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子竜の進む異世界成り上がり  作者: 夜桜
四章 王都ダンジョン攻略作戦
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不穏な足音

明けましておめでとうございます。新年一発目の投稿になります┏○ペコ

朝。遅めの朝食を取った俺たちはその足で王都本部のギルドへと向かった。


「う〜……頭が痛い……」


「昨夜は調子に乗り過ぎましたね……」


頭を抑えながら先頭を進むエステル。その一歩後ろではキュレアも同じく頭を抑えている。


「本当にその通りだ。結局昨日はぶっ倒れたお前達を俺が宿まで運ぶ羽目になったんだぞ」


頭を抑えながら面目無いと謝罪するエステルとキュレアにため息を吐きながら俺たちは街道を進む。


「おえぇ、気持ち悪りぃ……ギルドマスターも二日酔いか……?気が合うな……」


「ボルト……お前が自棄酒だとか言うのに巻き込まれたわたしたちには何も無しか?」


「う〜、頭が悪ガンガンする……帰りてぇ……」


「オレが二日酔いなんていつ以来だってんだ……」


「僕が酔い潰れたみんなを介抱してあげたんだよ?感謝して欲しいな。特にリーダーなんか殆ど無意識でも暴れるんだから参ったよ。見てこの真新しい痣」


俺たちの後ろからは【雷鳴の牙】が続き、俺たちのの会話にこれまた辛そうな様子で加わって来た。


こいつらも酔っ払ってんのかよ……


「お兄様、私はどうしていればいいのですか?」


隣を歩くスノアは昨日あれだけ食ったと言うのにケロッとしている。流石は俺の妹だ。酔っ払っいどもとは違うな。


「そうだなぁ……エステル、俺たちの話が終わるまでスノアにはどうさせとけばいい?俺としてはなるべくスノアから離れていたく無いんだが」


スノアは冒険者じゃない。このままだと俺たちがこっちのギルドマスターと話している間スノアを一人にしてしまう事になる。


「話が終わるまでギルドのロビーで待って貰っていればいいんじゃないかな……」


「馬鹿言うな。スノアみたいな綺麗で可愛いらしい女をあんなケダモノだらけの巣窟に一人にしてられるわけ無いだろうが」


「お、お兄様ったら//」


尚辛そうに答えるエステルに俺は思わず食ってかかる。まったく、何を言ってるだこの酔っ払いは。


「……ガドウ君、生き別れていた妹さんに再会出来たからって過保護になり過ぎじゃないかな……」


そう言うとエステルに呆れたような表情をされた。何故だ?スノアの透き通るような白髪と、白磁のような白い肌。妖精染みた愛らしい顔の中心に光る黄金の双眸。どこを取っても10人中10人が振り返るような完璧な美しさでは無いか。こんな妹を猛獣溢れる荒波の中に一瞬でも一人に出来るわけ無いだろうが。


「まぁまぁエステル、スノアさんはガドウさんの妹さんですから一緒に連れて行けばいいじゃないですか。今回は秘匿性のある話は無いはずですし」


キュレア……お前はなんていい女だ……ナイスアシスト!


「よし決まりだ」


俺は心の中でガッツポーズを決めてキュレアの言葉にすかさず乗っかる。短時間とは言えスノアを人族達の中に一人にするなんて論外だ。異論は認め無い。


「……まぁその方がいいかもね。スノア君は見た感じ人見知りな性格っぽいし、そんな娘を見知らぬ人がごった返す場所で一人にしておくのは忍びないしね」


さっきはあんな適当な事を言っていたエステルだが、キュレアの意見には割と肯定的な姿勢を見せてる。どうやらエステルはスノアの性格を慮るってくれているようだ。

流石はギルドマスター、その観察眼には舌を巻く。ただしその辛そうな二日酔いが無ければの話だけど。


「さて、と……キュレア、もう着くから一応リフレッシュの魔法をかけてくれないか?」


「構いませんけど、アルコールによる酔いにはあまり効果がありませんよ?」


「しないよりはマシさ。流石に本部長に遭うのに酔っ払ってるわけには行かないだろう?」


頼まれたキュレアは、懐から白い杖を取り出してリフレッシュの魔法を全員にかけて行く。


「リフレッシュはあくまで状態異常を回復させる魔法です。酔いは状態異常とは別の状態ですのであまり劇的な効果は望めません」


それでも多少は体調が和らいだのか、一同の足取りは先ほどより軽い。


***


「着いたぞ。到着した事を伝えて来るから少し待っててくれ」


ギルドに到着すると、そう言い残してエステルとキュレアはギルドの受付へと向かって行った。その間俺たちは特に何をするでもなく適当にギルドの中をぐるりと見回し、たむろう冒険者達の噂話になんとなく耳を傾けてみる。


