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子竜の進む異世界成り上がり  作者: 夜桜
序章 プロローグ
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旅立ち

目覚めた俺は新たな自分の姿に驚愕していた。

自分の姿を寝床にあった鏡のような物で確認すると、そこには黒髪黒眼で年齢は15歳前後のまだ多少のあどけなさが残る少年がいた。


「これが俺か……まあ短期間で二回も進化したんだからこんな風にもなるか……」


まだ実年齢は4歳なんだけどな。


俺は昨日、父さんを喰らった。あのまま放置したら他の魔物や調査に来た魔王ヴェへムートに奪われるのが関の山だったからだ。とは言ってもやはり自分の父さんを食らうのは躊躇われたが、何とか食べ切った俺の姿は「暗黒竜(ネオ・ダークネスドラゴン)」と言う魔物に進化していた。


「一先ずはこの後人間の住む所に向かうか……」


父さんが殺される前にこの世界、「ゼディアル」詳しい話を聞いていて良かった。取り敢えずある程度はそれと今までに聞いていた色々な知識でなんとかなるだろう。


今の俺は魔人となり人間に極めて近い姿になっている。その為人間の国に潜り込んで冒険者とやらになれば生きて行く為に必要な金銭は稼げるだろう。勿論何時かは魔王ヴェへムートを殺す。この世界にはヴェへムート以外にも魔王が存在するらしいが、俺にはヴェへムート以外の魔王などどうでもいい。


「父さんが集めてたコレクションの中に何か使えそうな物は無いかな……」


俺達ドラゴン族は趣味で金銀のようなキラキラした物を集める事が多い。俺もキラキラした物は好きだし、父さんも例に漏れずキラキラした物を集めていた。


「え〜っと……ああ、これとかいいかもな」


俺は手に持った剣を眺めながらそう呟く。すると瞼の裏に何か情報のような物が浮かんで来た。


ーーーーーーーーーー

デモンズキラー・・・魔剣。悪魔系統に属する存在へのダメージが上がる。迷宮(ダンジョン)にて発見される事のある剣。A級。

ーーーーーーーーーー


「うおっ、なんだこれ!?」


俺の瞼裏に浮かび上がって来たのはシンプルだが分かり易い説明であった。

慌てて記憶を思い返していると、父さんを喰らった時に「完全解析」と言う特殊スキルを獲得した事に思い至り、その能力を確認すべく脳裏に「完全解析」を思い浮かべた。


ーーーーーーーーーー

完全解析・・・生物、無生物問わず見たいものに注意を向けるとそのものを解析出来る。解析度は所有者の熟練度による。発動させるかは所有者の任意。

ーーーーーーーーーー


「なるほどな。これが原因か。多分無意識にこの剣を見たいと思ってしまったからこれが発動したんだろうな……今後は気を付けよう……」


俺はそう呟いて、改めてこの剣に意識を戻した。

完全解析によればこの剣の名前はデモンズキラーと言うらしい。この最後のA級と言うのはよくわからないが、恐らくこの剣の性能とか珍しさとかを表すのだろう。

この魔剣と言うのと、迷宮(ダンジョン)と言うのは以前父さんから聞いた事がある。

父さん曰く、魔剣は特殊な魔力が込められた武器の事を指し、簡単には入手する事は出来無いが、入手出来たらとても頼りになる物になるらしい。そして迷宮だが、これはダンジョン・コアと言う特殊な魔物の事を指すらしい。ダンジョン・コアが自らを守るために作り出す物が迷宮(ダンジョン)との事だ。

迷宮(ダンジョン)はどう言う原理かは不明だが武器やら防具等の数多くの物を作り出して、自らの体内に配置してそれらに釣られた者を喰らって成長する。なら誰も近付かないじゃないかと思うだろうが、それは違う。ダンジョン・コアが食べる事が出来るのは自分の中で生命活動が終わった者のみ。つまり迷宮(ダンジョン)内で死んだ者のみなのだ。

死にさいしなければ害は特に無く、強力な武具を入手出来る。それ故、迷宮(ダンジョン)に挑む者は後を絶たないらしい。


父さんも昔たくさんの迷宮(ダンジョン)に挑んだ事があるらしく、よく寝物語に聞かされていた。何時か迷宮(ダンジョン)に挑んでみるのも良いかもしれない。そう思い更に物色していると、不意に目に留まる物があった。


「なんだこれ……なんて言うか、凄い圧力を感じる……」


そう思い恐る恐る手に取ったそれは、一見剣のようにも見えるが、白銀に輝く刀身は大きく反り返っており、「叩き斬る」と言うよりは「斬る」の一点を極めたような造りになっている。気になった俺は先程行ったように、完全解析を発動させてこの武器を解析した。


ーーーーーーーーーー

竜神刀・・・神刀。持ち主の成長と共に切れ味を増して行く刀。「竜神の加護」あるいはそれに準じる物を持つ者だけが使用する事を許される。これを持たぬ物が使用するとこの刀は使用者に刃を向ける。神級。

