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子竜の進む異世界成り上がり  作者: 夜桜
四章 王都ダンジョン攻略作戦
45/55

王都到着

お待たせしました。本編からようやく正ヒロインを登場させられます( ̄▽ ̄)


注:今回は比較的短めに書いております

アクウェリウムを出立して一週間を迎えた朝。俺たちの馬車は予定通りこの国の首都セントリアに到着した。


「へぇ、ここがセントリアか。アクウェリウムの倍はデカイな。しかも活気がある」


エステルの冒険者ギルドのマスターとしての権限で正門とは別の特別な入り口から街へと入った俺は、馬車を降りその街の風景を見やり思わず感嘆の息を吐いた。


「なんだ、ガドウ君はセントリアに来たのは初めてだったのか?」


「ん、まぁな」


俺に続いて降りてきたエステルが、横に立ちながら少し自慢気に尋ねて来た事に曖昧な返事を返しながら視界に入る街並みを観察する。そこには獣人族、妖精族人間族と言った、魔族以外の全ての種族が仲睦まじく過ごしており、軒並みに連ねる数々の出店の店主は大声を張り上げて道行く人々を呼び止めていたりする。


「この国は聖教国とかとは違って人間族以外の種族とも深い友好関係を結んでいるんですよ」


人々の姿を観察していると、馬車の手続きを行っていたキュレアが微笑みを浮かべながらやって来て俺に説明をしてくれた。

曰く、この国セントリア王国はこの世界では最も昔から他種族との友好を深めることに努めて来た国で、セントリアと言う名も「数々の種族が集まる友好の中心の国」と言う意味でそう名付けられたらしい。

また、この国は歴史が深く建国3200年と言う歴史を持つ最古国と言う面も持っていて、建国当初は魔族もこの国に住んでいたらしい。しかし今から約3000年前に起きた魔王が起こした大戦争で魔族は人間族、獣人族、妖精族の所謂人族とされる種族達と対立し、そこからはそう長い年月をかけずに魔族はこの国から姿を消したらしい。


「へぇ、そんな歴史があるのか。でもそれにしては今日の活気は凄くないか?なんかイベントでもあるのか?」


キュレアの説明を聞きながら気になった事を尋ねてみると、案の定今日は特別なイベントが開催される日だったらしい。


「ああ、今は見世物屋の競売が行われているらしいね。確か今日は奴隷の競売だったかな。正直私はあまり好かないイベントだけどね」


「ふーん……まぁせっかくだし見るだけ見てみようかな。今日は後は宿を取るだけだったよな?本部への出頭とやらは直ぐに出来ないんだろ?」


「はい。先ず私達が本部のギルドマスターに到着した報せをした後にギルドマスター側から日時を指定されますので、早くても明日になりますね」


自分達が呼んでおいて面会出来る日までも自分達で指定するとか、一体何様なんだこのシステムは。これを素直に受け入れている人族の考えは分からないな。


「なら俺は少し街を観光してみたいね。連絡は魔法で出来るだろうしちょっくら行って来ていいだろ?」


「ああ、構わないよ。私とキュレアはこれから本部に行ってから宿を取るから、その間ガドウ君と【雷鳴の牙】は自由にしてくれても構わない。あ、でもトラブルだけは起こさないでくれよ?」


大丈夫だ、もしトラブルを起こしてもこっちで揉み消すから。


「んじゃ、行ってくるわ」


エステルとキュレアに後を任せ、俺は喧騒に包まれながら街の散策を始めた。一応【雷鳴の牙】も誘ってはみたが、彼等は一週間の禁欲を晴らしに娼館に行くらしく別行動をする事になった。その際俺も誘われたのだが、人間族とは違い俺はそこまでの欲求不満に陥る事は無いので丁重に断った。種としての寿命の短い人間族はその分子孫を残すための本能が強いのだろうが、俺のようなドラゴン族はそもそもの寿命が途方も無く長いのでそう言う行為はただの嗜み程度にしか魅力を感じない。無論、俺がこうして産まれているように子孫を残すと言う行為自体は行えるのだがそれはまだ数百年先の事でいい。


