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子竜の進む異世界成り上がり  作者: 夜桜
序章 プロローグ
3/55

プロローグ3

「いたぞ!全員で取り囲め!」


「グルルルルゥ!何だ貴様等は!ここを我が住処と知っての狼藉か!」


ガドウが初めて獲物を捉えてから数日、ガリオンの怒気の孕んだ声が辺りに響き渡った。


「我等は魔王ヴェへムート様の配下である!ヴェへムート様はドラゴン族の上質な鱗と強靭な骨を御所望だ!大人しくすれば楽に死なせてやろう!」


「ふざけるな!魔王だろうと何だろうと我等誇り高きドラゴン族が屈すると思うな!殺れるものなら殺ってみるが良い!」


今現在ガドウとガリオンが住む地に魔王軍を名乗る者達がやって来て辺りを蹂躙していた。

ここに生息する生き物は一部の草食動物を除き、皆が食物連鎖の上位に位置する存在達だ。そんな者達を歯牙にも掛けず蹂躙して行く様は奴等が紛れもなく魔王軍に属する者達だと言う事が分かる。


「ならばそうさせて貰おう!魔法隊、奴を拘束しろ!」


「こんなもの!」


色取り取りの半透明な鎖がガリオンを拘束しようと絡まり付くが、ガリオンはそれをただ体をよじるだけで引き千切る。


「死ぬが良い!」


ガリオンは口から超高熱の魔法を敵の中心に向けて吐き出す。


「くっ……化け物が……防御魔法展開!」


何故こんな事が起こってるかと言うと、話は数時間前に遡る。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ちちうえー、このせかいってどうなっているの?」


「うん?ガドウはこの世界に興味があるのか?」


「うん!ぼくおおきくなったらせかいをだびしたいんだ!」


「そうか、ならばその時の為に情報を持っているに越した事はないな。偉いぞ!」


「えへへー♪」


ガリオン曰く、この世界は「ゼディアル」と言う名で、人間族、魔族、獣人族、妖精族の4種族が存在しているらしい。

ガドウ達ドラゴンは魔物と言う部類に属するドラゴン族と言う。 魔物は進化すると魔人となる事が可能であり、そうすると魔族と言う括りに入れらるらしい。最も、無数にいる魔物の中でも魔人となって魔族の仲間入りが出来る者は少なく、その殆どが偶然なんらかの条件を満たしたからなれたと言う者ばかりである。

魔族には魔王と言う存在が多数存在しており、各々の勢力を持っている。魔王の中には過激派と呼ばれる者が数名おり、人間を絶滅させようと行動しているらしい。

因みにガリオンは魔物としては最上位に位置するが、魔人にはなっていない。


「良いかガドウ。魔王とは理由無く争ってはならぬぞ。ワシでも配下の魔人には勝てても、魔王には勝てるとは限らん」


ガリオンは一瞬黄金の双眸を険しくしてガドウを見つめる。

ガドウはそんな父親の言葉にコクリと可愛く頷き、次の瞬間にはガリオンの胸に勢いよく飛び込む。ガリオンはそんな我が子に訝し気な表情を送るも、優しく受け止める。


「む?どうしたんだ、急に?」


「ぼくちちうえだーいすき!たびにでたらおみやげたくさんもってかえってくるからね!」


「ガハハ、それは楽しみだ。ガドウからのお土産、楽しみにしてるぞ!でも今は強くなる事だ。誰にも負けないくらいな!」


「うん!」


ガリオンの言葉に満面の笑みを浮かべるガドウ。ガリオンもそんな我が子の笑みに自らの頬も綻ばした。

その直後、辺りに膨大な魔力が満ち、それと同時に轟音が轟いた。


「何事だ!」


ガドウを双翼で包み込み衝撃が行かないようにしつつ、音の方向に目をやると、そこには信じられない光景が入った。

燃え盛る炎の中をかなりの速度で進軍してくる数々の魔物達。その中には何人か魔人の姿も確認出来た。

彼等は通り道にいた魔物を作業のように駆逐しつつ、真っ直ぐとガリオンとガドウのいるこの場を目指して歩みを進めていた。


「馬鹿な!あれほどの大群を見逃すなどあるものか!」


ガリオンは誰に言うでも無く叫ぶが、それが意味の無い事をガリオン自身が一番分かっていた。

どんな理由があろうと結果的にこの地が荒らされている事には変わらない。今自分のすべき事はガドウを安全な場所に隠すと言う事と自分達の住処を脅かす者の排除だ。


「ガドウ!お主はここから動くな!あやつらはワシ自ら屠ってくれる!」


「うん!ちちうえもきをつけて!」


ガドウも子供ながら今の状況を何と無く察していた。だからこの地で一番強い自分の父親がこの地を守る為に戦いに行くのを素直に見送った。自分の自慢の父親が負けるわけないと心から信じて。


「安心しろ、直ぐ奴等を蹴散らしてまた美味い肉取ってくるからな」


そう言って立派な翼をはためかせて進軍して来る魔人達に向けて飛び立って行った。


「グルルルルゥ!何だ貴様等は!ここを我が住処と知っての狼藉か!」


こうしてガリオン対魔王ヴェへムートの軍の戦闘が始まった。

だがこの時ガリオンは気付いていなかった。気配を完璧に殺して自らの巣に近付く存在がいる事に……

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