表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
子竜の進む異世界成り上がり  作者: 夜桜
四章 王都ダンジョン攻略作戦
46/55

家族

思い通りに文章を書くのって中々難しいね!

ギルドに入ると、そこはアクウェリウムのギルドとはまた違った風景があった。


入り口を抜けて直ぐが酒場のようになっているのは同じだが、先ずその規模が違う。それになにやらお洒落な出で立ちをしたバーとか言うコーナーがあり、そこに集まっている冒険者達は何処か強者の気配がする。

その隣にあるのが普通の酒場。ここは規模以外はアクウェリウムと然程変わらない造りで、そこに集まる冒険者達からはあまり強者の気配が感じられない。


「あのバーとか言うところに集まる奴等は強いな」


「おや?やっぱり分かるかい?」


ぼそりと呟いた俺の言葉にエステルが耳聡く反応し、ニヤリと笑う。


「あそこに集まるのは最低でもBランク以上の冒険者さ。バーで売ってる酒は酒場の物よりもずっと高いからね、買える程の稼ぎを出す冒険者達が集まって自然とそうなるのさ」


「へぇ、酒に一々金かける奴もいるんだな」


「因みにですが、このギルドには二階にも冒険者達に解放されているスペースがあるのですが、そこに集まる冒険者達は最低でも特Aランク以上のオーバーランクなんですよ。ギルドとしては難易度の高い依頼は彼等に積極的に受けて欲しいですからね、オーバーランク以上から二階に上がる許可が出て、そこに貼り出される依頼は全てオーバーランク以上のものなんです」


エステルの説明にキュレアが補足を入れるように説明をしてくれた。確かに気配を探るに、上の方からは強い気配がまとまっているのが分かる。こうしてみると、オーバーランクって割といるんだなーと思うね。まぁ、その中の誰一人としてもアクウェリウムを襲った魔人と渡り合えそうな奴等はいないが。いや、でもアルプ以外の四人とならそこそこやり合えそうだな。アルプやブラッドクラスの奴等が出てきたら全員殺られるのがオチだろうが。


(そう考えると、本来の力を出し切れていない状態で曲がりなりにもアルプの猛攻を防いでいたエステル達はやっぱり抜きん出ているんだな)


そんなどうでも良い感想を抱きながらエステルの後に続いていると、エステルが何か受付の女性に話している姿が目に入った。女性は別の職員の女性に何かを伝えると、その職員の女性は奥へと引っ込んで行き、残った受付の女性はエステルに鍵のような物を手渡している。


「ガドウ君、個室の鍵を借りたから行こうか。報酬はその部屋に用意してくれるらしいよ」


「分かった」


そう言ってカウンターの先にある奥へと続く通路へと迷い無く進んで行くエステルを再び追いかけて行く。


「ここだね。報酬はもう中に置いてあるはずだよ」


カウンターの先にある通路は意外と長く、道すがらに見ただけでも十は超えだろう程の部屋が点在していた。その意外な広さにしばし感心していると、エステルは一つ扉の前で止まった。


中に入ると無数にある部屋の一つの割には中々の逸品である調度品で彩られており、人族の貴族が好みそうな下品な程の派手さは無いが落ち着いた高級感があり、俺としてはこっちの方が断然好きだ。だが机の上に堂々と置かれている金はいただけない。せめて何かに包むとか、カバンに入れておくとかして欲しいところだ。


「はい、ガドウ君。ここにあるお金が今回の報酬の五千万ゴールドだよ。額が多いから三千万ゴールド分を100万紙30枚で、一千五百万ゴールド分を10万紙150枚で、五百万ゴールド分を1万G貨500枚で、と細かく分けてあるから気を付けておくれよ?」


「助かる。正直1000万紙5枚で渡されていたら色々とめんどうだったところだ」


受け渡されたゴールドを全て数えると、ぴったり5千万ゴールド。


「取り敢えずトウテツ撃退の依頼の報酬だけ渡しておくね。後他にアクウェリウムを守ってくれた事に対する報酬があるんだけど、その計算方法が色々とめんどうでね……だからそっちの報酬だけはもう少し待っていてくれないか?なるべく早く計算しておくから」


「いいぜ別に。この金があれば当面は大丈夫だしな」


そう言って俺はさっさと扉の外へと向かう。時間にはまだ余裕があるけど、なるべく早く戻ってやりたいって気持ちがあるからな。


「じゃあ俺は帰るわ。買い物の続きをしてくる」


「ああ、行っておいで。私とキュレアはここのマスターからの返事を待たないとならないから動けないが、代わりに私達の分も楽しんで来てくれ」


「何か面白い物があったら是非買って来てくださいね」


エステルとキュレアが冗談交じりにそう言うのを背中で聞きながら、俺は来た道を引き返して再び広場の方へと戻る。


***


「っと、少しのんびりし過ぎたかな」


広場への帰り道、時間に余裕があったのをいい事に少し観光をしながら戻って来たのだけど、その頃になるともう競売は最後の一人になっていた。どうやらのんびりし過ぎて割とギリギリのタイミングで帰って来てしまったようだ。まぁ結局は間に合ったからどうでもいいんだけどね。