「さて、とイベントの会場はどこだ?」


俺は軒並みに並ぶ出店からめぼしいものを買い集め、それらを味わいながら適当に道を進む。

セントリアの街はとても大きい上に、道が入り組んでいる区間も多々ある。これは適当な奴を捕まえて場所を聞いた方が早いな。


「おい、そこの」


「え?わ、私ですか!?」


と言う事で取り敢えず適当に目に付いた人間族の少女に声をかけてみた。なんか顔を赤くして目を合わせないようにされてるけど、まぁ道が聞ければ何でもいいや。


「ああ、あんただ。あんた、今日やる競売って奴の会場分かるか?分かるならちょっと教えて欲しいんだが」


「は、はい!それならこの道を真っ直ぐ行った先にある噴水の辺りを右に進んで、二つ目の角を曲がって進むとある大きな広場です!」


むむ?ややこしいな。


「分かり難いぞ……」


「え、ええ!?す、すみません……」


どうでもいいけど、この女視線の動きが不自然過ぎないか?なんかあちこちを行ったり来たりしてるぞ。


「よし、決めた。あんた時間あるか?あるなら俺を案内してくれ」


うん、それがいい。地理に疎い俺が考えるより最初から分かる奴に連れて行ってもらった方が早いしな。


「ええ!?か、構いませんけど私なんかでよろしいので?」


「あん?寧ろあんたでダメな理由があるんだ?あんたがいいんだよ」


だって別の奴に聞くのめんどうだし。


「そ、そんな……こんな地味な私なんか……」


「ほら、ごちゃごちゃ言って無いで行くぞ」


俺は少女の手を引っ張って歩き出した。少女は何故かさっきより顔を赤らめて成されるがままになっているけど、案内するのあんたなんだけど……。


***


歩く事約20分。ようやく普通に接せるようになった女ーー名前はアマンダと言って、歳は18らしいーーに案内されて着いた場所は特設のステージが作られた広場で、中心には横幅10メートルくらいはありそうな舞台がどどんと置かれていた。


「へぇ、中々立派だな」


意外な手の凝り具合に思わず感心する。それに中々盛況具合で、席の9割以上が既に埋まっていた。中には貴族っぽい奴等もいることから、この競売は中々に期待されているらしい。


「それでは私はこれで失礼しますね。またご縁があったらお会いしましょう」


「ん?ああ、ありがとな……っと、これは礼だ。まぁ俺が暇潰しに作っただけの簡単なもんだけどな」


会場の様子を見ていると、アマンダが軽く頭を下げながらそう言って来た。そう言えばこうして案内をして貰った事で彼女には少し迷惑をかけてしまったかもしれない。それなら何かしらの形で礼をしなければな。そう思い俺はマジックポーチの中を探り、丁度あった良さげな物を取り出してアマンダへと手渡した。


俺があげたのはトウテツの爪の一部をドラゴンの形に削って、それに穴を開けて隔絶の森に生息していたコガネグモと言う1メートルほどの蜘蛛から取った糸を通しただけの簡単なペンダントだ。暇潰しに作っただけだったけど中々良い出来だったから残してたんだよな。まぁでもこのまま残していても使い道無いしそれなら誰かにあげた方がよっぽど有意義だ。


