


ニタリ、と笠原が頬をだらしなく緩める。


「本当、お前の奥さんが羨ましいぜ」

「別に、そうでもないぞ」


最近、なんとなく夫婦になれてきたかな、とは思う。

けれど、柚稀が羨ましいかどうかは全くの別物だ。


首を傾げると、笠原が面白くなさそうに俺の頭を軽くはたく。


「ムカつきますな〜、この幸せ野郎。毎日送り迎えして、休みは一緒に過ごしてんだろ。おまけに、今回は旦那の告白だもんなぁ。


あー、俺も結婚してぇ」


「お前はまず、相手を見つけろ」


「本当それな」


どこかにいないかね、良い女。そう呟く笠原に、バカかと突っ込む。


でも。


意外といるもんだ。

例えば、柚稀のように。



今井幸司に問われ。

気づいたら、すらすらと答えていた。

柚稀の良い所。


当たり前のことだったが、その当たり前を、当たり前のようにやっている人間はどれくらいだろうか。


普段一緒にいて、意識しなかった良い所。

探せばもっと出てきそうで。

探そうとしなくても、出てきそうで。


さっきのように。


いつの間にか、良い所で溢れている。

気づかされる。


柚稀がいなくては駄目なんだと。

柚稀に、支えられていたんだと。


「なぁ、一回俺お前のかわいい奥さんに会ってみたいんだけど」


はあ⁈


「会いたいって……会ってどうすんだよ」


「別に?ただ、渡部くんの好みってどういうのかなぁと。

あと、お前に付き合ってやれる子にも興味がある」


「フツーだよ」


うんにゃ、と笠原が首を横に振る。


「自覚してねぇかもしんないがな。お前、結構頑固だし、メンドくせぇ性格してるよ?

そんなお前と結婚する娘は、絶対普通じゃない」


「……もの凄い言われ様だな」


ただ。

確かに、柚稀は普通じゃないかもしれない。


酔った勢いでとは言え。

初対面の男と結婚し。

常に我慢して。


凄いのは、結果的にそれらを楽しんでいることだ。


爆発しても、すぐに笑顔が戻る。

素晴らしく良いことだ。


「じゃあな、かわい〜い奥さんのいる家に早く帰ってやれよ」


奥さんによろしくな〜、と言いながら、笠原は二次会のメンバーに加わる。

どうやら妻子持ちは、帰宅らしい。


正直、今井幸司と話し(一方的にまくしたて)て緊張したのか、体は少し疲れていた。

帰れるのは、有り難い。


車を停めてある駐車場に向けて一歩踏み出す。


ふと、頭に柚稀の顔が浮かんだ。


土産に何か、買っていってやるか。



どうしてそう思ったのかは、わからない。

ただ、何を買おうか。


柚稀の喜ぶ顔を想像した。

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