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a shame married couple  作者: コシピカリ
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私はシンデレラ?

2021年5月10日 修正

〜side柚稀〜


「ひー、疲れたー」


会議を終えて、資料を纏め終わった私は、大きく伸びをした。今日の会議は、なかなかに濃厚だった。その分、資料だって濃厚だ。

 おかげでまとめるのに時間がかかり、残っているのは私と知夏ちゃんだけだ。


「せーんぱーい」


 二ッコリとカフェオレを手に、知夏ちゃんがやって来た。


「お疲れですねー」


どうぞー、とカフェオレを手渡してくれる知夏ちゃん。気が利くんだけど、その行動の裏の意味を考えれば、疲れは増すだけだ。


「どーも、ありがとね」

「そのお礼と言ってはなんですがー」


 旦那様との馴れ初め、聞かせてください。

 かわいらしく、小首を傾げる知夏ちゃん。あ〜、顔は笑ってるんだけど。目が、獲物を捕らえたチーターだ。


「うーん、馴れ初めねぇ」


好奇心旺盛な知夏ちゃんなら、聞いてくるのも当然だ。

話してあげたいのも山々なんだけど、話す事が無いからなぁ。


「だって、めちゃくちゃ電撃結婚じゃないですか。普通は中々無いですよ、婚約破棄された翌週には結婚って!気にならないわけがありません」

 

うん、分かるよ。私が知夏ちゃんの立場なら、同じ質問をするから。 けど、ねぇ。やっぱり。


「話してあげたいんだけどねぇ」

「旦那様の許可が必要なんですか?許可とってくださいよぉ」


それなら、なんの問題もありませんよ!さ、さ速く!

着実に詰められ、私は携帯を手にし、龍也の番号を押していた。


トゥルルル、トゥルルル……


三回目の呼び出し音で、龍也が出た。


『なんだよ、仕事中なんだけど』


ムスッとした声が、携帯越しに伝わる。姿が見えなくても、顔が余裕で想像できる。


「ごめん、分かってるんだけどね。けどさ、今ピンチなの。奥様のピンチなのっ」

『ピンチ?』

「後輩にね、馴れ初め聞かせろって。ね、どうすれば良い?」

『馴れ初めだぁ?』


そりゃマズイな、と龍也。どうやら、事の深刻性が分かったようだ。


『あ〜、どうすっか。え、今?』

「現在進行中」

『うわぁお』


溜め息をつく龍也。次には、受話器を耳から離したくなる音量が飛び込んで来た。


『今から迎えに行くから!話すなら、設定を決めてからだ!帰る準備しろ!』


言うだけ言って、いきなり切る龍也。切れた携帯を見ていると、知夏ちゃんが笑顔で尋ねてきた。


「旦那様、なんですって?」

「あー、うん。なんだか、今から迎えに来るって」


途端に、知夏ちゃんの瞳が爛々と輝き出す。


「うわっ、めっちゃ愛されてるじゃないですかー!素敵な旦那様ですね!」


そこから龍也のお迎えが来るまで、私は知夏ちゃんに旦那様について大量に質問攻めにされた。


え、旦那の名前?渡部龍也。龍也だよ。会社はね、確か◯◯◯ーーあ、うん。確かに、超大手だね。

 旦那の家族?嫁いびりされてないか?お義母さんには嫌われたと思うけど、まあ今後お付き合いする予定ないし。それにどっちかっと言えば、おじい様の方かな。 おじい様が厳しくてねーーん?政治家やってるよ。ほら、渡部篤郎っているじゃない。旦那はその孫。お義父様はお医者様よ。



「じゃあ旦那様の実家って、資産家?お金持ち?」

「あー、そうなるね」


ひゃあ〜、と呟く知夏ちゃん。


「先輩、なんだかシンデレラみたい」


うっとりとした表情の知夏ちゃんに、私はポカンとしてしまう。

シンデレラ。私が、シンデレラ。


「あ、あのねぇ、知夏ちゃん。シンデレラって、私は……」

「シンデレラじゃないですか!玉の輿だし、旦那様には愛されてるしっ。婚約破棄という苦労されてますし、姑にはいびられてるし。いびられとか苦労とかいらないけど、玉の輿良いなぁ」


知夏ちゃんは一人で想像しては、一人でうっとりとしている。現実は物語のように甘くないぞ、と苦笑していると、携帯がバイブした。


「はーい」

『今会社前。お前の職場って、何階?』

「えっ、いいよ。私、降りてくから。迎えに来てくれただけ、感謝してるから」


龍也に断りを入れる私の横で、知夏ちゃんが不服そうに口を尖らせる。


『せっかくここまで来たんだ。仲良し夫婦アピールの絶好のチャンスじゃねーか』


いいから何階だと尋ねる龍也に、渋々と階数を教える。

電話を切れば、知夏ちゃんが勢いよく食いついてきた。


「来ますか来ますか、先輩の王子様!」

「王子じゃなくて旦那だし」


そう言っても、知夏ちゃんは気にしない。速く来ないかな、とドアを見ている。

3分ぐらいして、龍也が現れた。


「柚稀」


オフィスには入らず、廊下で声をかける龍也。知夏ちゃんが龍也を見て、私に耳元で囁いた。


「すっごい恰好いいじゃないですか、先輩!」


きゃー、と小さく叫ぶ知夏ちゃんに苦笑しながら、手を振る。


「ごめん、お迎えも来たし帰るね。お疲れ様」

「王子様と仲良くしてくださいよ、先輩ーーじゃなくて、シンデレラ」


シンデレラは継母達にいじめられる。それは、おじい様に該当する。

龍也がきっと魔法使い兼王子様。

配役は、確かにバッチシだ。けれど、忘れてはいけない。


シンデレラは、12時になると魔法がとけてしまう。

王子様がシンデレラを探すからハッピーエンドになるけど、今回の王子様は探しはしないだろう。


つまり、魔法はとけて終わる。

それでもいいなら、私は途中までのシンデレラだ、中途半端なシンデレラ。

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