28 らいど・おん・みー!?
「いっっっでぇぇぇぇッ!!」
敦は拳を庇って悲鳴をあげた。
電気が走ったように痛み出したのだ。
鍛えていない裸拳で全力で人の顔面を殴ったのだから、当然といえば当然だろう。
「おにいちゃんっ!」
恋慕が駆け寄って患部に手を添える。
「大丈夫……?」
「だ、大丈夫……じゃない……」
「無茶するからだよ、まったく」
どこからかアパルが現れ、
治癒の魔術をかけてくれた。
すっと痛みが引いていく。
「アパル!
いままでどこにいたのよ!」
「言うと思ったよ。
僕だって散々な目に合ったのに……誰がラブラを連行したと思ってるの?」
ぶつぶつ言いながら、鼻血を出して泡吹いているネイギーの側により、またなにやら魔術らしきものをかける。
……と、ネイギーは虚空の彼方に消えてしまった。
そして辺りを見回し、
「あぁ、派手にやったなぁ。
……これ修復するの僕なのかなぁ」
とまた愚痴った。
隔離した後の空間とはいえ、
怪獣が二匹盛大に暴れ回ったのだ。
家は踏み抜かれ、河川も巨大な足跡でめちゃくちゃになっている。
天災でもこうはいくまい。
アパルは深くため息をついて、敦を見た。
「先に君の格好だね」
「うおわっ!」
敦は自分が全裸であることを思い出し、
慌てて前を隠す。
「私はそのままでも構わないけど」
「って相方さんがいってるけど」
「いいえ、さくっと着せてください。
お願いします」
敦は即答した。
アパルが周囲の修復に勤しんでる最中、
敦と恋慕は瓦礫に腰掛けた。
「それで、これからどうするのさ」
「どうするって?」
「敵の大将も倒した。僕の変身も……」
敦は左手を見た。
V字の印は未だ浮かび上がっていた。
だがその上に、漢字のウ冠のような新しい記号が追加されていた。
「……どうやら、
制御できるようになったみたい。
なんとなくわかる」
「そう」
「僕の記憶を消して
居なくなっちゃうんだろ?」
「……うん」
「……そっかー」
「ねぇ」
「うん」
「……助けに来てくれて、ありがとう」
「うん」
「……だから、その……」
恋慕は酷く言い辛そうに目を背けて、
か細い声で言ってきた。
「もう少し、だけ、
……おにいちゃんの妹で、
居させてほしいな……」
もちろん断る理由など無い。
愛おしいさに交差する二人の視線。
そして少しずつ近づいていく
鼓動、そして唇……………………、
「チェアー」
「やっぱりかああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
敦は絶叫した。
絶叫して号泣した。
号泣しながら四つん這いになっていた。
「だってぇ、おにいちゃん、
その格好が一番可愛いもの……っ」
はち切れんばかりのときめきを胸に、
恋慕は頬を桜色に染めて敦の背に乗ると
はあっと熱っぽいため息をつく。
「人の背中で発情しないでよ!
てか、やっぱり僕に乗るのね!?
ぼ、ぼく、がんばったよねぇぇ!?」
「大丈夫、私もがんばったから」
「じゃあお互いが幸せになれる方向に
もっていこうよ!!」
「大丈夫よ安心して。キスよりこっちのほうが良いって言えるようにしてあげるから。
私……頑張る!」
「ち、違うだろ!
それなにかが根本的に違うだろッ!
うわわわ。
なにそれデカイ無理無理
絶対無理だっていや……ッ!
らめえええぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」