『はい!最後の商品クレア・バーターは210万円ゴールドで落札です!』


そんな事を考えていたら丁度競売が終わったらしい。開会の挨拶をした小太りの男性が競売の終わりを告げる。


『それでは今回の商品をご購入なされた皆様は、奴隷の譲渡と契約を行いますので裏手へとお回りください!』


指示に従い舞台の裏手へと回ると、そこには最初見た奴隷から俺の知らない間に売り手がついたらしき奴隷まで、多数の奴隷達がそれぞれ自身を購入した相手との契約を結んでいた。

この契約だが、 奴隷契約と言う名のこの契約は、奴隷が自身の主人にあたる者へと害ある行動が出来ないように縛るための契約である。やり方は簡単で、奴隷に刻まれた奴隷紋に自身の血と魔力を流し込むだけで契約成立となる。


「さて、あいつは……っと、いたいた」


俺が購入したあの魔族の少女は隅の方で静かに佇みながら目の前で行われている契約を無関心な目で見つめていた。するとそこで少女と俺の目が合い、僅かにだが彼女の瞳に光が宿った気がした。


「待たせたな」


「……」


俺がそう言うと少女はひかりの無い瞳だけこちらを向けると、直ぐに無言で俯いてしまった。ちょっとショックだがまぁいい。


「お前、こいつを扱っていた奴隷商だな?ほら、こいつの代金一千万ゴールドだ」


「へへ、毎度ありです!」


俺は先程から少女の横でそわそわしている奴隷商の男に100万紙を10枚渡すと奴隷契約など無視して少女の手を引いてその場を後にする。


「ま、待ってください!まだ奴隷契約を行っていませんよお客さん!」


「いらん」


慌てて引き留めてくる奴隷商の男を無視して、俺は少女を横抱きにして一足跳びで建物の屋根への飛び移った。これからする話は人に聞かれたら厄介だからな。


「さて、ここなら誰も聞いていないな……念の為に防音用の結界を張ってっと……よし、これでいいか。単刀直入に聞くがお前はドラゴン族か?」


「……はい」


不可視の結界を張りながら尋ねた俺の質問に少女は暫しの間を空けて頷いた。


「やっぱりか。種族は?」


白雪竜(ユニバースドラゴン)の魔人……」


「へぇ、白雪竜(ユニバースドラゴン)か。珍しいな」


白雪竜(ユニバースドラゴン)とは俺の今の種族、白銀竜(シルバードラゴン)の直接的な下位種族で、主に標高の高い雪山や人が長時間生きられない一面氷の洞窟等に生息している。ユニークスキルが氷を操る能力と俺と特徴が似ているだろ?俺の場合は種族の系統を無視して進化しているっぽいけど、こいつの場合は順当に行けばいつか今の俺と同じ白銀竜(シルバードラゴン)に進化するだろうな。


「あの……私、からも質問いいです、か……?」


「あん?なんだ?」


俺が驚いていると、びくりと肩を震わせながら少女が上目遣いで不安気にと尋ねて来た。


「あの、貴方は何者、なんですか?ドラゴン族の誇りと言ってましたけど貴方ももしかして……」


「ああ、俺もお前と同じ魔人だよ。種族は白銀竜(シルバードラゴン)。名前はガドウだ」


俺の自己紹介を聞き、何も無かった少女の瞳に驚きの色が宿る。


白銀竜(シルバードラゴン)……?あの伝説の……?」


「伝説ってのは知らんが一応な」


俺たちドラゴン族には、同じドラゴン族でも種族ごとの系統の違いがあり、その系統ごとにそれぞれ違った伝説が伝わっている。

……まぁ黒竜系統の伝説ならともかく他の系統の伝説は全く知らないんだが。


俺、今でこそ白竜系統の種族だけど実際は黒竜系統の生まれだったから白竜系統の伝説とか全く知らないんだよね。黒竜系統の伝説なら父さんから聞いた事あるけど。


「俺、種族は白銀竜(シルバードラゴン)だけど系統は元々黒竜系統なんだわ。どうも俺の進化は種族の系統を無視してるっぽくてな」


「進化、経験してる、んですか……?歳はあまり変わらなそうなのに……」


「ああ、実年齢はまだ6歳だ。俺の場合はちょっと特殊な環境だったからな。白銀竜(シルバードラゴン)になった進化は魔人化したのも含めて四回目かな」


「そんなに……」


まぁ、驚くのも無理はない。何せ進化なんて殆どの魔物が一生かけて1〜2回程度出来れば良い方とまで言われている程だ。俺のようにたった6年で4回と言うのは異常だと言わざるを得ない。実際俺自身もそう思ってるしな。


