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a shame married couple  作者: コシピカリ
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母と娘

〜side柚稀〜



玄関のドアを開けた龍也は私の顔を見るなり、お帰りも言わずに早く来いと顎でしゃくる。


靴を脱いで手洗いうがいもそこそこに、急いでリビングへと向かう。


リビングのソファではお母さんが、優雅にお茶を飲んでいた。


「お母さん」


声をかけると、お母さんと目が合う。思わず後ずさりをしてしまう。


「久しぶりね、柚稀」

「う、うん久しぶりだね」

「最後に会ったのはいつだったかしら……健人さんとの最終打ち合わせ以来かしらね」

「かもね」


ハア、とお母さんが息を吐いて、お茶をミニテーブルに置いた。


「婚約解消されたって聞いた時はもう、気が気じゃなかったわよ、あんた。良い歳した娘が、ねぇ」

「ハハハ」


下手な事は言わない方が身のためだ。


「本当あんたって娘は、どこまで親に心配かけさせるのかと思ったわよ」

「安心できた?」

「安心?」


お母さんの目が細くなる。


あ、やばい?地雷踏んだ?


察知した時には、既に遅し。


「あんたに荷物送ったら住所が違いますって返品されて、不思議に思って家に行ったら引越ししたって聞いて。


おまけに、結婚したって聞かされたのよ?住所聞いて来てみたら、本当に結婚してるなんて。


安心よりも驚きだわ!」


「落ち着いて、お母さん」


「落ち着ける訳ないでしょ、この馬鹿娘!結婚したんなら、報告するのは当然でしょ‼︎」


「う、うん」


それについては、本気で申し訳ないと思う。けれど龍也と結婚してからは、自分でも驚くくらい色々あり、報告する事を忘れてしまっていた。


「お父さんもお婆ちゃんも、親戚の皆があんたの心配したのよ!自覚してちょうだい!」


「ごめんなさい!」


潔く頭を下げる。するとさっきまでとは一転、優しい声が上から降ってくる。


「龍也さんから、あなたが帰ってくるまでの間、事情は聞いたわ」


その言葉に私は頭を上げ、龍也を見る。龍也は黙ってろ、と人差し指を口に当てた。

まあ、龍也のことだ。自分に不利益になるような事は言わないはずだ。


「大学からのお友達で、健人さんと別れたその日にプロポーズされたんですって?


別れたその日に他の人と結婚したなんて、確かに言い辛いわよ」


言い辛いどころじゃないと思うんだけど、それは言わない。


お母さんは私に構わず、喋り続ける。


「でも、ずっと知ってる仲みたいだし、本気で柚稀のこと好いてくれてるみたいだし」


私は再度龍也を見る。龍也は、私と目を合わせようとしない。


ウソつきめ。


「今日初めて会ったけど、本当に誠実で良い人じゃないの。悪いけど、健人さんより龍也さんで良かったと思ったわ」


「お母さん……」


違う。龍也は外面と口が恐ろしく良いだけだ。

龍也がお母さんに何を言った分からないけど、本当のことはあまり無いはずだ。


大学からの友人ってこと、私のことを好いてることと。素晴らしい程に、ウソ100%だ。



初めて会ったその日に結婚しました、知り合って今で一カ月ちょいです!

しかも離婚大前提の結婚です、愛とか好きとか存在していません!


そいつの見かけにだまされないで!


声を大にして言いたいけど、そうしたらもう終わりだ。


黙って、お母さんの言葉を聞く。


「親は、子どもの幸せが一番なの。あんたが結婚したって聞いて、死ぬ程びっくりしたけど、幸せそうで良かったわ」


でも、言い辛いとは言え、言ってほしかったわ。


「……ごめんね、お母さん」


その幸せも、11ヶ月後には無くなっているんだよ。


私は、どこまで親不孝な娘なんだ。


項垂れる私の頭を、言わなかったのを詫びていると勘違いしているお母さんが優しく撫でてくれる。


「言ったでしょ、あんたが幸せならお母さんは良いの」


「……うん」


言いたい、本当の理由を言って、謝りたい。けどそれは、無理だ。


優しいお母さんの手が、重い。

そんな時だった。


「大丈夫ですよ」


今までずっと黙っていた龍也が、口を開いた。


「娘さんは、幸せになります。


以前に幸せにすると俺が言った時、幸せはしてもらうんじゃなくて自分でなるものだと言われました。それを知っている柚稀なら、幸せになれます。


もちろん、それに俺は出来うる範囲での協力は一切惜しみません」


「まぁ」


お母さんが、ギュッと強く強く、私を抱き締めた。


「素敵な人を見つけたわね、柚稀。良かったね、良かったね」




柚稀は変に人に頼らない強がりなトコがあるから心配だったけど、全然大丈夫そうね。



お母さんはそう言って、帰っていった。





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