「え?い、いいんですか?ただ案内しただけなのにこんな良さそうな物をいただいて……」


「あん?気にするな。さっきも言ったがそれは俺が暇潰しに作っただけの物だ。ま、素材はいいの使ってるし不要なら売ってもいいぞ。そこそこいい額になるだろうよ」


「い、いえ!付けます!今すぐ付けます!」


俺が冗談交じりに言うとアマンダは慌ててそのペンダントを首に下げた。


「うん、似合ってるぞ。まぁなんだ、精々大事にしてやってくれ」


「はい!ありがとうございました!」


「ん、こっちこそありがとさん」


元気良く手を振って去って行くアマンダに此方も軽く手を振り返してやると、丁度競売が始まる時間になったらしく、舞台に現れた小太りの男性が威勢良く開催を宣言した。


『先ず最初の商品は年元傭兵として鍛えられたこの筋肉質な肉体を持ち、肉体労働ならなんでもお任せアイゼン・ウォーリー35歳人間族男!20万ゴールドから!』


舞台に上がった奴隷商と思われる幸薄そうな男が声を張り上げて会場全体に声を響かせる。


「ふーん、これが競売ねぇ」


目の前で行われる人間族が人間族を購入する異質な光景に俺は思わず疑問を抱いた。何で人族は同じ人族同士なのに人一人の身柄を金銭でやり取りするんだろうか。俺には分からない感覚だ。


そんな風に適当に見ながら競売の行方を見ていると、大体中盤くらいだろうか。何人かの奴隷商の商品アピールが終わり、次の奴隷商が商品の紹介を行う中、一際目を引く人物が競売に出された。


『お待たせ致しました!ここで本日の目玉商品の登場です!』


その声と共に舞台に引っ張り上げられた人物は、見た目年齢は俺より少し下くらいの目を見張るような美少女だった。

艶のある鮮やかな白髪を腰辺りまで流し、濡れたような黄金の瞳は自身の境遇を憂い、この先に待つ絶望を悲観しているような儚さを醸し出している。

薄いボロ布を纏っただけの殆ど裸に近い姿から見える肢体はスラッとしており、程よい大きさの胸としっかりとくびれた腰は、観客席にいる者を男女問わず魅了する。


『この少女はなんと魔族です!』


その瞬間、会場はにわかにざわつく。だけどそれも仕方無いだろう。何せ、俺自身もかなり驚いているんだから。


『種族は不明ですが、この美しさの前ではそんなの匙たる問題!しかもこの少女、まだ処女の上、名前がございません!つまり付ける名前すら購入された方の自由となります!それに何よりこの器量!性奴隷にするも良し、従順なメイドにするも良し!まさに完璧な美しさ!お値段はなんと250万ゴールドから!』


奴隷商の男がその少女の首に付けられた首輪の鎖を引っ張り、観客全員に見えるように立たせる。それだけで観客席は沸き立ち、中にはその肢体を舐め回すように見るような輩すら現れる。どうやらあの首輪には魔力や身体能力を抑える効果があるらしく、少女は成されるがままだ。もしあの少女が本当に魔族なら膂力だけで人一人くらい簡単に殺せるはずだし、少なくとも何かしらの方法で能力を縛られているのは間違い無いだろう。


「あの魔族……俺と魔力の質が似てるな。種族は不明って言っていたけどもしかしてドラゴン族か?」


俺は周囲に注意を配りながら呟き、少女の観察を続ける。その時不意に彼女と目が合った。


「っ!?」


その瞳には光が宿っていない。何かとんでもない絶望を目の当たりにし、その心を閉ざしてしまったように思える。


「300万!」


「310万!」


「なら俺は350万出すぞ!」


俺が動揺している内にも競売はどんどん進んで行き、最初250万ゴールドから始まった競売もいつの間にか300万ゴールドを超え500万ゴールドを突破している。


(あいつの瞳……あれは昔の俺と同じだ。父さんが死んで、ヴェヘムートを殺す事だけを考えていたあの頃の俺の目と……)


勿論今でもヴェヘムートを殺す事は考えている。寧ろそれが最大の目標だ。だけどそれ以外にも今の俺には覚醒の謎を解明する事や神へと至る道を探ると言う確固たる目標がある。


