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子竜の進む異世界成り上がり  作者: 夜桜
第一章 強さを求め
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統合

「敵がいないな……」


キリンと別れた俺は、自分を強化するためにと魔物を探しながら歩いていた。

しかし、肝心の魔物が見当たらない。恐らく皆キリンと言う神獣に恐れを成して逃げ出してしまったのだろう。かく言う俺も、あの時見つからなければあのまま逃げていた。


閑話休題(それはともかく)


魔力把握を自分の半径200メートルの範囲に張っているが、それに触れる気配すら無い。そんな状況がかれこれ数時間は続いている。

食事はまだバーサークベアーやディザスターリザードと言った特Sランクの魔物がまだあるが、人間の街「アクウェリウム」までこの隔絶の森を出てからどれくらいかかるかわからない。出来れば後10体程は確保しておきたいところだ。


「取り敢えず水の確保は絶対だな……」


実は昨日から水を口にしていないのだ。水分自体は捕食する魔物の血でも賄えるし、そもそも俺は半月くらいなら水を飲まなくても問題は無い。しかしやはり喉の渇きは覚えるので、余程切羽詰まっていない限りは普通に水を飲みたい。


そんな願いが通じたのか、俺の魔力把握に漸く何者かが引っ掛かった。


「あっちか……」


今更だが「魔力把握」と言うスキルについて説明しようと思う。

「魔力把握」とはその名の通り魔力を把握する能力である。

魔力とはこの世界に生きる者全てが大なり小なり持ってあるものであり、自己の研鑽と共に多く強くなる。「魔力把握」はそれを察知する事が出来るのだ。

使い方は単純で、自分の体から薄い魔力をうっすらと放出させてそれを大気中に広げるようにして展開させる。それだけでその魔力に触れた者を直ぐ様察知する事が出来る。他にも自分の持つ魔力を把握する事が出来るようになるが、これは大抵の魔人や上位の魔物なら普通に自力で出来る事なので、主な用途は先に述べたような索敵となるだろう。まあ俺はまだ魔人となって日が浅いので魔力を完璧に把握し切れていないからこちらの能力も常時使っているが、何時かは能力無しでも自分の魔力を把握する事が出来るようになりたいものだ。


「あれは……ワニか?」


魔力把握に従いそちらの方に進んだ俺の視線の先には一匹の巨大なワニが開けた場所で寝転がっていた。


「確かワニは水辺に生息するんだったよな……もしかして近くに水辺があるのかも……」


まあワニと言っても感じる気配からして奴は魔物らしいからこれが当て嵌まるかは不明だがな。

だが今回は幸いな事に俺の想像が正しかったようで、ここから役300メートル程先に水のような物が流れているのが確認出来た。


「よし、水辺だ。水が確保できるぞ」


そのためにはあそこで寝てる奴を倒さないと、安心して水が飲めないしな。折角の至福の時間に魔力把握を全開にとかしたくない。そんなんじゃ気が安まらないからな。それに昔父さんが獲って来てくれたワニを食べたことがあるが、それは非常に美味しかったと言う記憶もある。なので是非ともまた食べてみたいと言う思いもある。


「やるか……」


俺はワニに向けて完全解析を行った。


ーーーーーーーーーー

デビルイーター・・・鰐型。身に纏う強靭な鱗はいかなる圧力でも破壊される事は無い。体内で生成した水をブレスのように放って攻撃を行う鰐型の魔物。Sランク。

ーーーーーーーーーー


「身に纏う強靭な鱗はいかなる圧力でも破壊される事は無い、か……となるとブレスを誘発して、口から内部を貫くか……」


俺は竜神刀を構えて勢いよくデビルイーターに突っ込んで行く。

デビルイーターは直ぐに俺の存在に気付き、咄嗟に横に移動して俺の初撃を回避した。そしてそのまま俺の頭を目掛けて鋭い爪を持つ手を振り下ろして来た。それを横に流れるようにしにてそのまた竜神刀を横に振り抜く。


ザシュッ!