「そう言うお前こそ、魔人になってるって事はその若さで一回は進化を経験しているんだろ?それともお前は稀にいるらしい元から魔人として産まれたタイプの魔物か?」


「いえ……私も一度だけ白竜(ホワイトドラゴン)から進化しています……ついこないだです……」


「こないだ?」


こないだと言う言葉に疑問を抱き詳しく聞いてみると、この少女はついこの間、正確には俺がアクウェリウムに帰って来た頃に白竜(ホワイトドラゴン)から白雪竜(ユニバースドラゴン)へと進化を遂げて魔人へとなったらしい。また、歳は俺より一つ下の5歳との事。俺が異常なだけで一般的に見れば彼女も充分に早い進化経験だ。


「なんで魔人にまでなったお前がたかだが人間に捕まってたんだ?それに親は?」


そう尋ねると少女の肩が先程とは比べ物にならないほどびくりと震えた。


「何かあったんだな……辛いなら無理に答える必要は無いぞ」


「ううん……言い、ます……初めて会った同族だから……」


曰く、少女は母と二人で人族領の中でも人が立ち入る事の無い氷の秘境と呼ばれる雪山に住んでいたらしい。だがそこに魔王の軍勢が襲い掛かって来たらしく、その時に母は自分を逃がすために単身で敵の真ん中に飛び込んで戦い犠牲になったと言う。その後少女は只管逃げ続け、力尽きて倒れたところを偶然通りかかった奴隷商とその護衛をしていた柄の笑冒険者に捕まったらしい。


「また魔王か……」


「また……?」


「ああ、俺の故郷も魔王に滅ぼされたんだ。その時たった一人の家族だった父さんが俺を守って死んだ」


俺は憎しみの篭った声音でそう語ると、少女は何故か目に涙を浮かべていた。


(しまったな……怖がらせちまったか……?)


「私と、同じ……」


「チッ、しめっぽい話は終わりだ。お前はこの後どうするんだ?」


「この後……?」


「ああ、お前は俺が買った。だから所有権は俺にある。折角出会えた同胞のよしみだ、当分の間はどうにかなるだけの金を渡してお前を自由にしてやる事も出来る」


俺がそう告げると少女は全力で首を横に振った。


「嫌……!お母さんが死んでもう私に頼れる人はいない……何処に行けばいいかも分からない……」


「……だからと言って俺と一緒にいると死ぬ危険があるぞ」


「それでもいい!私何でもするから貴方と共にいさせてくだはち!」


「……お前の母親を殺した魔王は誰だ?」


「……ヴェヘムート軍って言ってた……」


「そうか……俺の目標は魔王ヴェヘムートを八つ裂きにして殺す事だ。俺に付いてくるって事はつまりお前の母親を殺した魔王軍と争うという事だ。それでも付いてくるのか?」


「うん……怖いけど貴方と一緒なら……それにお母さんの敵討ちも出来る……」


少女の目は本気だった。たった数十分前まで死んだような目をしていたのが嘘のように今は輝いている。その瞳の輝きは覚悟を決めた者特有ものだ。彼女の本気が十二分に伝わって来る。


「……クハッ!いいね、気に入った。お前の覚悟試してやるよ!お前、確か名前無かったよな?」


ならば俺がどうこう言うのは野暮って奴だ。俺はこの先こいつがどうなるのかを見届けよう。


「は、はい……」


「ならお前は今からスノアだ。そして同時に今から俺の妹だ」


その瞬間、俺の中から大量の魔力が一気に抜け落ちる。その速度は凄まじく、あまりの勢いに魔力と共に魂まで削られているような錯覚に陥る。


(ぐっ!一気に力が抜き取られる……凄まじいな、これが名付けの弊害か……だがこれしきの魔力、魔力の泉で直ぐに回復出来る!)


俺は体を襲う猛烈な倦怠感を無視して、何事と無いかのように振舞う。


「えっ……?」


幸いな事にスノアは俺の唐突な発言に驚き、俺の一瞬の様子の変化には気付かなかったようだ。そのおかげで兄となる前に威厳が失墜するのを避けられた。


「俺とお前は共に親を失っている。だからあの頃の温もりはもう二度と帰って来ない。だけど俺とお前なら新たな家族になれる。温もりが帰って来ないなら新たに作ればいいだけの事だ。俺がお前の帰る場所となり、お前が俺の帰る場所になるんだ」


「……」


スノアの瞳からポロリと一粒の涙が零れ落ちる。俺はそれを気怠さに苛まれる指を持ち上げて拭ってやり、俺より一回り小さいその体を己の胸にそっと抱き寄せる。


「スノア、俺とお前は今から家族だ。よろしく頼むな」


「はい……よろしく、お願いします。お兄様……」


本当は最初から分かっていたんだと思う。俺とスノアは元から出会うべき運命にあったんだ。俺は一人で戦っている時も何処かでこんな未来を予感していた気がする。やがて魔王の喉を掻っ切る牙と爪は今こうして出会った。


俺は体を蝕む気怠さに耐え、胸の中で泣きじゃくる新たな妹の頭を彼女が落ち着くまで暫く撫で続けた。

なんだこの唐突展開……元より予定していたはずの設定なのに何故こうも違和感だらけになってしまったんだ……orz

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