「しゃーねぇ……ほんとはただ見るだけのつもりだったけどあいつはなんかほっとけねぇ」


俺が密かに決意した頃、競売の価格はついに800万ゴールドをこえた。


『850万!850万が出ました!他にいませんか!……はい!いないのでしたら850万で「1000万だ」……は?』


「だから1000万出すといっている。他に競る奴はいるか?」


シーンと静まり返る会場。

静寂に包まれた会場を俺はゆっくりと歩いて行く。

他の客とすれ違う度にそいつらは俺の顔を見て驚きに身を固める。多分俺のような若造が1千万をポンっと出した事に驚きを隠せないのだろう。かくいう俺も逆の立場だったら間違い無く同じ反応をしていただろうしな。


「いないようならこいつは俺がいただく。おい、金は何時までに払うんだ?」


舞台の真ん前までやって来た俺は拡声器のようなマジックアイテム持ったまま立ち竦んでいる奴隷商の男にそう尋ねた。


『は、はい!この後もう1〜2時間ほど競りを続けた後に奴隷の引き渡しを行うので、その時で……」


「了解した」


そう言って俺は少女の方へと向く。少女も俺がポンっと出した金額の大きさは理解しているのか、先程のような濁った瞳では無く純粋な驚きのような表情をしていた。


「もう少し待っていろ……直ぐにお前を解放してやる。ドラゴン族の誇りにかけて、な」


「えっ……」


俺は少女にのみ聞こえる声音でそう告げると、さっと身を翻して会場の外へと向かう。

去り際に少女が正式に1千万ゴールドで落札された事を知らせる声が響くのを背中で聞きながら俺はさっさっとエステルの気配を探って彼女の元へと向かう。


(落札をしたのはいいけど、手持ちが無いんだよな。報酬だけは既に用意出来ているって言ってたからさっさと受け取らないと)


俺は軽やかに跳躍して建物の上を飛び移りながら最短距離でエステルの元へと急ぐ。多分あいつはまだ冒険者ギルドにいるだろうからな。


「っと、いたいた」


街中を駆ける事約10分、エステルを発見した。どうやらキュレアも一緒にいるようだ。


「よう、二人とも」


「うわっ!?ガドウ君!?」


「ガドウさん、登場の仕方まで非常識になっていますよ」


二人の目の前に飛び降りて着地をすると、エステルは目を丸くしてキュレアは何処か呆れたような仕草で反応をした。まぁいきなり目の前に人が飛び降りて来たら驚くか。だからといって一々気にしないが。


「まぁいいじゃねぇか。んで?ここが冒険者ギルドのセントリア本部か?」


そこには見上げるほどの巨大な建物が建っており、高さにして20メートルくらいはある。アクウェリウムの支部は10メートルくらいだったから大体倍の大きさはあるんじゃないだろうか。


「そうだよ。今さっき手続きを終えてきたから今はここのマスターの対応待ちさ」


「へぇ、やっぱりめんどいんだな」


「まあね。これが仕事なんだから仕方無いと言えば仕方ないんだけど、ここら辺の手続きはもう少しスムーズになってくれないかなとは切実に思うね」


エステルが溜め息混じりに愚痴るのを苦笑しながら聞いていた俺は早速本題に入った。


「ところで、トウテツの討伐報酬はもう受け取れるのか?ちょっと買い物したいんだけど」


「ああ、だからこんな早く私達の元へと来たのか。そう言えばガドウ君の最初の依頼がトウテツの撃退だったな」


「ふふ、そうですね。ガドウさんの経緯は非常識の塊でした。エステル、確か報酬の金額は既に用意されていましたよね?それはもう受け渡し出来ますか?」


「ああ、可能だよ。ガドウ君、金額が大きいからちょっと奥へ行こうか。ここで渡すと絶対にめんどうな事になってしまうからね」


「それもそうだな。助かる」


俺はエステルが個室を用意してくれるとの事なので素直に頷き、エステルとキュレアの二人に連れられてギルドの中へと入って行った。

この国の首都と王都は同じ場所です。なのでセントリア王国城下町と言うのが首都セントリアの正式名称です。まぁ別々にするとややこしいのでまとめてセントリアと表記します^ - ^

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