俺の振るった竜神刀は、デビルイーターの身を守る強靭な鱗に阻まれるも、そのまま鱗を確かに切り裂く。それは浅くではあったが自慢の鱗が切り裂かれた事に動揺したデビルイーターは僅かに後ずさり、その目に警戒の色を浮かべ、俺を睨み付けて来る。


「ふむ、竜神刀(これ)ならデビルイーターの鱗を切り裂けるのか……」


竜神刀は所有者と共に強くなる特殊な刀だ。俺が成長すれば何時かはこいつでデビルイーターの体を鱗毎真っ二つに出来そうだ。


「っと、今はそんな事より奴を倒す事に集中しないと……」


丁度俺が再度竜神刀を構えてデビルイーターに視線をやった瞬間、口に魔力が溜まって行くのを確認した。


「来たか!」


俺は咄嗟に思考加速で思考を100倍にして今まさに溜めた魔力を放とうとしていたデビルイーターの口に竜神刀を突き出した。

俺が突き出した竜神刀は狙い違わずデビルイーターの口に吸い込まれて行き、体の内部からデビルイーターを蹂躙する。

デビルイーターは咄嗟に口を閉めてガードしようとするが、時既に遅く、体内をボロボロにされたデビルイーターはその巨体に相応しい音を立てて地面に崩れ落ちた。


「ふぅ……何とか一つ目食材確保、だな」


刀に着いた血を払い、デビルイーターをマジックポーチに放り込んだ俺は視線の先の水辺目指して歩みを進めた。


***


「ここって本当に森の中にある水辺かよ……」


水辺に着いた俺はその水辺の壮大さに絶句した。いや、もうこれは水辺では無く湖のレベルだろ。


俺の視線の先にある湖は途轍もなく透き通っており、相当の深さまで肉眼で確認する事が出来る。その深さ目測100メートル。だがそれでもこの湖の底が見えない。恐らく水深150〜200メートルはあるだろう。最早海のレベルだ。


「何で森の中にこんな深い湖が……」


湖の中では何やら巨大な魚が泳いでおり、その魚は悠々と泳いでいたデビルイーターに襲い掛かり、たちまち絶命させてしまう。


「おいおい、Sランクの魔物を一撃ってあの魚何者だよ……しかも鱗毎噛み砕いてるし……」


咄嗟に完全解析を行い、デビルイーターを喰らっている巨大な魚を確認した。そして驚愕する事になる。


ーーーーーーーーーー

ヘルシャーク・・・魚型。強靭な牙はデビルイーターの鱗さえも難なく噛み砕く。水中での能力は驚異的だが、その反面地上では能力が激減する。淡水にも海水にも適応出来る特殊な鮫型の魔物。

フカヒレに位置する部位は魔力を蓄えており絶品である。SSランク。

ーーーーーーーーーー


「マジかよ……」


思わず呟いてしまったが、それも仕方ないだろう。だってSSランクの魔物だぜ?父さんを除いたら、俺が見た事のある魔物の中では最高の強さだ。そして何気に完全解析の解析度が上がっている。

今までは対象の特徴の説明だけだったが、今回のは豆知識まで説明してくれるている。恐らく結構な回数使ったので、熟練度的な物が上がったのだろう。と言っても今はそれを確認する術は無いのでどうしようも無いが。


「ヘルシャークか……完全解析で美味いと言っていたフカヒレも食いたいし、あいつ事態も食ってみたいな……」


昔父さんと一緒にヘルシャークの10分の1程度の魚を食べた事があったが、それ以来一度も食べて無かったので久々に魚を腹一杯食べてみたいと思う。


「しかし、SSランクか……」


恐らく今の俺は装備抜きの自力だけをランクで表すと特AランクかSランク程度だろう。間違いなく相手の方が格上だ。

キリンと会った時のような絶望的実力差は感じ無いが、それでも向こうが俺より強いと言うのは直感で分かる。


「ちと厳しいな……」


だがここで諦めると言う選択肢は無い。

俺はマジックポーチから取り出した最大容量1万リットルのマジックボトルいっぱいに水を入れながらヘルシャークを倒す算段を立てていた。

このマジックボトルは中に入れた水を自動で浄水してくれる便利な機能が付与されているので、どんな水でも美味しく飲める。その際不純物はマジックボトル内を冷やす為の魔力に変換されるらしいので、まさに一石二鳥である。

因みに最終的には最大容量1万リットルのマジックボトルを3つ程満タンにしたが、湖の水は減ったと言う感じがしなかった。改めて思う。どんだけ深いんだよこの湖。

だがそれと同時に俺の頭でヘルシャークを倒す算段が整った。


「よし、やるか……」


俺は女の魔人を喰らった際に手に入れた闇魔法を放とうと手に魔力を溜めた。

今まで闇魔法は気配を隠蔽する為にしか使っていなかった。それは大体の敵は近接攻撃が最も効果的だったからだ。しかし今回の敵は違う。奴は水中にいて、俺は地上だ。そして相手は格上と来た。ならば勝率を上げる方法はただ一つ。相手の弱点を突く事だ。即ちヘルシャークを水上に引き摺り出す。