「おい聞いたか、聖教国がこの国に向けて宣戦布告を出したらしいぜ?」


「マジかよ、何でまた」


「どうも聖教国は先日のトウテツの侵入に危機意識を持って異世界から勇者を召喚したらしい。今回の戦争はその勇者にこの世界の戦いを見せるとかそんなんじゃないか?」


「いや、流石にそれだけで大国が大国に攻め込むなんてまともじゃないでしょう。昔から聖教国とこの国はその在り方から事あるごとに対立して来たでしょ?多分そこら辺の国同士の何かが関わってるんじゃないかしら?」


「あ、俺聞いたぜ!多種族の扱いが教定に反するとかなんとからしいぞ。多種族の利権を認めるセントリア王国は神への反逆だとよ」


「ああー……あそこは生粋の人族至上主義だもね。この国や他の国では人族と認められている獣人族と妖精族ですらあそこでは神に見放された神敵だって言うじゃない……やだやだ」


「でもま、そうなると俺たちも召集されるかもな。そうなると厄介だし早いとここの国を出るとしようかね」


……戦争とは穏やかじゃないな。


「いつか始まるとは思っていたが、もうか」


「ああ、早いとここの国を出る事を考えた方がいいかもな」


俺が聞こえた話はどうやら【雷鳴の牙】達にも聞こえていたらしく、シャドとボルトが顔を見合わせて深刻な顔をしている。


俺たち冒険者はあくまで独立機関だ。それはつまり戦時下においても国に従属しているわけでないので参戦の義務は無い。だから国は冒険者に依頼と言う形を取って召集をかけるのだが、最近は依頼者と言う立場でありながら権力に物を言わせて無理矢理参戦させようとする国も少なく無い。冒険者にしてみればそれは望むところではないのだろう。


「すまない、待たせたねみんな。早速だが此方のギルドマスターが会ってくれるそうだ。奥の部屋へ行こうか」


そこにエステルとキュレアが見知らぬ男性を伴って戻って来た。


「お待たせしました。冒険者ギルドセントリア王国本部の副ギルドマスターを務めさせていただいているカレルと申します。ギルドマスターは奥の部屋でお待ちですのでご案内致します」


若い男だ。年の頃は30代初めくらいだろうか。細身であり筋骨隆々と言うわけでは無く、逆に知的な雰囲気を纏いにこにこと人好きするような笑みを浮かべている。一見するとこの男がこの国の冒険者ギルドのNo.2とは考え難い。実際【雷鳴の牙】の面々もカレルに対して懐疑的な様子を見せている。


(へぇ、中々のたぬきだなこいつ)


だが俺の持つ眼の前にはその程度の隠蔽なんて無意味と化す。


ーーーーーーーーーー

カレル・ワーグナー・・・人間。特殊スキル「隠者」による能力隠蔽を確認。能力の解析を行いますか?Yes/No

ーーーーーーーーーー


当然Yes。


ーーーーーーーーーー

Name:カレル・ワーグナー


Rece:人間


Special:「隠者」「呪殺魔法」「即死魔法」


Skill:「覇気」「闇魔法」「火魔法」「風魔法」「空間魔法」「毒生成」


Gift:「暗殺の書」

ーーーーーーーーーー


強い。俺が見て来た人間の中では一二を争う能力だ。

エステル、キュレア、それに【雷鳴の牙】。彼女達は間違い無く人族ではトップクラスの能力を持つ者達だが、この男はそんな世界トップクラスの実力を誇る人族達より頭一つ抜けているように感じる。人族の感覚で言うとこいつは最低でも特SSランク冒険者程度実力はあるのではないだろうか。噂に聞く唯一の特SSランク冒険者の【破壊王(デストロイ)】がどのような実力者かは知らないから何とも言えないが、あながち間違って無いと思う。


「ん?ガドウ君、どうしたんだ?」


「いやぁ、何でもないさ」


隣を歩くエルテルが訝しげに尋ねて来るのを適当にあしらいながら前方を歩くカレルの背中を見やる。歩き方はお世辞にも強者とは言えない隙だらけの動きだが、それがわざとである事は容易に想像がつく。仮に何者かが唐突に背後から襲いかかった場合、その者は即座に死出の旅立ちを味わう事になるだろう。


「到着致しました。此方の部屋に当ギルドのマスターがおられます」


そう言って立ち止まったカレルの先にはアクウェリウム支部と同じような魔力を通して開閉するタイプの扉があった。


「入る前に皆様にお伝えしておく事があります。中にはギルドマスターと国からのお客様がお見えになっております。ギルドマスターは別にいいんですが、そのお客様と言うのが少々気難しい方ですので、くれぐれも粗相の無いようにお願い致します」


……なんか嫌な予感して来たな。


「失礼します。アクウェリウム支部支部長エステル・フォレスティーア様、副支部長キュレア様、並びに此度の防衛戦にて活躍を果たした冒険者6名をお連れ致しました」


カレルは扉を開けノックし、中に聞こえるよう大き目の声で簡潔尋ねた。


「入りなさい」


すると即座に中から女性特有の高い声で返事が返って来て、それを確認するやカレルは扉に魔力を流して扉を開く。その部屋では非常に美しい容姿をした女性と何処か陰気臭い初老の男性が待ち受けていた。