ーーーーーーーーーー


それを確認した直後急激に体から魔力が吸い取られる感覚がした。


「っ⁉︎」


咄嗟にこの竜神刀を手離しそうになるが、本能がそれを拒否する。俺はぐんぐんと抜かれる魔力に目をぎゅっと瞑りながら耐え、決して竜神刀を離さなかった。

やがて魔力が吸い取られる感覚が収まり、瞑っていた目をゆっくり開くと、手に収まっていた竜神刀の姿は先程までの白銀では無く、漆黒の刀身に赤黒い柄を持つ禍々しい姿に変貌していた。

俺は何かに操られるかのように禍々しい姿となった竜神刀を持つ。するとそれはまるで昔から使っていたかのようにしっくりと手に馴染む。そのまま二度三度と素振りを行うと、竜神刀はヒュンヒュンと風切り音を立てて空気を切り裂く。


「何だこれ……すごく手に馴染む……」


俺は竜神刀を鞘にしまい、自らの傍らにそっと下ろす。


「武器は決まったな。後は服と防具だが……」


何を隠そう俺は今全裸なのだ。竜神刀と言う素晴らしい武器を手に入れたが、だからと言って流石に全裸で人間の国へ向かうつもりは無い。


探す事数十分。漸く一通りの装備を入手した俺は残りの物を全て先程見付けたアイテムポーチに入れて準備を終える。


「さて、じゃあそろそろ行くか。

父さん、予定より随分と早くなっちゃったけど俺、旅に出るよ……」


そうして最後に父さんとの思い出の詰まった住処に向かって大きな声で言う。


「行って来ます!」


そして竜化を行い、大きく成長をした翼をはためかせ大空へと飛翔する。眼下に広がる大地を見下ろす。父さんと一緒に駆け回った大地。父さんと共に狩をした大地。それらに向けて心の中でさよならと言う。そして最後にまだ見ぬ魔王ヴェへムートに対する憎悪を込めた眼差しで焼き払われた大地を睥睨する。


「何時か……何時か必ず殺してやる!魔王ヴェへムートォォォォォ‼︎‼︎」


空に響き渡る竜の咆哮。それに含まれる怒りが弱き魔物や動物の意識を瞬時に刈り取る。そんな地上の様子など気にも留めず、俺は大空を突っ切り進む。目指すは人間の住む国でここから最も近い「アクウェリウム」。




魔王ヴェへムートside〜


とある場所のとある城。そこは常に妖しげな雰囲気を放っており、立ち入り難い雰囲気を醸し出していた。


「なに?リリアーナ達が死んだだと?」


そんな城の奥の一際豪華な一室で一人の美丈夫な男が派手な玉座に座して跪く部下を見下ろしていた。


「はい。先程リリアーナ殿に渡しておいた通信結晶が破壊されました。ですが最後に聞こえたのは確かにリリアーナ殿の声でした。どうやら喉を潰されていたらしく荒い呼吸音しか聞こえませんでしたが……」


「そうか……チッ!ダークネスドラゴンの素材があれば他の魔王共を出し抜く事が出来たものの、失敗しおって……」


跪く部下から視線を逸らし、”魔王”ヴェへムートはめんどくさそうに呟く。


「リリアーナ達を殺したのはターゲットなのか?」


ヴェへムートはふと思い出したかのように部下にそう尋ねる。だが帰って来た答えは予想外のものだった。


「いえ違います。ターゲットだったダークネスドラゴンはリリアーナ殿が既に討伐しておりました。リリアーナ殿を殺したのはその子供のようです」


配下の言葉に驚きの表情を作るヴェへムート。


「なに?つまりリリアーナは子竜に殺られたと言うのか?馬鹿な!」


ヴェへムートの驚きは当然だろう。いくらダークネスドラゴンと言えど子供の頃はそこら辺をうろつく魔物にすら負ける程の強さでしか無い。そんな弱者がいくらサキュバスと言う下級モンスターからとは言え、魔人へと進化したリリアーナが負けるとは思えなかった。


「はっ、私めも最初は耳を疑いましたが、ですがリリアーナ殿を屠ったのは確かに子竜のようでした」


「何者なんだ、その子竜は……」


配下の言葉に目を瞑り何かを考えるヴェへムート。

ヴェへムートは実力こそ魔王の中では下の方だが、決して馬鹿では無い。事実彼の頭の切れの良さは魔王の中でも上位に位置する。それ故現在打ち得る最善の手を打つ事にした。


「アルフォンスよ、ただちに調査部隊を作り「魔の平原」に迎え。メンバーに最低3人はリリアーナ以上の実力者を入れろ」


「はっ、仰せのままに!」


アルフォンスと呼ばれた男は自らの主の命を忠実に実行するため、今までいた部屋を後にする。


「ダークネスドラゴンの素材が手に入らなかったのは痛いな……打てる手立てはまだたくさんあるが……今大きな事を起こして他の魔王共に目を付けられると言うのは得策では無いな……よし、久し振りにあの方に指示を仰ぐとするか……」


一人部屋に残ったヴェへムートは玉座に座りつつも今後の動きを考えて、思考の海へと落ちて行く。

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