「えっと……こんな感じか?《闇矢(ダークアロー)》」


俺はスキルの補正に従い闇魔法で最も簡単な下級魔法「闇矢(ダークアロー)」を放った。だが当たり前だが下級魔法ではSSランクの魔物に傷を付ける事など不可能に近い。その証拠に俺の放った魔法はヘルシャークに直撃するも、ダメージらしいダメージは与えられ無かった。

しかし目的はダメージでは無い。

ヘルシャークは自らに当たった何かに気付き、そちらの方に目を向ける。当然、その先には俺がいる。

ヘルシャークは食事を邪魔された事に憤りを覚えたのか、こちらに向かってもの凄い速度で泳いで来た。しかし俺がいるのは地上だ。ヘルシャークも自らの弱点は把握しているのか、水深5メートル程の場所でピタリと止まり、鋭い歯を見せながら俺を威嚇する。


「やっぱ、そう簡単には行かないか……このまま水上まで来てくれれば楽だったんだが……まあいい」


俺はヘルシャークに向けて再び「闇矢(ダークアロー)を放つ。

俺から放たれた矢は水中にいるヘルシャークに向かって飛んで行くが、流石に油断していない状態で魔法に当たるわけが無く、右へ左へと僅かに動いて「闇矢(ダークアロー)」を躱して行く。そして反撃とばかりに水中から水を弾き俺に攻撃をして来る。


「おっと、こんな攻撃までしてくるのか」


弾かれた水を体を逸らす事で躱しながら俺はヘルシャークを冷静に観察する。その時も「闇矢(ダークアロー)」を放つのを忘れない。


そのまま約数十分程が立った。

俺は魔力の枯渇によってフラフラと水の中に落ちる。それを見たヘルシャークは勝ったとばかりに水へと落ちた俺へと突っ込んで来る。そしてその鋭い歯が俺を捉えるその瞬間……俺の竜神刀がヘルシャークを貫いて、一瞬にしてその命を奪い去る。


「ふぅ、上手く行ったか……」


俺が立てた算段は単純だ。魔法を撃ちまくり、魔力枯渇に見せかけてヘルシャークの油断を誘うと言う簡単な事だ。

ヘルシャークはSSランクの魔物だ。決して知能は低く無い。だがだからこそ、相手の魔力枯渇と言う絶好の機会に反応をしてしまった。

流石のSSランクの魔物でも、勝利を確信して油断している時にいきなり体を貫かれたら生きてはいられない。俺は絶命したヘルシャークから竜神刀を抜き取り、ヘルシャークをマジックポーチに入れて陸に上がった。


「デビルイーターとヘルシャークか……どっちから食おうかな」


陸に上がった俺はここで休憩する事にして、どっちを食べるか考えた。


「決めた、デビルイーターとヘルシャーク、纏めて食おう!」


そうと決めたら早速食べよう。俺はデビルイーターをマジックポーチから取り出して、竜化を行い捕食した。


『デビルイーターの捕食を確認しました。スキル「水圧無効」を獲得しました。

ヘルシャークの捕食を確認しました。スキル「水中移動」を獲得しました。スキル「水魔法」を獲得しました。格上の捕食を確認しました。特殊スキル「海竜化」を獲得しました。特殊スキル「海竜化」獲得した事により、「水圧無効」「水中移動」が特殊スキル「海竜化」に統合されました』


やはりヘルシャークは格上の存在であったらしく、ボーナスとして特殊スキル「海竜化」を獲得出来た。

俺の頭に流れ込んで来た「海竜化」の情報では、「竜化」と同様に自らの体を「海竜」と言う、存在に変身させる能力だ。そしてその後にある統合と言うのは興味深い。


「つまり複数のスキルが一つに纏められたと言う事か?……試してみるか……」


最後にそう呟き、俺は「海竜化」を発動させた。



ーーーーーーーーーー

Name: ガドウ


Rece: 暗黒竜(ネオ・ダークネスドラゴン)(魔人)


Special: 「弱肉強食」「思考加速」「並列思考」「完全解析」「海竜化」・・・New!


Skill: 「闇魔法」「竜覇気」「魔力把握」「嗅覚上昇」「水魔法」・・・New!


Divin: 「ガリオンの寵愛」「竜神の加護」「麒麟の加護」


Gift: 「王種の種」「王種の証」「進化の苗木」「神種の種」

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