「よく来てくれたな。私がこのギルドのマスターでソフィア・エルドラードと言う」


心の底まで見通して来るような紺碧の瞳に、腰まであるエメラルドブルーの髪。その透き通るような髪を後頭部で纏めて腰まで流し、一般のギルドの制服に比べ少し豪奢な制服に身を包み、その鋭い眼光は此方を射抜くように一点迷い無く俺たちを見据えている。

体つきは座っていても分かるほどに世の男性の理想を注ぎ込んだかのような絶妙なプロポーションを誇っており、俺とカレル以外の男連中は皆無意識にゴクリと生唾を飲み込んでいた。まぁ、気持ちは分からないでも無いが、俺はソフィアと名乗った武人のような女性よりも彼女の横に立て掛けられている細身の剣の方が気になった。いや、これは剣と言うより刀と言った方が正確か。


(凄まじい力を感じるなあの武器……俺の竜神刀と同等くらいか?)


それくらいまでにあの刀が放つ強さは異常だった。とてもじゃないが人間に扱えるようには見えないが……


「我が名はロイズである!ロイズ・フォンス・ヴァタメール!栄えあるヴァタメール公爵家の6代目当主だ!」


「こ、公爵閣下!?」


エステルが悲鳴のような声を上げる。


なるほど、こいつが貴族って奴か。人が考え事してる時にいきなり大声で名乗り上げるもんだから思わず殴り飛ばしてやろうかと思ったが自制して正解だったな。

周りを見るとエステルだけで無く、キュレアや【雷鳴の牙】の面々も唐突な貴族の登場に顔に驚愕を浮かべている。


「うむ、苦しゅう無い」


その反応を見て満足気にうなずくヴァタメール公爵。


(公爵って言うと、確か王族に連なる貴族の階級だったっけ)


公爵、侯爵、伯爵、男爵、子爵と順々に低くなって行く貴族階級。なんかこの階級社会ってだけでドロドロした貴族世界の背景が見える気がするな。


「ヴァタメール公、申し訳無いが先に此方の要件を済ましてしまってもよろしいか?」


「む?そうであるな、ソフィア殿。失礼した」


ソフィアが嗜めるように言うと、ヴァタメール公爵は思いの外あっさりと引いた。ソフィアの発言力はこの国でもかなりのものであるようだ。


「さて、早速だが諸君らを呼んだ要件についてだ。諸君らは先の魔王によるアクウェリウム侵攻の折、目覚ましい活躍を誇り見事魔王の侵攻を退けた。その事を評価し、君達のランクを上げよう」


ソフィアは机の引き出しから黒いカードを5枚取り出しながら告げる。


「【雷鳴の牙】の諸君。諸君らの活躍は私の耳にもよく聞き届いている。今までの数々の栄光を表して諸君らの冒険者ランクを特Sランクとする。さあ、新たなカードを受け取りたまえ」


Sランクを超えて特Sランクか。まぁウィングライガーと曲がりなりにもやり合える実力を持ってるのだから当然とも言えるな。

恐る恐る前へと出て行った【雷鳴の牙】の面々は、隣に座るヴァタメール公爵を気にしながら机の前で立ち止まると2〜3言ソフィアと会話を交え、特Sランクの冒険者である事を示す黒のギルドカードを各々受け取って元の位置まで下がって行く。


「次は君だな。確かガドウと言ったかな?」


続いてソフィアの意識が俺へと移る。その雁行の鋭さにスノアが萎縮して思わず俺の陰に身を隠す。俺はスノアの頭を優しく撫でながらソフィアの目線を真正面から受け止めた。


「へぇ……君の事も報告は受けている。冒険者になると同時に人類領域に侵入して来たトウテツの撃破、更にアクウェリウムを襲撃して来た複数の魔人たちを一人で圧倒し見事撃退。いやはや、恐れ入る。今まで君のような実力者の名を聞いた事が無いのが不思議でならない」


「そりゃどうも。だけど、俺としてはなんであんたみたいな人がここにいるのかが気になるね」


何せ俺の視界に映るその情報には驚くべき事実が記されているのだから。


ーーーーーーーーーー

Name:ソフィア・エルドラード


Race:竜人族


Unique:「竜集ウ楽園(エルドラゴ)


Special:「刹那の瞳」「夢幻の太刀」「完全解析」「思考加速」


Skill:「嵐魔法」「火魔法」「光魔法」「竜覇気」「縮地」「瞬身」「身体強化」


Divin:「祖竜の加護」


Gift:「王種の種」「進化の苗木」「剣技の才」

ーーーーーーーーーー


ソフィア・エルドラード。この女は俺の同族だ。


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